悪のヒーロー


「……死にたい。」


誰に受け止めて貰えるでもないこのことばを、呟く。

人に、この願いは受け止められない。

俺は、このままで居なくちゃいけない。

だって、それが「俺」だから。

俺で居なくちゃ、俺の居場所はないから。


昔、ヒーローに憧れてた。

みんなを助けて、カッコよくて、輝いていて。

心から憧れていた存在だった。

キラキラしたそれに、将来絶対なるんだって決めてた。

――そんなの、ただの偶像だ。

ヒーローって、裏ではすげぇ苦労してんじゃねぇのか?

だって、何時いつだって人を救わないといけない。

何時いつだって「いい人」でいないといけない。

そんなプレッシャー、俺は耐えられない。

……だから、俺は「悪い人」になった。

いつも、ヒーローが倒す悪のような。

子供の頃の夢と正反対の人生を、送ろうとしてた。


そんな悪。

ヒーローは俺を倒してくれるんだろう?

悪は、周りの人に悪影響を及ぼす。

そんなのに、俺はなりたくない。

だけど、「悪」でいなきゃ。

友達が離れていってしまう。

嘲笑される。

もう、二度と今には戻れない。

だから、俺は変われない。


ヒーローに倒される。

それが俺の最期おわりだと思ってた。

というか、確信してた。

だって、テレビの中の悪者は絶対にヒーローに倒されたから。

その日が、怖かった。


――俺に、こんな時が来るなんて、想像したこと無かったよ。

なぁ。

君に聞きたい。

なんで、わるものを助けた?

なんで、わるものを認めた?

なんで、わるものを愛した?……。

君は、カッコよかった。

俺のヒーローは、悪をいつも倒してた。

助けてくれることなんてなかった。

でも、君は。

悪を倒すんじゃなくて、救ってくれた。

黒く染まっていた心を綺麗にしてくれた。

そんな君は、最高にカッコよくて、小さい頃の俺をそのまま写したみたいだった。

君は、俺の憧れだ。

「悪」が「ヒーロー」に惚れるなんてありえないかもしれないけれど。

この世界、どうだっていい。

だってそうなったって俺の気持ちは変わらないし、俺は、この道を進み続けるだろうから。

だから、君は――。


「どうなっても、俺のヒーローだ。」

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