光のキャンバス
「頑張ったね。」
その言葉の為だけに私は頑張ってきた。
その言葉さえあれば満足で。
君さえいれば満足で。
私の毎日は幸せだった。
だけど、ね。
君は辛そうで、悲しそうで。
私には興味、なかったんでしょう。
でも、君は優しいから。
私を可愛がって、愛してくれて。
私の前から、消えた。
君は人気者だった。
あえて強調しよう。
「だった」。
君は、そのままでいればずっと人気者だったはずだ。
でも、私に出会ってしまってから、日常は変わったんだろう。
私の毎日は、輝き始めた。
君がいたから、私は「楽しむ」ことを、「笑う」ことを、「生きる」ことをほんとの意味で分かったんだ。
君がいなければ、多分一生気づかなかった。
一生、私は生きながら死んで暮らしてた。
そんな私に君は「生命」をくれたんだ。
――自分の「生命」と引き換えに。
あなたも、絵の具を1度は使ったことがあるだろう。
私は、キャンバス。
新しく「生命」を与えられる存在。
これからどうなるか分からないけど、たくさんの希望に満ちている。
君は、絵の具。
色が綺麗で、輝いていて。
でも、どんどん消費されていく。
新しい「生命」を作り出すためにどんどんと。
新しい「生命」が生まれる度に、君は苦しみ、自分の「生命」を捨ててきた。
……でしょう?
君を見てて、そう感じたんだ。
ずっと、ずっと見てたもん。
君のことを、ずっと。
負担をかけてるってわかってた。
私のせいで、君が輝きを失ってるって。
色褪せてしまってるって。
だから、遠ざけようとした。
――でも、無理だった。
この私の「生命」があるのは、君のおかげなんだよ。
だから、この「生命」、君のために使いたい。
キャンバスが絵の具に尽くすなんて間違えてるってわかってる。
おかしいことだって知ってる。
でも、そうせずにはいられない。
君のおかげで、私の絵は完成したから。
君は、私といるのが辛かっただろう。
離れて欲しかっただろう。
でも、出来なかった。
君が私を救ってくれたように、今度は、私が君を救いたかった。
そんなこと、無理だってわかってた。
だって、こんな私1人の命を使ったって、救えるものなんて何一つないもの。
君の「生命」は、どんどん失われていった。
もしかしたら、もう無くなっていたのかもしれない。
だって、キャンバスに塗った絵の具は戻せないから。
もう、そこで輝き続けるしか道がないから。
だから、私はここで輝くよ。
ずっと、ずっと、
君のために、私は――。
「この世を、生きるよ。」
君が私のことを、認めてくれたから。
この物語を、君に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます