心の鎧

「人って、何?」


ぼそっと呟く。

このつぶやきを拾ってくれる人なんていない。

だって、私は「強い人」って思われてるんだから。

こんな弱音を吐くなんて、思われていないだろう。

だって、しょうがない。

学校での「強い私」はただの鎧。

中身を傷つけないための。

硬い、硬い、頑丈な。

中身はまるで、触ればすぐ壊れてしまうガラス細工。

――こんな私、誰も知らない。


そんな鎧は頑丈で。

私はガラス細工を1度も傷つけることなく時をすごした。

だが、逆に言うと、ガラス細工になんの手も加えず時をすごした。


そんな鎧ごと、包み込んでくれたのが君だった。

でも、壊すんじゃなくて、優しく丁寧に。

すごく、暖かくて。

ほんわりとした気持ちになった。

これが、私が初めて人に心を許した瞬間かもしれない。

――だって。

私が本音を晒すと、嘘だって言われる。

少しでも可愛くなろうとすると変って言われる。

本当の私を傷つけられるのが、怖かったんだ。

君は、可愛くて。

私と正反対。

そんな君が、なんで私に興味を持ってくれたか分からない。

このまま、仲良くなって行けるのかも分からない。

でも、君が言ってくれたあの言葉に私は救われた。

あの言葉のおかげで、私は鎧を少しずつ脱いで、自分らしくなることができたんだ。

君のおかげなんだよ。

全部、全部。

だから、君が人生の道に迷ってしまったら、

私が今度は君に返すよ。


「一人で背負わないで。」


この言葉は私の鎧からじゃない。

心の――ガラス細工からの、大切な、大切な言葉だ。

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