深海の光


「好きなんだ。」


そういったって、嘘だって見放される。

お前がそんな言葉言うわけないだろって拒まれる。

本当の気持ちを言ったって認められることはない。

真実を言ったって、信じてもらえない。

この世で僕が生きる意味とはなんなのだろうか。


気づいた時からひとりで、ぼっちで。

救ってくれる人なんていなかった。

生きてても、死んでも変わんない。

死んだ方が楽なんじゃないか。

そう思っていた。

世界が、暗かった。

灯りの差さない深海のようで。

とても、怖かった。


そんな海に光が差した。

それが、君だった。

ふっと現れて、可愛く微笑む君。

君は僕の心を一瞬で掴んで行った。

初めて抱える気持ちに動揺した。

深海に差すあの光を絶対に、絶対に追いかけ続けると決めた。


深海の海。

それは、怖くて、暗くて。

息ができない。

身動きだって取れない。

そんな中に差し込んだ光はとても美しくて。

「希望」を感じずにはいられなかった。


でも、君は姿を現さなかった。

あの笑顔を見ることは叶わなかった。

もう一度、見たい。

あの暖かくて、可愛くて、深海に差す光のような

輝かしい笑顔を。

だから、僕は探した。

初めて、こんなに懸命になった。

初めて、人を探した。

僕は、人を愛せなかったのだ。

ひとりになっていたのは、自分が人を愛さなかったから。

勝手に決めつけていたから。

僕が、悪かったんだ。

だから、僕は愛したい。

それを僕に教えてくれた、他でもない君を。

だから、もう一度光を見せてくれ。

その瞬間に差した光、それを僕は忘れない。

その光を見て、僕の頬は自然と緩む。

そして、言った。


「愛を、教えてくれてありがとう。」

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