第7話

その女性は、特別に仕事が忙しくなってしまったある日、家に帰ると、乱暴にカバンを放ってしまいました。

カバンを持ち上げると、その下にヤモリがいました。

その女性は、床にへばりついたヤモリを剝がして、ゴミ箱に捨てました。


その子は第二教育所に通い始めて半年と五日が経った日、全自動トラックに轢かれました。

冷たくなったその子を前に、あなたとその女性は、全自動トラックのプログラムを書いている会社の代表に、土下座されました。その人もくたびれた、謝り慣れた人でした。

その女性は、湧き上がる怒りと、心に空いた穴とで、泣き崩れました。

あなたはただ、その子と、土下座によって見える禿げた頭を見ていました。


あなたは不思議とこの禿げた代表に、怒りが湧きませんでした、思えばお母さんが亡くなった時もそうでした。

この人が殺したわけではない。

自分はこのプログラムに一定数出るバグを引いただけだ。

そう、プログラム。この世界は自分が生まれる数十年前から、全てプログラムで動いている。

人間はそのバグの発生時の責任を取るために存在しているにすぎない。

自分が怒りをぶつけるべき場所、復讐をすべき場所は、プログラム。人間を駒として使う、この社会システムだ。と思いました。



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