第6話
あなたはその女性の支えもあって、精神的に落ち着く時間が増えていきました。
そしてあなたとその女性は、第四教育所をトップレベルの成績で卒業しました。Aクラスでトップレベルというと、多くの公的機関から欲しがられる人材です。
その女性は適性検査の通りに、職業を選びました。あなたは適性検査をパスして、お菓子屋を立ち上げました。看板菓子はチョコブラウニーでした。
あなたとその女性が25歳になった時、子どもを授かりました。
可愛い女の子が生まれました。お菓子屋の奥、貧しいながらも、ヨジョウハンの暖かな光に満ちた空間で、その子はすくすくと育ちました。
ある日家の白い壁に、爬虫類の一種であるヤモリが止まっていることがありました。
「お父さん、あれは何?」
あなたは、その子の質問に、毎回ブラウニーを作る手を止めて答える人でした。
「ヤモリだよ。家守と書くから、家を守ってくれているんだよ」
その子はそこでヤモリが大好きになります。
あなたはその子を第一教育所に通わせるのを躊躇いました。その女性はあなたの事情を聞いていたから、あなたを否定することはしませんでした。しかし、第一教育所に通わせることは親としての責任なので、あなたが第一教育所に見学しに行くことを先生に許可してもらいました。
その子はあなたのような優しさも持ちながら、その女性のような天真爛漫さも持っていました。
「いっしょにあそぼ」
「いいよー」
「そのおもちゃかして」
「ちょっとまってね」
そういった会話を、普通だったら当たり前と気にも留めないような会話を、あなたはその女性に報告するのです。
あなたは三日間見学すると、あとはただ幸せそうに、家でチョコブラウニーを作ってその子の帰りを待っていました。
その女性は、その頃から、少し仕事が忙しくなってしまって、あなたにその子を任せるようになりました。
その女性は、それを言い訳だと思っているでしょう。
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