第48話レストランと友達


 セキュリティ会社も驚愕のあまり気絶する安心セキュリティに蒼はまたしも興奮のあまりキスをしようとするが、他の四人からお怒りのチョップを喰らい正気に戻った。

 蒼が正気に戻ると一瞬さっきの出来事が脳裏を過ぎったニャル様は、身震いした後に唇を尖らせ、注意しつつ話の本筋に戻る。


「……あれはもう勘弁してね?」


「あぁ……俺的にもアレはヤバい」


「そっか…………って、話がそれちゃったけど、皆も腕時計の画面タップしてよ」


 ニャル様に促された四人が言われた通りにすると、四人の前にも同じUIのウィンドウで地図が表示された。


「それで、一階のレストランを押すとぉ~」


 ニャル様は皆のが表示されているのを確認すると次の段階を説明し、その通りに五人揃って宙に浮く画面を押す。

 すると……先程まで五人が茶番を繰り広げていた廊下ではない、違う景色が目の前には広がっていたのだ。


「はいっと」


「The高級レストランって感じがするわね……」


「それ、あたしも思った……」


「ここでご飯食べるってマジ?」


「僕なんて、今凄く緊張してるよ……」


 そこは高級レストランと形容する他ない内装で ……大きなシャンデリアがいくつもあり、壁の至る所には美術的な大中小それぞれの絵画、床には芸術的美術工芸品のペルシャ絨毯が辺り一面に敷かれている。

 そんな環境なのだ、まだ子どもな四人が高揚ではなく緊張を抱くのも無理はなかった。


「にゃははは!そんなに緊張しなくて良いって!!キミ達着いてきて、友達を紹介するよ」


「友達なんて居たんだ」


「グハッ!」


「陽葵、結構えげつないわね……」


 ニャル様が自分に友達が居ることを告白すると、ついさっきまでガチガチに固まって緊張していた陽葵が、殺人級の右ストレートでニャル様の心に致命の一撃を与え、分かりやすくメンタルに来たニャル様。

 ニャル様が崩れ落ちたのを見ると、綾華は可哀想な人を見るかのような柔らかい表情をした。

 そんな綾華の言葉に察した陽葵は、思わぬ誤解を否定し訂正する。

 

「いやいやいや、神様にも友達が出来るんだなーって?」


「な、なるほどね?うん、分かった……大丈夫。ふぅ……良いかい?神だって、人の数程居る……なら友達だって一人や二人できるよ?」


「神様ってそんなに居るんだ……」


「まぁね」


「それより友達が一人や二人しか居ないのか……」


「グハッ!!あ、蒼っちぃ…………」


「一人や二人でも大丈夫。俺らがいるから……な?」


「あ、蒼っちぃ!!」


 陽葵の誤解の次は、蒼の天然攻撃。

 ニャル様は特に蒼と樹に対して友情を抱いているため、その相手に友達が少ないと言われた心へのダメージは到底推し量れるものではないのだ。

 しかし、蒼も悪気が合って言った訳ではない。

 蒼は人当たりが良く友達が多い、それこそ同学年のほとんどが友達だと言えるくらいに。

 そのため、持つ者である蒼と持たざる者であるニャル様とでは価値観が乖離かいりしたのだ。

 互いに裸の付き合いをした仲であり蒼の方からも友情を抱いているので、蒼も自分で抉ったニャル様の心の傷を自分でフォローした。

 そんな会話をしながら歩いていると、ニャル様は部屋の奥にある扉の前で止まる。


「っと……着いたね。それじゃあ早速……厨房の料理長でありボクの友達を紹介するよ」


「「「「ごくり……」」」」

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