第42話ー勝負の行方
(怯むな僕……大丈夫、勝てる!)
「さあ、樹……どうする?」
自分のことを大丈夫なのだと鼓舞した樹の目がキリッとすると、蒼は口角を上げながらアクションを要求した。
ひりつく様な空気を纏いながら一対一のタイマンをする二人に、他の三人は唾を飲む勢いで魅入っている。
そんな……三人の視線にプレッシャーを感じつつも、樹の頭の中は至って冷静だ。
ことブラックジャックには、
それを簡単に説明すると……ブラックジャックでプレイヤーが出来るだけ負けを少なくする為に、ディーラーのオープンカード一枚と自分のオープンカード二枚毎の組み合わせによって、それぞれベーシックストラテジーに記されているアクションをすれば良いよ!という表だ。
蒼のオープンカードは♥️の三、樹のオープンカードは♣️の八と♦️の八の合計十六。
そしてわベーシックストラテジーにおけるこの場合のアクションは……スプリットである。
「スプリット」
樹がスプリットを宣言してオリジナルベットと同額の八点を賭けつつカードを分割すると、蒼は樹のカードのそれぞれに一枚ずつ表向きにカードを追加する。
♣️の八に重なったのが♠️の八で、合計十六。
♦️の八に重なったのが♥️のキングで、合計十八。
しかし、樹のアクションはまだ終わらない……負けを勝ちに出来るスプリットではあるが、そんなスプリットには大きく分けて三つの特徴がある。
一つ目は、エースでのスプリットは一枚しか追加出来ないこと。
二つ目は、スプリットした後にも他のダブル等の特殊ルールが使えるということ。
そして三つ目は、スプリットした後に同じ数字が来た場合でも……
「スプリットアフタースプリット」
スプリットアフタースプリットを宣言した樹が♣️と♠️の八を分けて、またもオリジナルベットと同額の八点を賭けると、まだまだ勝負が分からないこのゲームに、蒼は心底楽しみながらカードを表向きに追加する。
♣️の八に重なったのが♥️のクイーンで、合計十八。
♠️の八に重なったのが♦️の三で、合計十一。
今の持ち点は……ディーラーの蒼が二十六点、八掛三の二十四点賭けた樹が十七点、二十三点をオールインしたニャル様が零点。
そして最大の期待値は……ディーラーの蒼がプラス四十七点の合計七十五点、樹がプラス四十八点の合計六十五点で、ニャル様がプラス二十三点の合計四十六点だ。
(僕の最大期待値は最終六十五点と言え、それは三つとも全て蒼に勝った場合だけ……一つ勝ちでプラス十六点の合計三十三点。そして、今僕が持っている最大数は十八のツーペア。このツーペアの十八点で勝てれば、一気に二つ勝ちでプラス三十二点の合計四十九点で良いけど、そうじゃなかった場合……ニャル様が勝てば僕は負ける。なら、ここは賭けるしか無い!!)
そのオープンカードを見た樹は一人熟考すると、合計十一のペアを指さして負けないための……いや、勝つためのアクションを宣言する。
「ダブル!」
「そうだよなー!勝ちたいよな!そう来なくっちゃ面白くない!!」
オリジナルベットと同額を上乗せした樹に、極度の興奮でハイになっている蒼が表向きにしてカードを置くと、静かにゲームを観戦していた陽葵と綾華……そして、闘志を燃やしていたプレイヤー三人ですら驚愕し、そのオープンカードの名を呼ぶ。
「「「「「ダイヤの七……」」」」」
―――
♣️2❌ ♣️3 ♣️4 ♣️5 ❌ ♣️6
♣️7 ♣️8❌ ♣️9
♣️10❌ ♣️J ♣️Q ♣️K ♣️A❌
♦️2❌ ♦️3❌ ♦️4 ♦️5 ♦️6
♦️7❌ ♦️8 ❌ ♦️9 ❌
♦️10 ♦️J ♦️Q❌ ♦️K ♦️A❌
♥️2 ♥️3❌ ♥️4❌ ♥️5 ♥️6 ❌
♥️7❌ ♥️8 ♥️9
♥️10❌ ♥️J ♥️Q❌ ♥️K ❌ ♥️A❌
♠️2 ♠️3 ♠️4 ♠️5 ♠️6❌
♠️7❌ ♠️8❌ ♠️9 ❌
♠️10 ♠️J❌ ♠️Q ♠️K ♠️A❌
※すみません。ガタツキが出てしまいました……
○豆知識
スプリットにおいて一番有名なのが八と八のスプリット。
合計十六というのはナチュラルブラックジャック(絵札とA以外で合計二十一にすること)に出来る確率があまりに低く、その上、ディーラーが必ず引かなくてはならない十七未満である為、かなり負けやすいと言えます。
その状態を崩しつつ新たな勝ち星に繋げられるので、戦略的にスプリットはかなり大事です!!
○ベーシックストラテジー
本文中にもありますが、それを見れば負けにくくなりますよー!っていうものです。プレイヤー全員(蒼、樹、ニャル様)がこれの通りに賭けています。
H:ヒット、S:スタンド 、DD(orD):ダブルダウン
SR:サレンダー、SP(orP):スプリット
【ブラックジャック】
※wiki等サイトからの引用、参照あり
〇ブラックジャックとは?
ブラックジャック:別名
〇基本ルール
プレイヤーはディーラーよりもカードの合計が21点に近ければ勝利で、
ただしプレイヤーの「カードの合計が21点」を超えると、その時点で負けて賭けたチップを全部失う。
〇カードの数え方
2……9までの数字はそのまま点数となり、10と絵札の(J:ジャック、Q:クイーン、K:キング)は10点で、A:エースは1点か11点の好きな方を選べる。
〇特別な役
最初に配られた2枚のカードがAと絵札……合計21点が完成していた場合を『ブラックジャック』といい、その時点でプレイヤーの勝ちで、配当は3 to 2の1.5倍。
但し、ディーラー側もブラックジャックだった場合は引き分けとなる。
〇簡単なゲームの流れ
①ゲームスタート。
②チップを賭ける。
③賭け終了。
④ディーラーがカードを2枚ずつ配る(ディーラーのは1枚目を表に、2枚目を裏向きに)。
⑤ディーラーがプレイヤーに対して順番に、カードを
何枚でもヒットできるが、21を超えると
要らなければ手を横に振って、
⑥ プレイヤー全員が選択を終えた後、最後にディーラーがカードをめくり、17点以上になるまでカードを引き続けて勝負となる。但し、ディーラーが21点以上になった場合はディーラーの負けとなり、バストせずに残っているプレイヤー全員の勝利。
⑦ ディーラーよりも21点に近いプレイヤーは勝ち、賭け金と同額の配当を得ることができる(つまりは2倍になって返ってくる)。逆にディーラーよりも21点に遠いプレイヤーは負けとなり、賭け金は没収されます。同点の場合は
【特殊ルール】
〇ダブリングダウン(ダブル)
▶︎ チップを
〇スプリッティングペアー(スプリット)
▶︎ 最初の二枚のカードが同数なら、オリジナルベットと同額の賭け金を追加することで、二手に分けて勝負することが出来まる。ただしAのスプリットのときは、追加カードは一枚のみ。スプリットをした後にもスプリットをすることができ、そのことをスプリットアフタースプリットと言う。
〇インシュアランス
▶︎ディーラーの
〇イーブンマネー
▶︎プレイヤーがブラックジャックで、ディーラーのアップカードがAだった場合、プレイヤーはディーラーの二枚目のカードを確認せずに1倍の配当を得る。ちなみに、互いがブラックジャックだった場合は配当がなく、相手がブラックジャックじゃなかった場合は配当が1.5倍になる。
〇サレンダー
▶︎降参すること。始めの2枚のカードが配られた時点で、賭け金の半額を放棄し、残りの半額だけを返してもらい勝負を降りることができます。
【カウンティング】
〇ランニングカウンティング(蒼がやってるやつ)
23456の低い数を➕1
789の中間を➕0
A10JQKの高い数を➖1
として出た数字を数え、累積させるカウント方法。
➖が多い程低い数が出やすくなっている為、十七になるまで引かなければならないディーラーが、21を超えないように小刻みに数字を引きしやすいので有利。
※蒼は忘れないように、重ねたチップの数でカウントを記録していた。
〇トゥルーカウンティング(今回は使わない)
カジノでよく使われるカウント方法。
基本カジノではランニングカウンティングの対策として、複数のデッキ(トランプカードのジョーカーを抜いた52枚のセットを1デッキという)を使う。
そのため、使われているカードのデッキ数をランニングカウントで割った本当のカウントをトゥルーカウントと言うのだ。
式)ランニングカウント➗デッキ数(残っているトランプカード➗52)=トゥルーカウント
※ただ、これらのカウントをしていることがバレると、カジノを出禁にされます。その位に強いです。そして、最近では機械でシャッフルするカジノもあるため、トゥルーカウントが出来ないところもあります。
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