第22話ー【干支の謎】正解


「あら、私寝ちゃってたのね……。ねぇ、何処まで進んだのかしら?」


 目を擦りながらゆっくりと椅子に座る綾華。

 綾華はボケているのか、先程まで自分の枕になっていた樹のシャツを羽織る。

 そんな綾華の質問に、樹は丁寧に答えた。


「おはよう、綾華……着るんだねそれ。取り敢えず、月日の主は月の出る夜と日の出る朝の文章に出てくる主語……主役のことで、そこから読み解いたら鼠の月に、鼬の日だってことが分かったよ」


「そして、鼬が優しい動物で神からどんな温情を受けてたのか考察してたら、鼬の日がついたちだって気づいた」


「鼬だから一日ねぇ……もはやギャグね。それで、鼠の月は分かったのかしら?」


「まぁ、何となく」


「鼠って一位ってこと以外に要素無さそうなんだよね。それこそ最初は、どっちも順位を当てはめると思ってたんだけど、鼬が引っかかってね」


「まとめると、こうじゃない?鼠は一位を勝ち取ったから干支の一番目になって、その一番を年の始まりの一月に当てはめた。そして、鼬は何で優しい動物か分からないけれど、優しかったから報われて、月の始めの一日を『ついたち』と呼ぶようになった……」


「うん、それであってると思う」


「そう?鼠って確か十一月だった様な気がしたけど?」


「え?そうなの?」


「んー……例えそうだとして、この問題って干支って最低限の知識があればイけると思うだよ。そう考えると、問題から得られない……結び付けれない要素は必要ないんじゃないかな?」


「うん。恐らくこの問題は、史実と創作がごっちゃになったものだと思う。そこで思ったのが、結局答えって一月一日じゃん?それって競走をした日でもあるんだよ」


「まぁ、そうね」


「てことはだよ?そもそも喧嘩する理由になった一月一日と、仲直りするキッカケになった物語に出てくる主役達の数字で解いた一月一日。そこには物語の起源になった一月一日が存在するんだ。それは偶然じゃなくて、意図的に問題として作られた必然だと思う方が自然じゃね?」


「史実と謎解き用の背景ストーリーがごっちゃに存在してるなら、そう考えるのが妥当そうね。一位という数字を一月として使われた鼠。鼬という名前が実際使われている一日ついたち。単純な様でなかなかに複雑だったわね……。」


「お前ら、他の意見はないな?……よし、じゃあ早速カレンダーに印付けようぜ!!」


「「「おう!!!」」」


―――


○今ある情報


・紙とペン一本

▶︎紙は謎解きの問題

▶︎4人分無いのは不自然

▶︎ペンはカレンダーに印を付ける用?


・天井

▶︎太陽と月のイラストが描かれている

▶︎問題の三番目の文章と何か関係が?


・カレンダー

▶︎謎解き用アイテム

▶︎南側にある棚の中にあった

▶︎大きさは手持ちサイズで小さめ

▶︎つ鼬で、ついたち?


・銅像

▶︎謎解き用アイテム

▶︎銅像の裏の壁に愚か者、優しき者、12位……1位とある

▶︎数ある干支物語に出てくる動物達だ

▶︎愚かな動物:猫

▶︎優しき動物:鼬

▶︎狡き動物:鼠

▶︎真っ直ぐな動物:?

A)猫▶︎鼬▶︎猪▶︎犬▶︎鳥▶︎猿▶︎羊▶︎馬▶︎蛇▶︎龍▶︎兎▶︎虎▶︎牛▶︎鼠


・神

▶︎ニャル様とは関係なさそう

▶︎動物の順位毎に恩恵を与える存在?

▶︎謎解きに必要な情報かは分からない


・猫と鼠

▶︎赤い本

▶︎ページ数は少なく、中身は絵本

▶︎いつもは宿敵な猫と鼠も手を取り合うことがあるらしい

▶︎何故『猫と鼠』がヒントになると蒼は思うのか?

(干支物語に出てくる動物だから)


【干支について】

昔、時間を決める時に使ったシステムであり、12匹の動物の名前が由来である。12匹の動物は1月から【鼠、牛、虎、兎、龍、蛇、馬、羊、猿、鳥、犬、猪】である。この順番は繁殖力の高い鼠が子孫繁栄を願われていたり、生活的に必要であった牛、虎のように勇ましくなれるように……等の意味があるがここでは割愛。ここでは12匹によってされたと思われる競走についての話をする。ある神様が月の名を決めるために、様々な動物を【1月1日】に呼んで競走させ、その中で取り分け早かった1位から12位の動物の名を使うことにした。結果は上の通りであるが、【鼠は猫を騙し【1月2日】に来るように仕向けたり、その日の前から準備していた牛に隠れて1位になったり】と、様々な事が起こったとされている。


【謎解き】

 

(一番目)

昔昔のこと、競走をした【14匹の動物】がいる。

その中の1匹は、【愚かな動物】。

その中の1匹は、【優しき動物】。

その中の1匹は、【狡き動物】。

 

(二番目)

【勘違いした優しき動物は【神】の温情により報われた。】

しかし、騙された愚かな動物には神の手は差し出されなかった。

愚かな動物は狡き動物を許さない。

怒った愚かな者は狡き者の銅像の順番を1番最後にした。

順番を弄った後、満足し愚かな者は帰った。

次の日【真っ直ぐな動物】が本当の順位に直そうとしたため、自分の動物を1番最初に置いた。

次の日順番が変わった自分の銅像を、狡き者は見つけた。

本当は1位なはずの自分が1番最後にいて、そうでない動物が1位にいることに怒り、全体的に変更させた。

次の日全体的に順番の違う銅像を優しき者が見つけた。

優しき者は何も言わずに元の順番に戻した。

それを見て遊び心の沸いた【ニャル様】が順番をバラバラにした。


(三番目)

順番がバラバラになってる銅像を見て全員喧嘩した。

特に愚かな動物と狡き動物の喧嘩は酷かった。

【月の出る夜、狡き動物が怒り狂った愚かな動物に傷つけられた。】

【日の出る朝、優しき動物が狡き動物の怪我を見つけた。】

優しき動物は悲しんだ。

皆に狡き動物が怪我したことを伝えると、愚かな動物にすぐ白羽の矢が飛んでいった。

愚かな動物はすぐに後悔し、認めた。


(四番目)

【もうこんな争いは起きてはいけない。

だから仲直りした、皆全員で。

この日は皆で手を取って楽しく笑った。

1年に1回は絶対楽しくしよう、皆で誓った。

しかし仲直りしていつも楽しく過ごしていると、その日のことを忘れてしまったのだ。】

思い出した者は【カレンダー】に、私達の物語の起源となったその日に印をつけて欲しい。

そして、【銅像の位置】が違う時は直してやって欲しい。

さすれば新たな道が貴方の前に現れるだろう。

【1つ忠告するのならば、まずは月日の主を探すが吉。】

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