第18話ー【干支の謎】表現の謎


「確かに……仲直りした日と競走をした日の議論、結構拮抗してたからね。綾華のその、新視点での考察は、謎解きで使えそうだね……」


「あたしもそう思う。謎解きで二つの可能性が拮抗するって、一つしか答えの無い謎解きの問題としては、おかしな話だからな。その状況を覆せる情報はナイス!だよね!」


 議論を進めた綾華に対して陽葵が素直に褒めると、綾華は腰に手を当て意気揚々とする。


「皆、もっと私の事を褒めなさい!」


「「「ナイスゥ!!」」」


「ふっふーん!!」


 三人からナイスの言葉を受け取ると、得意気にドヤ顔を決める。

 その様は体格も相まって、小学生が喜んでいる様にしか見えないのだが……三人とも、その想いはギュッと心にしまうことにした。

 それはそうと、新情報の深掘りをするべく、蒼が気になった点を皆に聞いた。


「そーいやさ、三番目って……順番がバラバラになって、愚かな動物……猫が反省するところまでだよな?」


「そうね。大体そこら辺よ」


「だよな。……これさ、こうやって細かく区別したから不明点が分かりやすくなったんだけど……ここの『月の出る夜、狡き動物が怒り狂った愚かな動物に傷つけられた』と『日の出る朝、優しき動物が狡き動物の怪我を見つけた』のところ、わざわざ月の出る夜、日の出る朝、って書いてるんだろう?」


「別におかしく無いと思うけど?」


「僕も、あまりピンと来ないかな」


 蒼の疑問に対して、特に……おかしな点は無いとツッコミを入れる陽葵と樹。

 しかし、それでも何かあるのだと蒼は自説を唱える。


「だってさ?別に夜と朝だけで通じるくないか?だからこそ月の出る、日の出るって表現に意味があると俺は思う」


「そうね……私は蒼の意見が的を得てると思うわね。メタ的になっちゃうけど、三番目のところで怪しいのってそこだけなのよ。だからこそ私の説が正しい場合は、必然的に唯一怪しい蒼の所が問題になってくるわ」


「確かに」


「そう言われてみるとそうだね……疲れちゃって、あんま頭働いてねーや」


「ちょっと休憩するか?」


「「「さんせー!!」」」


 色々な事があり心も身体も疲労している四人は、休憩することが決まると「疲れたぁ~」と呟きながら背伸びしたり、机に突っ伏したり、少し目を閉じたり、ストレッチしたりと、様々な方法で休憩をとる。

 少し無言の時間が続くと、背伸びをしていた陽葵が口を開く。


「そういえばさ……あれ、なんだろーね?」


 陽葵は天井に指を差しながら、三人に質問した。


―――


○今ある情報


・紙とペン一本

▶︎紙は謎解きの問題

▶︎4人分無いのは不自然

▶︎ペンはカレンダーに印を付ける用?


・カレンダー

▶︎謎解き用アイテム

▶︎南側にある棚の中にあった

▶︎大きさは手持ちサイズで小さめ


・銅像

▶︎謎解き用アイテム

▶︎銅像の裏の壁に愚か者、優しき者、12位……1位とある

▶︎数ある干支物語に出てくる動物達だ

▶︎愚かな動物:猫

▶︎優しき動物:鼬

▶︎狡き動物:鼠

▶︎真っ直ぐな動物:?

A)猫▶︎鼬▶︎猪▶︎犬▶︎鳥▶︎猿▶︎羊▶︎馬▶︎蛇▶︎龍▶︎兎▶︎虎▶︎牛▶︎鼠


・神

▶︎ニャル様とは関係なさそう

▶︎動物の順位毎に恩恵を与える存在?

▶︎謎解きに必要な情報かは分からない


・猫と鼠

▶︎赤い本

▶︎ページ数は少なく、中身は絵本

▶︎いつもは宿敵な猫と鼠も手を取り合うことがあるらしい

▶︎何故『猫と鼠』がヒントになると蒼は思うのか?

(干支物語に出てくる動物だから)


【干支について】

昔、時間を決める時に使ったシステムであり、12匹の動物の名前が由来である。12匹の動物は1月から【鼠、牛、虎、兎、龍、蛇、馬、羊、猿、鳥、犬、猪】である。この順番は繁殖力の高い鼠が子孫繁栄を願われていたり、生活的に必要であった牛、虎のように勇ましくなれるように……等の意味があるがここでは割愛。ここでは12匹によってされたと思われる競走についての話をする。ある神様が月の名を決めるために、様々な動物を【1月1日】に呼んで競走させ、その中で取り分け早かった1位から12位の動物の名を使うことにした。結果は上の通りであるが、【鼠は猫を騙し【1月2日】に来るように仕向けたり、その日の前から準備していた牛に隠れて1位になったり】と、様々な事が起こったとされている。


【謎解き】

 

(一番目)

昔昔のこと、競走をした【14匹の動物】がいる。

その中の1匹は、【愚かな動物】。

その中の1匹は、【優しき動物】。

その中の1匹は、【狡き動物】。

 

(二番目)

勘違いした優しき動物は【神】の温情により報われた。

しかし、騙された愚かな動物には神の手は差し出されなかった。

愚かな動物は狡き動物を許さない。

怒った愚かな者は狡き者の銅像の順番を1番最後にした。

順番を弄った後、満足し愚かな者は帰った。

次の日【真っ直ぐな動物】が本当の順位に直そうとしたため、自分の動物を1番最初に置いた。

次の日順番が変わった自分の銅像を、狡き者は見つけた。

本当は1位なはずの自分が1番最後にいて、そうでない動物が1位にいることに怒り、全体的に変更させた。

次の日全体的に順番の違う銅像を優しき者が見つけた。

優しき者は何も言わずに元の順番に戻した。

それを見て遊び心の沸いた【ニャル様】が順番をバラバラにした。


(三番目)

順番がバラバラになってる銅像を見て全員喧嘩した。

特に愚かな動物と狡き動物の喧嘩は酷かった。

【月の出る夜、狡き動物が怒り狂った愚かな動物に傷つけられた。】

【日の出る朝、優しき動物が狡き動物の怪我を見つけた。】

優しき動物は悲しんだ。

皆に狡き動物が怪我したことを伝えると、愚かな動物にすぐ白羽の矢が飛んでいった。

愚かな動物はすぐに後悔し、認めた。


(四番目)

【もうこんな争いは起きてはいけない。

だから仲直りした、皆全員で。

この日は皆で手を取って楽しく笑った。

1年に1回は絶対楽しくしよう、皆で誓った。

しかし仲直りしていつも楽しく過ごしていると、その日のことを忘れてしまったのだ。】

思い出した者は【カレンダー】に、私達の物語の起源となったその日に印をつけて欲しい。

そして、【銅像の位置】が違う時は直してやって欲しい。

さすれば新たな道が貴方の前に現れるだろう。

1つ忠告するのならば、まずは【月日の主】を探すが吉。

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