第19話ー【干支の謎】月と太陽


 陽葵の発言によって天井を見る三人、割と気にしていなかったが太陽と月が描かれていた。


「太陽と月、だな」


「太陽と月がどうかしたの?」


「いやさ、何で月と太陽の絵なのかなー?って」


「適当なんじゃね?」


 三人が天井の太陽と月の話をしている間、綾華は問題の三番目と四番目をじっくりと見て熟考していたが「ねぇ、ここ……」と、問題の四番目に指を差して呟くと、話を進める。


「最後の方に『1つ忠告するのならば、まずは月日の主を探すが吉』って書かれてるじゃない?これを私達はカレンダーの日付として捉えたけど、違う意味の可能性は無いかしら?」


「違う意味の可能性って?」


「月日は日付を意味するモノではなくて、月と日……いいえ、月と太陽って意味じゃないかしら?」


「ん?月と太陽って、あの天井の話?」


「天井の話では無いけど、そこから着想を得たわね」


「もしかして、三番目の所に書かれてる『月の出る夜』と『日の出る朝』のことか?」


「そうよ。日って、簡単に言えば太陽の事じゃない?」


「そうだね。日付の他に、太陽や日光のことを言ったりするね」


「うん……だとするとよ?ここの月日の主は、太陽と月のことを表してるから……」


「月の出る夜と日の出る朝の主を推理すれば良い。そういう事だろ?」


「そういうことね」


「綾華はホントに凄いよ!僕なんて天井に描かれてる太陽と月が、問題を解くためのヒントになってるなんて思わなかったもん!」


「(にひひ……また樹に褒められちゃった!)そ、そうかしら……?」


「うん!凄いよ!」


「うへへ……」


 ナチュラルにイチャイチャする綾華と樹。

 それを蒼と陽葵が見逃すはずもなく……。


「「ニヤニヤ」」


「いやぁ、陽葵さん。イチャイチャしてますなぁ!!」


「「…………………………」」

 

 うっざいニヤ付き顔をしながら、声高らかにイチャイチャしてる発言をかます蒼に、イチャイチャしてた綾華と樹は急に黙り出した、が……。


「いやぁ、蒼さん。綾華×樹、尊いですなぁ」


「えっ!?僕が受けなの!?」


 何故か男なのに受け判定にされた樹は、驚きのあまり大きな声を出した。


「流石陽葵、分かってるじゃない」


「やっぱり樹は……」


「「「受けだよね?」」」


「…………………………おっふ。蒼まで何だよ!もう!」


「樹は受けだろ?」


 蒼は否定する樹に対して、真顔で答える。


「知らないよ、そんなの!さも当然かの様に言ってさ!って……なんで、何言ってんのか分かんない?みたいな顔してるんだよ?!僕のが分かんないよ!!」


「まぁまぁ、一回落ち着きなさい樹」


「綾華……どうしてそんなに嬉しそうなんだよ」


「そ、そんなことないわ………それよりも、早く謎を解きましょう。それとも、私に攻められるのは嫌……なのかしら?」


 嬉しそうに微笑んでる綾華に樹が何故嬉しいのかを問うと、妖艶さを帯びた流し目で樹を見るものだから、樹の頭は空に浮かぶ雲の様に真っ白になった。


「僕は綾華のこと好きだから。全然嫌じゃないよ」


「「「……………………………………。」」」


「…………………………あれ?僕、なんか言った?」


「「「……………………………………。」」」


「綾華。顔赤いけど大丈夫?熱、ない?」


 脳死状態の樹に好きだと言われ、困惑よりも先に呆然とした綾華。

 そんな綾華に対して、顔が赤いからと言う理由で熱があるかも知れないと思った樹が、熱があるか確かめるため自分のおでこと綾華のおでこを重ねる。


「んー…………んんんん????熱が上がってきてる?」


「あっあっあっあっあっ………………先に、逝くね……」


 樹とのゼロ距離目線に耐えられなくなった綾華は、遺言を残し、バタッと倒れた。


「「し、死んだああああああああ!!!???」」


「えええええええっっっっ!!!!????」


―――


○今ある情報


・紙とペン一本

▶︎紙は謎解きの問題

▶︎4人分無いのは不自然

▶︎ペンはカレンダーに印を付ける用?


・天井

▶︎太陽と月のイラストが描かれている

▶︎問題の三番目の文章と何か関係が?


・カレンダー

▶︎謎解き用アイテム

▶︎南側にある棚の中にあった

▶︎大きさは手持ちサイズで小さめ


・銅像

▶︎謎解き用アイテム

▶︎銅像の裏の壁に愚か者、優しき者、12位……1位とある

▶︎数ある干支物語に出てくる動物達だ

▶︎愚かな動物:猫

▶︎優しき動物:鼬

▶︎狡き動物:鼠

▶︎真っ直ぐな動物:?

A)猫▶︎鼬▶︎猪▶︎犬▶︎鳥▶︎猿▶︎羊▶︎馬▶︎蛇▶︎龍▶︎兎▶︎虎▶︎牛▶︎鼠


・神

▶︎ニャル様とは関係なさそう

▶︎動物の順位毎に恩恵を与える存在?

▶︎謎解きに必要な情報かは分からない


・猫と鼠

▶︎赤い本

▶︎ページ数は少なく、中身は絵本

▶︎いつもは宿敵な猫と鼠も手を取り合うことがあるらしい

▶︎何故『猫と鼠』がヒントになると蒼は思うのか?

(干支物語に出てくる動物だから)


【干支について】

昔、時間を決める時に使ったシステムであり、12匹の動物の名前が由来である。12匹の動物は1月から【鼠、牛、虎、兎、龍、蛇、馬、羊、猿、鳥、犬、猪】である。この順番は繁殖力の高い鼠が子孫繁栄を願われていたり、生活的に必要であった牛、虎のように勇ましくなれるように……等の意味があるがここでは割愛。ここでは12匹によってされたと思われる競走についての話をする。ある神様が月の名を決めるために、様々な動物を【1月1日】に呼んで競走させ、その中で取り分け早かった1位から12位の動物の名を使うことにした。結果は上の通りであるが、【鼠は猫を騙し【1月2日】に来るように仕向けたり、その日の前から準備していた牛に隠れて1位になったり】と、様々な事が起こったとされている。


【謎解き】

 

(一番目)

昔昔のこと、競走をした【14匹の動物】がいる。

その中の1匹は、【愚かな動物】。

その中の1匹は、【優しき動物】。

その中の1匹は、【狡き動物】。

 

(二番目)

勘違いした優しき動物は【神】の温情により報われた。

しかし、騙された愚かな動物には神の手は差し出されなかった。

愚かな動物は狡き動物を許さない。

怒った愚かな者は狡き者の銅像の順番を1番最後にした。

順番を弄った後、満足し愚かな者は帰った。

次の日【真っ直ぐな動物】が本当の順位に直そうとしたため、自分の動物を1番最初に置いた。

次の日順番が変わった自分の銅像を、狡き者は見つけた。

本当は1位なはずの自分が1番最後にいて、そうでない動物が1位にいることに怒り、全体的に変更させた。

次の日全体的に順番の違う銅像を優しき者が見つけた。

優しき者は何も言わずに元の順番に戻した。

それを見て遊び心の沸いた【ニャル様】が順番をバラバラにした。


(三番目)

順番がバラバラになってる銅像を見て全員喧嘩した。

特に愚かな動物と狡き動物の喧嘩は酷かった。

【月の出る夜、狡き動物が怒り狂った愚かな動物に傷つけられた。】

【日の出る朝、優しき動物が狡き動物の怪我を見つけた。】

優しき動物は悲しんだ。

皆に狡き動物が怪我したことを伝えると、愚かな動物にすぐ白羽の矢が飛んでいった。

愚かな動物はすぐに後悔し、認めた。


(四番目)

【もうこんな争いは起きてはいけない。

だから仲直りした、皆全員で。

この日は皆で手を取って楽しく笑った。

1年に1回は絶対楽しくしよう、皆で誓った。

しかし仲直りしていつも楽しく過ごしていると、その日のことを忘れてしまったのだ。】

思い出した者は【カレンダー】に、私達の物語の起源となったその日に印をつけて欲しい。

そして、【銅像の位置】が違う時は直してやって欲しい。

さすれば新たな道が貴方の前に現れるだろう。

【1つ忠告するのならば、まずは月日の主を探すが吉。】

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