第17話ー【干支の謎】二択
「石像の件が片付いたから、いよいよ最後の謎ね」
樹にティッシュで鼻血を拭いて貰っている綾華が、何食わぬ顔で次の謎解きへの移行を促した。
「そうだね。それじゃあ日付の考察を始めようか」
「「「おう!!」」」
「まずさ……銅像の謎を通して俺が思ったのは、途中の方に書いてある背景ストーリーは、謎解きに必要ない可能性があることだな」
「分からなくはないな……実際使ったのは、最初と最後の部分だけだし。でもさぁ、絶対使わないなんて事は無いと思うんだよね。銅像の順番を云々……ってところは使わないと思うけど、猫と鼠の喧嘩あたりは最終的に仲良くなる物語としての雨、山場だと思うんだ……」
「ん?それって、カレンダーの日付は仲直りした日と関係あるって感じなの?」
「どうかしらね……問題には『私達の物語の起源になったその日に印を』って書いてあるのよ。そこで大事なのが物語の定義。これを干支物語とするなら、日付は動物達が競走をした一月一日になるわ」
「正直一月一日だと思うんだよな……でもさ、ここに書いてある『私達の物語の起源になったその日に印を』の前に『もうこんな争いは起きてはいけない。だから仲直りした、皆全員で。この日は皆で手を取って楽しく笑った。1年に1回は絶対楽しくしよう、皆で誓った。しかし仲直りしていつも楽しく過ごしていると、その日のことを忘れてしまったのだ』って文章があるんだよ。これってさ、動物達が仲直りした物語の起源……つまりは、仲直りした日に印を付けてって意味にもならないか?」
「あたし的には仲直りの方なんだよなぁ……メタにもなるけど、ヒントに出てきた確実性のある日付って一月一日と一月二日だけじゃん?それってさ、一月一日がかなり強調されてないか?明ら様過ぎてミスリードとしか思えないし、文章的にも仲直りの方だと思った」
「そうだねぇ……文章的にはほぼ確実に仲直りした日の方なんだよね。でもさ、物語的には競走の一月一日は全然あると思うんだよ。結局のところ、猫と鼠が喧嘩したのだって競走があったこそだからさ、そこまで引っ括めるなら答えは一月一日なんだよね……」
「これはあくまで新しい視点なんだけどね。この問題って四等分できないかしら?」
カレンダーに印を付ける日付が、競走をした一月一日と仲直りした日のどちらかを議論していると、綾華が新要素を追加した。
その新要素に対して陽葵が、すかさず深堀を求める。
「四等分って?どういう風に分けるの?四等分にして、それでどうなんの?」
「今説明するわね。この物語は…一番目に登場人物の紹介、二番目に銅像の順番云々、三番目に喧嘩と仲直り、最後に追記……というか、謎解きの問題にあたる部分……つて感じに分けれるのよ」
「確かに、言われてみればそうかも」
「そこで思い出して欲しいのだけど、何で銅像の位置が間違ってたら戻して欲しいかって、物語の二番目のところで順番がごっちゃになった過去があるからじゃないかしら?私も何となくでスルーしてたけど…この銅像をごっちゃにした過去だって、考え方によっては立派なヒントになるのよ」
「つまり?」
「三番目、喧嘩と仲直りの所にヒントがあると、私は思うわ」
―――
○今ある情報
・紙とペン一本
▶︎紙は謎解きの問題
▶︎4人分無いのは不自然
▶︎ペンはカレンダーに印を付ける用?
・カレンダー
▶︎謎解き用アイテム
▶︎南側にある棚の中にあった
▶︎大きさは手持ちサイズで小さめ
・銅像
▶︎謎解き用アイテム
▶︎銅像の裏の壁に愚か者、優しき者、12位……1位とある
▶︎数ある干支物語に出てくる動物達だ
▶︎愚かな動物:猫
▶︎優しき動物:鼬
▶︎狡き動物:鼠
▶︎真っ直ぐな動物:?
A)猫▶︎鼬▶︎猪▶︎犬▶︎鳥▶︎猿▶︎羊▶︎馬▶︎蛇▶︎龍▶︎兎▶︎虎▶︎牛▶︎鼠
・神
▶︎ニャル様とは関係なさそう
▶︎動物の順位毎に恩恵を与える存在?
▶︎謎解きに必要な情報かは分からない
・猫と鼠
▶︎赤い本
▶︎ページ数は少なく、中身は絵本
▶︎いつもは宿敵な猫と鼠も手を取り合うことがあるらしい
▶︎何故『猫と鼠』がヒントになると蒼は思うのか?
(干支物語に出てくる動物だから)
【干支について】
昔、時間を決める時に使ったシステムであり、12匹の動物の名前が由来である。12匹の動物は1月から【鼠、牛、虎、兎、龍、蛇、馬、羊、猿、鳥、犬、猪】である。この順番は繁殖力の高い鼠が子孫繁栄を願われていたり、生活的に必要であった牛、虎のように勇ましくなれるように……等の意味があるがここでは割愛。ここでは12匹によってされたと思われる競走についての話をする。ある神様が月の名を決めるために、様々な動物を【1月1日】に呼んで競走させ、その中で取り分け早かった1位から12位の動物の名を使うことにした。結果は上の通りであるが、【鼠は猫を騙し【1月2日】に来るように仕向けたり、その日の前から準備していた牛に隠れて1位になったり】と、様々な事が起こったとされている。
【謎解き】
(一番目)
昔昔のこと、競走をした【14匹の動物】がいる。
その中の1匹は、【愚かな動物】。
その中の1匹は、【優しき動物】。
その中の1匹は、【狡き動物】。
(二番目)
勘違いした優しき動物は【神】の温情により報われた。
しかし、騙された愚かな動物には神の手は差し出されなかった。
愚かな動物は狡き動物を許さない。
怒った愚かな者は狡き者の銅像の順番を1番最後にした。
順番を弄った後、満足し愚かな者は帰った。
次の日【真っ直ぐな動物】が本当の順位に直そうとしたため、自分の動物を1番最初に置いた。
次の日順番が変わった自分の銅像を、狡き者は見つけた。
本当は1位なはずの自分が1番最後にいて、そうでない動物が1位にいることに怒り、全体的に変更させた。
次の日全体的に順番の違う銅像を優しき者が見つけた。
優しき者は何も言わずに元の順番に戻した。
それを見て遊び心の沸いた【ニャル様】が順番をバラバラにした。
(三番目)
順番がバラバラになってる銅像を見て全員喧嘩した。
特に愚かな動物と狡き動物の喧嘩は酷かった。
月の出る夜、狡き動物が怒り狂った愚かな動物に傷つけられた。
日の出る朝、優しき動物が狡き動物の怪我を見つけた。
優しき動物は悲しんだ。
皆に狡き動物が怪我したことを伝えると、愚かな動物にすぐ白羽の矢が飛んでいった。
愚かな動物はすぐに後悔し、認めた。
(四番目)
【もうこんな争いは起きてはいけない。
だから仲直りした、皆全員で。
この日は皆で手を取って楽しく笑った。
1年に1回は絶対楽しくしよう、皆で誓った。
しかし仲直りしていつも楽しく過ごしていると、その日のことを忘れてしまったのだ。】
思い出した者は【カレンダー】に、私達の物語の起源となったその日に印をつけて欲しい。
そして、【銅像の位置】が違う時は直してやって欲しい。
さすれば新たな道が貴方の前に現れるだろう。
1つ忠告するのならば、まずは【月日の主】を探すが吉。
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