第15話ー【干支の謎】見落とし
「タイトルは『干支について』。で、著者名が……」
「ニャル様」
「そう、ニャル様。…………え?蒼何で分かったの!?」
「いや……単純に陽葵の方で見つけたのも赤い本で、著者名はニャル様だったから……」
「そうだったんだ……」
陽葵の方で見つけた本も赤く、かつ著者名がニャル様だった。
恐らくそれは、ニャル様が問題を作る上でヒントを書いたからなのだろう。
しかし、そんなことを気にしている場合では無かった。
「それと、はい、これ」
綾華は皆の前にカレンダーを置いた。
「やっぱりカレンダーあったね」
「まぁ、そりゃねぇ……所で蒼は何か分かったの?」
「色々分かったぜ。取り敢えず、最初に銅像の件を片付けよう」
「分かった。それじゃあ蒼から探索結果を聞こうか」
「OK、まず俺が探索して分かったことは三つ。一つ目は銅像が動物だということ。二つ目は銅像が十四あったということ。最後に三つ目、銅像の下に右矢印があったんだが恐らく、動物の順位を左から順番に並べるということ。分かったのはこの三つだな」
蒼は指で分かったことの数を示すと、淡々と説明を始めた。
三人は、蒼の説明を各々頭で整理しながら聴く。
蒼の説明が終わると陽葵から口を開く。
「銅像の動物って何だったんだ?一応こっからでも見えるけど、やっぱりちゃんと探索した蒼に詳しく聞きたい」
「動物の種類は、鼠・牛・虎・兎・龍・蛇・馬・羊・猿・鳥・犬・猪・鼬・猫だった」
「もしかしなくても干支の動物達ね……」
「
「それプラス、猫と鼬だね。でも、猫と鼬って干支に関係あったっけ?」
そうだ干支の動物は十二匹で、十四匹ではないのだ。
そのことに引っかかった陽葵は疑問を呈し、それに樹が答える。
「本で読んだことがあるんだけど、干支って地域によって動物の順番とかが違うんだよね。数ある干支物語の中で猫が出てくるのもあるんだけど……でも引っかかるのが、猫は聴いたことあるんだけど、鼬って聴いたことないことなんだよね」
「そうなんだよなぁ…俺も鼬って聴いたことないんだよ。だから皆のヒントを見て考えようって思ったんだけど、それが分かりそうになかったから先に片付けたいなって」
「んー…………もしかしてさ、蒼。何かヒントを見落としてない?」
「かもしれない……ちょっと待って、もうちょい見てくるわ」
「仕方ないな。あたしも着いて行ってやるよ」
二人で席を立ち銅像の方に向かう。
「んー……?やっぱり特になんもないよな?」
銅像の前に立ち銅像を眺める蒼。
しかし、何も見つけられなかった。
蒼が頭を悩ませていると、銅像の横を見ていた陽葵が声を上げた。
「蒼!こっち来て!」
「ん?何か見つけたの?」
「うん。何か書いてある」
陽葵が何かを見つけたらしく、期待を胸に向かった。
陽葵の所まで行くと、「こっちこっち」と陽葵が指差した銅像の裏にある壁を覗いた。
「やばい、これ見落としてたのか……」
銅像と裏の壁は三人分位の幅があり、ちゃんと見たら絶対に見落とすことのないヒントだった。
「陽葵、戻ろうか」
「何か分かったの?」
「まぁ、ね……あーあ、ホントにあれ見落とすとかゲーム初心者かよ、やばいわ」
「まぁまぁ。気づいたから良いじゃん」
「陽葵サンキュー」
「あいよ!」
陽葵と蒼は会話しながら席に戻り、椅子に座った。
二人が帰って来たのを確認した樹は、何があったのか蒼に聞く。
「蒼、どんなヒントがあったの?」
「銅像の裏の壁に書いてあったのは、愚か者、優しき者、12位……1位って感じ。さっき俺、右矢印があったって言ったじゃん?あれね、左から順番に、右の方にいくに連れて順位が高くなっていくみたいだったわ。ついで言うと愚か者が十四位で、優しき者が十三位なんだと思う」
愚かな動物▶︎優しい動物▶︎十二位▶︎……一位、といった感じだろう。
そして十二位から一位は干支の動物の順位だとして、余った愚かな動物と優しい動物が、猫と鼬のどちらかを推理すれば銅像の件は解決ということになる。
「じゃあ、愚かな動物と優しい動物がどっちなのか推理しようか」
―――
○今ある情報
・紙とペン一本
▶︎紙は謎解きの問題
▶︎4人分無いのは不自然
▶︎ペンはカレンダーに印を付ける用?
・カレンダー
▶︎謎解き用アイテム
▶︎南側にある棚の中にあった
▶︎大きさは手持ちサイズで小さめ
・銅像
▶︎謎解き用アイテム
▶︎ 銅像の裏の壁に愚か者、優しき者、12位……1位とある
(愚かな動物▶︎優しい動物▶︎十二位▶︎……一位の順番だろう)
▶︎恐らく奥の方にある銅像
「馬」「虎」「龍」「犬」「猫」「牛」「鳥」「兎」「蛇」「猿」「鼬」「鼠」「羊」「猪」
▶︎干支の動物だと思われる
▶︎愚かな動物と優しい動物は猫と鼬のどれがどれだろう?
(内容的に赤い本二つと謎解きの問題が関係しそう?)
・神
▶︎ニャル様とは関係なさそう
▶︎動物の順位毎に恩恵を与える存在?
▶︎謎解きに必要な情報かは分からない
・猫と鼠
▶︎赤い本
▶︎ページ数は少なく、中身は絵本
▶︎いつもは宿敵な猫と鼠も手を取り合うことがあるらしい
▶︎何故『猫と鼠』がヒントになると蒼は思うのか?
【干支について】
昔、時間を決める時に使ったシステムであり、12匹の動物の名前が由来である。12匹の動物は1月から【鼠、牛、虎、兎、龍、蛇、馬、羊、猿、鳥、犬、猪】である。この順番は繁殖力の高い鼠が子孫繁栄を願われていたり、生活的に必要であった牛、虎のように勇ましくなれるように……等の意味があるがここでは割愛。ここでは12匹によってされたと思われる競走についての話をする。ある神様が月の名を決めるために、様々な動物を1月1日に呼んで競走させ、その中で取り分け早かった1位から12位の動物の名を使うことにした。結果は上の通りであるが、鼠は猫を騙し1月2日に来るように仕向けたり、その日の前から準備していた牛に隠れて1位になったりと、様々な事が起こったとされている。
【謎解き】
昔昔のこと、競走をした【14匹の動物】がいる。
その中の1匹は、【愚かな動物】。
その中の1匹は、【優しき動物】。
その中の1匹は、【狡き動物】。
勘違いした優しき動物は【神】の温情により報われた。
しかし、騙された愚かな動物には神の手は差し出されなかった。
愚かな動物は狡き動物を許さない。
怒った愚かな者は狡き者の銅像の順番を1番最後にした。
順番を弄った後、満足し愚かな者は帰った。
次の日【真っ直ぐな動物】が本当の順位に直そうとしたため、自分の動物を1番最初に置いた。
次の日順番が変わった自分の銅像を、狡き者は見つけた。
本当は1位なはずの自分が1番最後にいて、そうでない動物が1位にいることに怒り、全体的に変更させた。
次の日全体的に順番の違う銅像を優しき者が見つけた。
優しき者は何も言わずに元の順番に戻した。
それを見て遊び心の沸いた【ニャル様】が順番をバラバラにした。
順番がバラバラになってる銅像を見て全員喧嘩した。
特に愚かな動物と狡き動物の喧嘩は酷かった。
月の出る夜、狡き動物が怒り狂った愚かな動物に傷つけられた。
日の出る朝、優しき動物が狡き動物の怪我を見つけた。
優しき動物は悲しんだ。
皆に狡き動物が怪我したことを伝えると、愚かな動物にすぐ白羽の矢が飛んでいった。
愚かな動物はすぐに後悔し、認めた。
もうこんな争いは起きてはいけない。
だから仲直りした、皆全員で。
この日は皆で手を取って楽しく笑った。
1年に1回は絶対楽しくしよう、皆で誓った。
しかし仲直りしていつも楽しく過ごしていると、その日のことを忘れてしまったのだ。
思い出した者は【カレンダー】に、私達の物語の起源となったその日に印をつけて欲しい。
そして、【銅像の位置】が違う時は直してやって欲しい。
さすれば新たな道が貴方の前に現れるだろう。
1つ忠告するのならば、まずは【月日の主】を探すが吉。
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