第13.5話ー【干支の謎】探索:樹(綾華と合流)
「ふふふ……何してるのかしら?」
「何って、あの赤い本を取ろうとしているんだよ。綾華こそ何か見つけたの?」
僕は先程まで棚を開けては何かを捨てを繰り返してた綾華が、何故満面の笑みでここに居るのかが気になった。
「うん見つけたよ。カレンダー」
「やったね!でも、何でそんなに笑顔なんだ?まだ謎を解き終えた訳じゃないのに……」
「ん?それはね、樹が頑張って背伸びしてるのが可愛くて……」
僕の薄いプライドというガードをすり抜け、心に直接攻撃してきた綾華。
何より、綾華に言われたことで他の人の百倍はダメージが効き、僕の心は瀕死寸前になった。
「か、可愛い……?ぐはっ!」
「うん、可愛いわよ?」
瀕死寸前からの追加攻撃でKO!
砂の如くバラバラな心が冬の木の葉の様に散っていく。
だが、これで終わる樹じゃ無かった。
樹はメンタルの蘇生を試みたのだ。
「ははは…綾華は冗談が上手なぁ……それとも、何か別の言葉と言い間違えてるのかな?」
「言い間違えじゃあ無いわね」
「…………………………………………。」
メンタルの蘇生を試みるも虚しく終わった。
そうだ、終わったのだ。
ハートは崩れ落ちるだけでなく色すら失い、まるで灰みたいに何も残らない……。
「でもね?樹は、それ以上にカッコイイわよ?」
「っ!?今、なんて……?」
「樹……カッコイイわよ……」
カッコイイと耳打ちする綾華。
その瞬間、灰だった心が不死鳥の如く復活を遂げた。
樹の心は綾華に壊され、綾華に再生させられたのだ。
カッコイイと綾華に言って貰ったことに樹が喜んでいると、綾華が提案をした。
「樹はあの赤い本が取りたいのよね?」
「ん?う、うん……そうだね」
「ならさ、樹が私を抱っこしてよ」
脳内検索。抱っことは?
抱っことは人が人を持ち抱えることを言い、密着する。
密着、する………………???????
「んー?????????」
「樹が私のことを持ち上げたら届くでしょ?」
「確かに……」
「なら、はいっ」
手を広げ樹にアピールする綾華。
それは樹にとって破壊力が高く、ただでさえ異性を抱っこする事実が緊張どころの話じゃないのに、それに加えて好きな相手となると変な汗が止まらず、ついさっき復活を遂げた心臓がオーバーヒートで再度灰になりかけている。
しかし樹も男だ。
好きな相手と合法的に抱き合えるなら抱き合いたい!
それが例え、抱っこという形であっても!!
「じゃ、じゃあ行くよ?」
「う、うん……」
高鳴る鼓動、震える手、蒸発寸前の脳。
それらの壁を乗り越えて至福を得られるはずだった。
しかし、樹は綾華に触れた瞬間、緊張と興奮がピークに達してしまい、防衛本能が思考をシャットダウンさせたのだ。
だからだろうか?綾華も綾華で胸の鼓動が高鳴っていたため、二人は陽葵の声が聞こえた様な気がするのだが、そっちに気が向くことはなかった。
「………………………………………………。」
「…………取れた、わよ?」
「………………………………………………。」
取れた、という言葉を聴いたことにより、無意識的に綾華を下ろす樹。
綾華を下ろし綾華の身体から手が離れた瞬間、樹の意識は代償の果てに戻った。
「あれ?なんで綾華が赤い本持ってるの?」
「え?あっ、あぁそうね……樹が取ってくれたんじゃないの」
「え?……あ、そういえばそうだったね!は、ははは」
「そ、そうよ、ははは。そ、それじゃあ戻りましょうか」
「そ、そうだね。ははは」
樹と綾華が乾いた笑い声と引きつった笑みを浮かべながら席に戻ろうとすると、椅子に座りながらニヤニヤとした笑顔でこちらを見つめる二人の姿があった。
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