第9話ー【干支の謎】考察開始
「そうと決まったら、早速この謎を解いてやろうぜ!」
「さっきも言ったけど一応。十四匹の動物が居て、その中でも優しい動物、愚かな動物、狡い動物、真っ直ぐな動物、この四匹がピックアップされてるって感じだったね」
謎解きから脱線したのもあり、樹が気を利かせてもう一度問題について確認した。
その再確認を皆でし終えると、一つずつ謎を片付けていくのが筋と言わんばかりに、四人で噛み付くように議論を始める。
「この動物達は、かなり順位に固執してるわね。それこそ狡い動物が出てくるほどに……」
「てことはさ、順位が高くなる程に何かの恩恵を得られる可能性がないか?」
「それは有り得るね……でもその恩恵が何かは、今ある情報だけじゃ分からなそう」
「そもそも恩恵の内容が問題なのかすら分かんないな」
「と、いうと?」
「いやさ……例えば恩恵が金だとして、その金がこの問題を解くのに必要な要素なのか今は分からなくないか?」
「確かにそうだね……じゃあ恩恵については保留、ということでOK?」
「それで良いと思う」
狡い動物という要素から、競走の果てに何らかの恩恵があるのでは無いか?そう考えた四人は、恩恵について思案し始めたが、結果として恩恵については保留することにした。
「そういえばさ、そこにペンが一本あるじゃん?」
「ん?これのこと?」
「そうそれ。何に使うんだと思う?」
「ん?普通にメモじゃないの?」
「メモ用ならさ、ニャル様がこれ作ったんだから人数分あっても良くね?それにメモ用紙ないし…」
「私達を連れてきたのもニャル様(笑)だものね。暇つぶしの獲物を私達4人に絞ってたなら、全然四人分あっても不思議じゃないし、逆に一本しかないのが不自然ね」
「ねぇ樹、それ一回貸してくれない?」
「いいよ、はいどーぞ」
「ありがと」
陽葵が樹から謎の問題用紙を受け取ると、顎に手を当てながら最初から最後までをズラーと見直した。
陽葵は最後まで見ると顎に当ててた手をどけて、への字だった口を開く。
「今のところ特に気になった点が三つあるの。最後の方に書かれてる……銅像の位置が違かったら元の位置に直しってとこと、カレンダーの日付に印を付けるとこ、そして月日の主を探すが吉ってとこ」
「もしかしてさ……銅像の位置を直すのと、カレンダーの日付に印を付けるのが、この謎……問題をクリアするのに必要ってことだよね」
「多分そうね……そして、月日の主を探すが吉ってのは何かしらのヒントの可能性があるわ」
「恐らくだけど、月日ってことはカレンダーの謎を解くのに必要なヒントなんじゃないか?」
「もっと言うと、銅像の謎は競走の順位なんじゃない?」
「まとめると、問題は二つあって……カレンダーの謎は月日の主を探してペンで印を付ける。銅像の謎は動物十四匹の競走の順位を解いて、その順番通りに銅像を並び直す。こんな感じかな?」
「そういえばさ……カレンダーってどこにあんの?」
「「「……………………あ」」」
「それはそうとさ、もうそろそろコレから得られる今必要な情報は無くなったかな?」
「待って。もう一つ気になったことがあるのよ。問題の最初の方に書かれてる神についてね」
「あーそれね。実は僕も気になってたんだ」
「神ってニャル様のことじゃないの?…………あ、ニャル様の呼称がニャル様だから違うのか」
「そうなのよ。そして、その神は動物に温情……という文からハッキリとした上下関係があるのが分かるわ」
「つまりは、動物達に順位毎の恩恵を与えるのは、この神ってことになるのか……」
「そうね。もっと言えば問題が物語形式なのもあって、問題内の時間が進んでるから、与えたってことになるわ。まぁ、これが問題なのかどうかは分からないのだけれど」
「そうだね、謎解きの要素の一つとして頭には留めておこう。それじゃあ謎解きの醍醐味、探索へと移ろうか」
「あいよ」
謎解きの問題の神とはニャル様のことなのか、それとも違う存在なのか……それは話し合いの結果、物語上に出てくる新たな神だという結論に至った。
そしてその神は、動物達に順位毎の恩恵を与える存在なのだと四人は考えたのだ。
ただ、その考えが問題を解く上に必要なのかは分からなかったため頭の片隅に留めておき、四方にそれぞれが探索することとなる。
銅像のある位置を北とした時、北の探索をするのが蒼、西の探索をするのが陽葵、東の探索をするのが樹、南の探索をするのが綾華だと、皆で適当に振り分けた。
―――
○今ある情報
・紙とペン一本
▶︎紙は謎解きの問題
▶︎4人分無いのは不自然
▶︎ペンはカレンダーに印を付ける用?
・カレンダー
▶︎謎解き用アイテム
▶︎どこにあるか分からない
・銅像
▶︎謎解き用アイテム
▶︎順番を元に戻すと良さそう
▶︎恐らく奥の方にある銅像
・神
▶︎ニャル様とは関係なさそう
▶︎動物の順位毎に恩恵を与える存在?
▶︎謎解きに必要な情報かは分からない
【謎解き】
昔昔のこと、競走をした【14匹の動物】がいる。
その中の1匹は、【愚かな動物】。
その中の1匹は、【優しき動物】。
その中の1匹は、【狡き動物】。
勘違いした優しき動物は【神】の温情により報われた。
しかし、騙された愚かな動物には神の手は差し出されなかった。
愚かな動物は狡き動物を許さない。
怒った愚かな者は狡き者の銅像の順番を1番最後にした。
順番を弄った後、満足し愚かな者は帰った。
次の日【真っ直ぐな動物】が本当の順位に直そうとしたため、自分の動物を1番最初に置いた。
次の日順番が変わった自分の銅像を、狡き者は見つけた。
本当は1位なはずの自分が1番最後にいて、そうでない動物が1位にいることに怒り、全体的に変更させた。
次の日全体的に順番の違う銅像を優しき者が見つけた。
優しき者は何も言わずに元の順番に戻した。
それを見て遊び心の沸いた【ニャル様】が順番をバラバラにした。
順番がバラバラになってる銅像を見て全員喧嘩した。
特に愚かな動物と狡き動物の喧嘩は酷かった。
月の出る夜、狡き動物が怒り狂った愚かな動物に傷つけられた。
日の出る朝、優しき動物が狡き動物の怪我を見つけた。
優しき動物は悲しんだ。
皆に狡き動物が怪我したことを伝えると、愚かな動物にすぐ白羽の矢が飛んでいった。
愚かな動物はすぐに後悔し、認めた。
もうこんな争いは起きてはいけない。
だから仲直りした、皆全員で。
この日は皆で手を取って楽しく笑った。
1年に1回は絶対楽しくしよう、皆で誓った。
しかし仲直りしていつも楽しく過ごしていると、その日のことを忘れてしまったのだ。
思い出した者は【カレンダー】に、私達の物語の起源となったその日に印をつけて欲しい。
そして、【銅像の位置】が違う時は直してやって欲しい。
さすれば新たな道が貴方の前に現れるだろう。
1つ忠告するのならば、まずは【月日の主】を探すが吉。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます