第8話ー【干支の謎】心意気


「なあ……お前らはコレの意味分かったか?」


「強いて言えば……十四匹の動物が居て、その中でも優しい動物、愚かな動物、狡い動物、真っ直ぐな動物、この四匹がピックアップされてるね」


「ついでに、ニャルラトホテプとか名乗った自称神が、自分のことをニャル様って書く、痛いヤツだってことも分かったわね」


「じゃあこれからはニャル様って呼んだ方が良いかな?」


「可愛いから良いんじゃね?ニャルラトホテプって、氏名レベルで長い名前だし」


「あ……そんなことよりさ、一回現状について話し合わない?」


「「「賛成」」」


 この短い時間で四人には到底信じられない様な非日常的な現象が起こってしまったのだ。

 そんなどうしようも無い現実を受け入れるには、人生の多くを共に歩み、今同じ境遇にいる仲間との話し合いが一番だった。


「ここってゲーム世界じゃないって言ってたけどさ。ゲームじゃあんな焼けるような痛みはしないじゃん?」


「まぁ、しないね。ゲームに合わせた痛みを感じちゃったら現実の脳に負荷が掛かるからね……だから実際問題、そこら辺は政府の許可が無いと発売出来ないからね」


「でも、これが現実だっ!って言われても……って感じするよね。現実味がある夢って言われた方が納得できるし」


「それはそうね……それと、皆はあの自称神の事はどう思う?」


「神を自称するなんて、本物か厨二病かのどちらかじゃないかな?」


「神なんて今まで見たこと無いから……信じれって言うのが無理あるよ…………蒼はどう思う?」


「………………」


 自称神を名乗る存在は自分の事をニャルラトホテプと言った。

 確かに自分の事を神だ悪魔だと名乗る様な奴は、永遠に治ることのない不治の病……厨二病の患者だと思われるだろう。

 しかし……感覚が存在するフルダイブ型VRゲームを通して様々な修羅場を経験した……いやそれ以前に、根底に天性の才能があるからなのだろう、蒼だけが自称神に対して違和感を感じたのだ。


「俺は、本物だと思った……」


「それはどうしてかしら?神なんて荒唐無稽なモノを信じる様な蒼じゃないと思うけれど」


「まずさ、俺たちはゲームをしようと思ったらここに飛ばされただろ?それ自体はゲームという前提下なら何でもない普通の事だけど、ゲームでも無い現実世界だとしたらそれこそ神業なんじゃないか?」


「確かに、そうかもしれないね……」


「それに……俺、直感でアイツが危ないって、そう思ったんだよ」


「そういえば蒼、一瞬敬語になったもんね」


「蒼の直感ねぇ……確かに蒼は勘が良いから、蒼が言うならそうなのかもしれないわね……もうそういうことにしましょう……霧がないわ」


「それじゃあ今までの事をまとめるね。まず僕達は、皆でゲームする為にディテクティヴ・タイムズにログインしたら、失明させられつつ知らない所に飛ばされた。それは神ニャルラトホテプの仕業で、その理由は自分の暇つぶしに付き合え!というもの。ただ、ゲームが終わった暁にはプレゼントがある。そしてその神の通称はニャル様で、とっても美人……と」


「「「「は?」」」」


 非現実的な現象を受け止めれたとしても、荒唐無稽なことであり、何回聞いても意味の分からないことには変わりはなかった。


「こんなの頭おかしくなるわ……」


 綾華が頭を抑えていると、陽葵がバンッ!と机を叩き立ち上がった。


「あっ!分かった!!」


「どうした?」


「これさ……あたし達が考えすぎたら駄目なんじゃね?」


「と、言いますと?」


 陽葵から考えすぎというワードが出てくる事に驚きを隠せない蒼だが、それはそれとしてどういう意味なのか気になる所ではあった……が。


「あたし達、馬鹿になれば良いんだよ!!」


「「「はい?」」」


 馬鹿になる????んんんん?????


「だーかーらー!今はゴチャゴチャ考えないで!ゲームをクリアした後に直接色々聴いてやれば良いんだよ!!」


「「「確かに……」」」


「だからさ…この挑戦状を隅から隅まで解き尽くして、神に叩き返してやろうぜ!!!」


 陽葵の力強い言葉で、四人の方針…心意気が決まった。


「「「おう!!!」」」


―――


○今ある謎解きの情報


・紙と一本のペン

▶︎紙は謎解きの問題


【謎解き】

昔昔のこと、競走をした【14匹の動物】がいる。

その中の1匹は、【愚かな動物】。

その中の1匹は、【優しき動物】。

その中の1匹は、【狡き動物】。

勘違いした優しき動物は神の温情により報われた。

しかし、騙された愚かな動物には神の手は差し出されなかった。

愚かな動物は狡き動物を許さない。

怒った愚かな者は狡き者の銅像の順番を1番最後にした。

順番を弄った後、満足し愚かな者は帰った。

次の日「真っ直ぐな動物」が本当の順位に直そうとしたため、自分の動物を1番最初に置いた。

次の日順番が変わった自分の銅像を、狡き者は見つけた。

本当は1位なはずの自分が1番最後にいて、そうでない動物が1位にいることに怒り、全体的に変更させた。

次の日全体的に順番の違う銅像を優しき者が見つけた。

優しき者は何も言わずに元の順番に戻した。

それを見て遊び心の沸いた【ニャル様】が順番をバラバラにした。

順番がバラバラになってる銅像を見て全員喧嘩した。

特に愚かな動物と狡き動物の喧嘩は酷かった。

月の出る夜、狡き動物が怒り狂った愚かな動物に傷つけられた。

日の出る朝、優しき動物が狡き動物の怪我を見つけた。

優しき動物は悲しんだ。

皆に狡き動物が怪我したことを伝えると、愚かな動物にすぐ白羽の矢が飛んでいった。

愚かな動物はすぐに後悔し、認めた。

もうこんな争いは起きてはいけない。

だから仲直りした、皆全員で。

この日は皆で手を取って楽しく笑った。

1年に1回は絶対楽しくしよう、皆で誓った。

しかし仲直りしていつも楽しく過ごしていると、その日のことを忘れてしまったのだ。

思い出した者はカレンダーに、私達の物語の起源となったその日に印をつけて欲しい。

そして、銅像の位置が違う時は直してやって欲しい。

さすれば新たな道が貴方の前に現れるだろう。

1つ忠告するのならば、まずは月日の主を探すが吉。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る