神とゲームと青春を！

第3話ー天使との邂逅

「暗っ！まじで何も見えねー……お姉さんいます？大丈夫ですかー！」

　暗くて何も見えないので四つん這いになり手を地に付けて探るように歩こうとした瞬間、突如、目に強烈な光が飛び込んできた。

「「「「あﾞあﾞあﾞあﾞ！！！！目があﾞあﾞあﾞあﾞあﾞあﾞあﾞ！！！！！！！！」」」」

　悲しきかな……人の目は暗闇に慣れた後、唐突に眩しい光を直視してしまうと失明する可能性がある位に、繊細で壊れやすいものなのだ。

「にゃーっ、はぁっはっはっ！！！」

　ぎゅっと力強く目を瞑り両手で抑える様に覆いながら、足をバタバタさせてのたうち回る人が四人。

　客観的に見れば滑稽に映るであろう四人の姿を見て、転がりながら腹抱えて爆笑する謎の存在が一人。

「はぁ……笑った笑った。あ、皆ごめん…すぐ治すね」

　のたうち回ってる四人それぞれの目に謎の存在の手が触れると、焼けるような目の痛みが徐々にひいていった。

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ……………………今まで生きてた中で一番痛かった……」

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ……………………その声は蒼なの？」

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ……………………そういうその声は陽葵？」

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ……………………綾華いるの？大丈夫？！」

「えぇ…………何とか死んでないわよ、樹……」

「って……全員いんのかよ！！」

「しかも全員発狂しながらのたうち回ってた、という…」

「痛かったし、痛くて目を開けれないし！これ、どうなってるの！？なんかのバグ？！」

　なんと！発狂し、地面をのたうち回っていたのは、蒼・陽葵・樹・綾華の四人だったのだ。

　痛みは引いたとて目を開けれる程の状態で無かった四人は、それぞれの存在を声で確めた。

　皆が居ることにどことなく安心した陽葵は現状に怒りを顕にし、その猛烈な怒りに対して危機感を持ったのか、謎の存在は再度謝罪した。

「ほんっ、とうにゴメン！まさか、こんな事になるとは思わなかったんだよぉ……お詫びもちゃんとするからさ、許して！お願い！」

　よく分からない謝罪をする四人以外の謎の存在を、目の調子が戻った四人は直視する。

「「「「……………………………………っ！？」」」」

　目の前に居たのは十六年という人生の中で、たったの一度も見たことが無い様な……天使だったのだ。

　まるで高級絹の様にサラサラとした……それでいて、何ぴとも染めれる事が出来ない程の妖艶さを匂わせる美しい白の、肩まである艶やかな髪。

　見るもの全てを吸い込む様な、深い碧色の瞳。

　柔らかくて、ちょっとでも触ってしまったら崩れてしまう様な……そう思える程に小さな薄血色の唇。

　少しでも衝撃を受けたら、折れてしまうと思う程に華奢な身体。

　女子とも男子とも捉えられる様な、可愛らしい中性声。

　そんな美女……いや、天使を見てしまったのだ。

　唾を呑み、呆然となるのも無理はなかった。

「おーい？君たち、大丈夫かい？」

　謎の存在…天使は、頭に？マークを浮かばせながら、自分を呆然と見つめる四人の視線上で手を振り、心配した。

「お、おう……」

「なら良かった」

　蒼は言葉がでなかった。

　天使は安堵の笑みを零す。

「あなた、綺麗ね……」

「知ってる。でも素直に褒められると照れるぜ」

　陽葵は賞賛した。

　天使は頬を紅くして照れた。

「大丈夫、です……」

「本っ当に！ゴメン！！」

　樹は返答した。

　天使は申し訳なさそうに謝る。

「かわいい、わね……」

「知ってるぜ！でもありがとう！」

　綾華も賞賛した。

　天使は誇らしげに感謝した。

　天使の反応の一つ一つに注目してしまい、四人の思考は天使のことばかりでいっぱいだった……が。

「あ……そーいえばここどこだ？」

　いち早く正気に戻った蒼が辺りを見渡すと、椅子が何個かある丸テーブルらしき物を見つけた。

「ここはね、ボクが君たちを呼ぶ為に創り出した部屋だよ」

「…………は？」

　常人には理解することが出来ない様な答えが返ってきた蒼には理解出来ないという疑問が。

「え？どういう意味？」

　樹には理解出来ないものを理解しようとする疑問が。

「そんなことより、何であたし達をここに連れてきた？目的はなんだ！」

　陽葵にはそもそも何故連れてきたのか？目的は何か？という根本的な部分の疑問が。

「何で私達なのかしら？」

　綾華には数ある人の中で何故自分達が選ばれたのかという疑問が。

　そして……

「「「「お前は誰だ？」」」」

　そう、四人から聴かれた天使は……微笑んでいた。

―――

　ここで誰も「帰らせろ！」と言わなかったのは、そもそもこれもゲームだと思っていたから。