第2話ー非日常の始まり


 樹と綾華の怒涛の攻撃を受け瀕死になったところを、陽葵の優しさにて命からがらの復活を遂げた。


「陽葵ぃ……愛してるぅ……ぐすん」


「はいはい、分かった分かった。だから泣くな」


 精神的にキツイ時に頭を撫でられてるせいか、蒼の内に眠られしバブみが爆発してしまう。


「ばぶぅ……マンマァ……あうぅ……」


 この場に居たのは、

 ──陽葵に甘えてる蒼をスマホで録画して嗤う者。

 ──ドン引きする者。

 ──軽蔑の目を向ける者。

 と、それそれだ。

 

「きっしょwww」


 先ずは綾華の攻撃!録画!!

 今後一生このネタを擦られるの確定。


「きも……」


 次いでに樹の攻撃!軽蔑の目!!

 優しくて可愛い樹に軽蔑されるとか自殺レベル。


「きついな」


 最後に陽葵の攻撃!ドン引き!!

 バブみを感じさせた本人に引かれると胸が痛い。


「それな?」


 客観的に今の自分を見たら間違いなくキモイ為、適当に便乗しておいた……が。


「「「それなじゃねーよ!」」」


 あの悲劇の後は日常的な時を送った。

 ──授業を受けては休み時間中に皆で話したり。

 ──昼休みには皆で食堂に行ってご飯食べたり。

 ──放課後の掃除ではモップがけレースしたり。

 皆と過ごす時間の一秒一秒がかけがえのないもので、蒼にとっての大切な思い出だ。

 

 しかし、そんな普遍的で日常的な幸せは一つ歯車が狂ってしまうだけで、意図も簡単に壊れてしまうのである。

 ──例えば、戦争。

 ──例えば、新型ウイルスの流行。

 ──例えば、人間を超越する神の介入。

 これらに直面したとき人間は、一体どのような結末を辿ることになるのだろうか。

 一つ言えることがあるのなら、それ等は実際に遭ってみないと解らないということだ。


◆◆◆


 蒼達はそれぞれの家に帰り、来る約束の十八時へと向けて準備を行った。

 風呂に入り、夜ご飯を食べ、ゲームの説明書を見ながら設定を行い、エナドリを飲み、トイレに行く。

 準備が終わったら俺達のグループラインで他の三人を招集すると、フルダイブ型VRゲーム用のを装着し、ゲームにログインした。


 ゲームにログインすると、白く壮大な世界に俺ともう一人、短髪の綺麗なお姉さんが立っている。

 

『プレイヤー‪︎︎ ︎︎ ︎︎"AO"のログインを確認しました。

 へようこそ』


「どうも?」


『これからアナタには探偵となってもらい、数々の謎を解いても、も、も、も、らららららららら、いま……………』


「?…………バグった!?大丈夫ですか?!」


 いい感じにセリフを喋っていたはずのお姉さんが、壊れたロボットみたく突如バグった。

 そのことを奇怪に思いそっと近づくと、パッ!と何の前触れも無しに視界が暗転した。

 

―――


【本作品のディテクティヴ・タイムズの定義】

 

フルダイブ型VRゲーム初の謎解きゲー。プレイヤーが探偵となり謎を解きながら事件解決したり、密室から脱出したりするゲーム。インターネットを使うことで複数人プレイが出来る。難易度は易しい・普通・難しいの3つあり、初心者から上級者まで楽しめる。ディテクティヴ・タイムズの醍醐味と言えば、フルダイブ型VRゲームの特徴を活かした臨場感に他ならない。まるで人間のように喋るNPC、自分の手で0から謎を解く為に行動する高揚感、男の子なら誰しもが憧れる探偵になり「犯人はお前だ!」というセリフを言えたり……。是非とも一度はやってみたいゲームだ。

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