第一章:神の暇つぶし

第4話ー神の暇つぶし


「まぁまぁ、一旦落ち着いてくれよ。あっちに椅子があるだろ?そこに座ろうぜ。話すからさ」


「あそこにあるやつだろ?」


 蒼はさっき見つけたテーブルの方を親指で指す。


「そうだね、あそこにあるテーブルだよ。それじゃあ行こうか」

 

「そうね……色々疲れたから椅子に座りたいわ」


 肉体的にも精神的にも疲労したことでグッタリとした綾華が覚束無い足取りで歩くと、それを支える様に樹が綾華の肩を取った。


「色々なことが急に起こって疲れたよね。でも大丈夫、綾華が辛い時は、僕が横で支えるからさ」


「…………っ!あ、ありがとう……」


 仲睦まじくゆっくり歩く二人を見て、蒼は微笑ましく思っていたのだが……。


「ねぇ、蒼……」


「ん?どうした陽葵?」


 陽葵は二人と蒼を交互に見ると、手をもじもじさせながらボソッと呟く。


「私も、疲れちゃった……」


「え?なんて?」


「…………あたしも疲れたから、手、貸してよ……」


 陽葵が蒼から視線を逸らしつつ蒼の方へ手を伸ばすと、蒼は自分の目の前にある陽葵の手をそっと掴む。

 

「し、仕方ねぇな……行くぞ」


「うん……」


 蒼は掴んだ陽葵の手を離しまいと、無意識的に強くぎゅっと握った。

 それを感じ取ったのか、はたまた顔を紅くして照れてる蒼に心奪われたのか、陽葵は何も言わなかった。


「なんだこれ!甘酸っぱいなおい!!…………てぇてぇ」


「「「「………………………………………………。」」」」


 何やら興奮している天使の発言に四人全員がお湯を沸騰させれる程の熱を発し、火照っては身体中が赤くなった。

 身体中が真っ赤っかな四人が椅子に座ると、天使もまた椅子に座り口を開く。


「よいしょ、っと。それじゃ、さっきの質問に答えていこうかな。まず、ボクがここを創ったって言ったよね?」


「あぁ、言ったよ。それは一体どういう意味なんだ?まさか、そのままの意味とか言わないよな?」


「いや?実際そのままの意味だよ?ボク、君たちが言うところの神だからさ、この程度なんともないんだ」


「え?君が神様だって言ったの!?」


「そうだよ?実際、君たちをここに連れて来たのもボクだし。それに、やろうと思えば星の一つや二つ、余裕で消せるよ?」


「「「「……………………………………………………。」」」」


 この愛くるしい見た目の天使は、天使ではなく神だったのだ。

 しかし、そんな異常な事象は齢十六の少年少女でない大人でも信じ難い。

 それをただの子どもが自分たちに起きたこの事象に対して解釈しようとも、自分達の常識では測ることが出来ずに疑問すら浮かばず、ただただ呆然とした。


「大丈夫かい?話を続けるよ。君たちを連れて来た目的は……ボクの暇つぶしに付き合って貰おうかなって、思ったからなんだ!」


「「「「は?」」」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る