異世界で街づくり

第1話 異世界への扉

不思議なノートと異世界の冒険




夏休みのある日、大輔、はじめ、さつきの三人は、いつものように学校の図書館で過ごしていた。静かな図書館の一角、窓際のソファに腰を下ろし、三人は何をしようかと考えていた。ノートの不思議な力を知ってからというもの、彼らの日常は非日常的な冒険に満ちていた。


「今日は何を作ろうか?」と大輔がノートを取り出しながら言った。


「この前の透明マントは役に立ったけど、ちょっと危なかったなぁ」とはじめが振り返る。


「そうね、でもあれで先生の落とし物を見つけられたし、結果オーライかな」とさつきが笑顔で応じる。


大輔はノートを開き、ページをめくりながら思案していた。「何かもっと大きな冒険がしたいなあ。そうだ、異世界に行ってみるのはどう?」


「異世界?そんなの可能なの?」とはじめが目を丸くする。


「このノートなら何だって可能だよ。描いたものは何でも現実になるんだから」と大輔は自信たっぷりに答える。


「でも、どうやって異世界に行くの?」さつきが疑問を投げかける。


大輔はしばし考えた後、「どこでもドアみたいなものを描いてみるのはどうかな?」と言った。三人はそのアイデアに興味津々になり、早速行動に移すことにした。


大輔はノートを開き、丁寧に「異世界への扉」を描き始めた。ドアの形、装飾、そしてその使い方まで細かく描き込む。ノートのページに描かれた扉が、徐々に立体的になっていくのを三人は目を見張って見守った。最後の一筆を描き終えた瞬間、ノートから光が放たれ、目の前に大きな木製の扉が現れた。


「わぁ、本当にできた!」とはじめが興奮気味に叫ぶ。


「すごい!これで異世界に行けるのかな?」とさつきが扉に手を伸ばす。


大輔が扉を押し開けると、中には青く光るトンネルが続いていた。「さあ、行こう!」と大輔が先頭に立ち、三人は扉の中に足を踏み入れた。


トンネルの中は不思議な光に包まれており、三人は歩を進めるごとに体が軽くなるような感覚を覚えた。しばらく歩いていると、目の前にまた別の扉が現れた。大輔がその扉を押し開けると、そこには広大な異世界の風景が広がっていた。


異世界は、青い空と緑の草原が広がり、遠くには雪をかぶった山々がそびえていた。奇妙な形をした木々や、見たこともない動物たちが辺りを歩き回っている。三人はその光景に驚きと感動を隠せなかった。


「すごい…本当に異世界に来ちゃった!」とさつきが感嘆の声を上げた。


「何か冒険の匂いがするなぁ」とはじめがわくわくしながら言った。


「まずはこの世界を探索しよう」と大輔が提案し、三人は異世界の冒険を開始した。


歩き始めてすぐに、三人は不思議な村にたどり着いた。村は小さな家々が立ち並び、人々は穏やかに生活しているようだった。しかし、村の雰囲気にはどこか不穏なものが漂っていた。


「何か問題があるみたいだね」とさつきが村の様子を見て言った。


「誰かに話を聞いてみよう」と大輔が決め、三人は村の中心に向かった。中心には大きな広場があり、その中央には立派な噴水があった。噴水の周りには村人たちが集まり、何やら深刻そうな話をしている。


「すみません、何かお困りのことがあるんですか?」とはじめが一人の村人に声をかけた。しかし、村人は三人の言葉が理解できないようだった。


「言葉が通じないのか…」とさつきが困惑する。


「このままじゃ、話が進まないな」と大輔も考え込んだ。


「そうだ、不思議なノートで通訳できる道具を作ればいいんじゃない?」とはじめが提案する。


「いいアイデアだね!」と大輔はノートを取り出し、新たな道具を描き始めた。ノートに「異世界の言葉を翻訳するリング」を描き込む。リングはシンプルなデザインで、指にはめるだけで言葉を理解できるようになる仕組みだ。


「これでどうかな?」と大輔が描き終わったページを見せると、ノートから光が放たれ、目の前にリングが現れた。


三人はそれぞれリングを指にはめ、再び村人に話しかけた。「こんにちは、私たちは異世界から来ました」と大輔が言うと、今度は村人が理解したように微笑んだ。


「あなたたち、異世界から来たのですか?それは驚きです。私たちの村は今、困難に直面しています。助けていただけるなら感謝いたします」と村人が応じた。


「どうしたんですか?何が起きているんですか?」とはじめが尋ねる。


村人は深いため息をつき、「実は、最近、村の近くに現れたモンスターが私たちを困らせているんです。森の奥にある古い神殿から出てきたようで、村に被害を与えています」と説明した。


「それは大変だ。僕たちにできることはありますか?」と大輔が尋ねた。


「もしあなたたちが勇気を持っているなら、神殿に行ってモンスターを退治していただけると助かります。でも、危険な任務です」と村人は心配そうに言った。


「大丈夫、僕たちはノートの力を持っているから」と大輔が自信を見せる。


三人は村人たちの助けを得て、神殿への道を教えてもらい、装備を整えることにした。ノートの力を使って武器や防具を作り、モンスターに対抗する準備を整えた。


「どんな武器と防具を作ろうか?」とはじめがわくわくしながら尋ねた。


「そうだな、まずは軽くて丈夫な防具が必要だな」と大輔が言い、ノートに「軽くて丈夫な防具」を描き始めた。防具は光を反射する銀色の鎧で、体にフィットするデザインだった。


「これなら動きやすそうね」とさつきが防具を手に取り、身につけた。


次に大輔は「不思議な剣」を描いた。剣は透明なクリスタルでできており、振るうたびに光を放つ。


「これでモンスターも怖くないね」と大輔が剣を振りかざした。


「私は弓がいいな」とさつきが言い、大輔は「魔法の矢を発射できる弓」を描いた。弓は軽くて丈夫で、矢は自動的に生成される仕組みだった。


「僕は盾が必要だな」とはじめが言い、大輔は「攻撃を跳ね返す盾」を描いた。盾は頑丈で、敵の攻撃を防ぐだけでなく、跳ね返す力を持っていた。


「これで準備は整ったね」と大輔が言い、三人は神殿


に向かって歩き始めた。


神殿への道は険しく、森を抜けて山を登る必要があった。道中、奇妙な生物や植物に出会いながらも、三人は協力して進んでいった。やがて、巨大な神殿が姿を現した。古びた石造りの建物で、入り口には謎めいた模様が刻まれていた。


「ここが神殿か…」とはじめが緊張した様子で言った。


「みんな、気をつけて行こう」と大輔が言い、三人は神殿の中に足を踏み入れた。中は薄暗く、冷たい空気が漂っていた。奥へ進むと、突然、巨大な影が現れた。その影は鋭い爪と赤い目を持つ恐ろしいモンスターだった。


「気をつけて!」とさつきが叫ぶ。


大輔はノートから取り出した剣を構え、はじめは盾を準備した。さつきも弓を手に取り、矢を番えた。


「来るぞ!」と大輔が叫び、三人はモンスターに立ち向かった。モンスターは巨大な体で攻撃を仕掛けてきたが、三人は協力してその攻撃をかわしつつ反撃を繰り返した。


「大輔、あの光る部分を狙え!」とはじめが指示する。


「了解!」と大輔が剣を振りかざし、光る部分に狙いを定めた。モンスターが一瞬ひるんだ隙に、さつきが矢を放ち、見事に命中させた。


「やった!今だ!」と大輔が叫び、最後の一撃をモンスターに叩き込んだ。モンスターは大きな咆哮を上げ、その場に崩れ落ちた。


「やった…倒した…」とはじめが息を切らしながら言った。


「みんな、無事でよかった」とさつきが安堵の表情を浮かべる。


「これで村も平和になるだろう」と大輔が微笑んだ。


三人は村に戻り、村人たちにモンスターを退治したことを伝えた。村人たちは歓喜し、三人に感謝の言葉を贈った。


「本当にありがとう。あなたたちのおかげで、私たちは安心して暮らすことができます」と村の長老が言った。


「いえいえ、僕たちも楽しい冒険ができました」と大輔が答えた。


三人は村人たちと別れ、再び異世界への扉を通って元の世界に戻った。学校の図書館に戻った三人は、今日の冒険について語り合った。


「異世界は本当にすごかったね。また行きたいな」とさつきが言った。


「次はどんな冒険が待っているのか楽しみだ」とはじめがわくわくしながら言った。


「不思議なノートがあれば、どんな冒険だってできるよ」と大輔が笑顔で応えた。


こうして、大輔、はじめ、さつきの三人は、異世界での新たな冒険を心待ちにしながら、次の挑戦に向けて準備を整え始めたのだった。

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