第4話 技能(スキル)
ーーー西暦202☓年7月 新宿ラビリンス 第一階層ーーー
近代兵器である銃は効かず、爆薬も効果は無かった。
多くの負傷者を出しながら、『新宿ラビリンス』に突入した自衛隊は、この地上の生命体と異なる存在に対する有効的な攻撃手段を探り当てた。
答えはシンプル。
銃や爆薬以外の武器。刀剣や槍等の非近代武器ならば有効であると。
そして世界中に
そして仲間(?)に見守られながら、『冒険者』になる為に今、銀羽・フェデリアはゴブリンと対峙している。
銀羽の手にあるのは、先端に装飾のある150cm程の杖。
銀羽━━前世ではリシャール・グランツと呼ばれた英雄は槍を得意とした、とされている。
その記憶を受け継いだ銀羽もまた、その構えは堂に入っていた。
「ここでちゃんとボクの威厳を見せつけなければ…」
考えていることは割としょうもなかったが。
「ゴブゴフゴフ!!」
「君に恨みは無いが、ボクの糧になってもらおうか!」
人を襲い喰らうという本能に従い、緑の肌の小鬼が銀羽へと襲いかかる。
(さてと…吐き気は収まったけど身体が怠い。さっさと切り替えよう)
後で見守っている試験官にも、対峙しているゴブリンにも分からない程ほんの僅かに、銀羽の雰囲気が変化する。
倦怠感でぐったりしている銀羽の思考を切り離し、あらかじめ設定していた、戦闘向けに感情や感覚を消した人格で肉体を動かす。
銀羽は襲い来るゴブリンの、細く短い足を杖で払う。
「ゴブェ…っゴァ!」
「はい、おしまい」
受け身も取れず顔から地面に倒れたゴブリンは、殆どその場から動いていない銀羽に杖の石突きで頚椎を砕かれ絶命した。
「………ふぅ」
戦闘を終え、思考を統合した銀羽が軽く溜息をつく。
「すごいですねー22番さん、何か武術を?」
「護身用に棒術を少々…ね♪」
試験官が感心した様子で話しかけるのに軽くウインクで返し、軽い足取りで集団の中に戻る。
「それでは、事前にお配りしたギルドカードを御覧ください。モンスターを倒した事で
「へえ、どれどれ」
銀羽がポケットからテレホンカード程の大きさのカードを取り出す。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
名前:銀羽・フェデリア
年齢:20歳
性別:♀
職業:魔術師
技能:魔術Lv2
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
名前と年齢、性別だけが記されていたシンプルなカードに、技能という欄と魔術Lv2という記述が増えていた。
「このカードは事前に登録した方の魔素に反応して、その方が保有する
「このLvというのは?」
「その
「フフン、流石ボクだね」
それぞれの職能適性に応じて、モンスターから魔素を吸収した人間は
他にも、純粋な身体能力や頑強さ、さらにモンスターの放つ魔法に対する耐性なども得られる事から、『冒険者』は自然と超人となる。
「因みに、どんな魔法が使えるかはなんとなく頭に浮かびますよー?」
「ほうほう…えーっと
「魔法を使い続けると種類も増えますので、どんどん使ってくださいねー」
「なるほど、それは楽しみだ」
説明を受けた銀羽は満足そうに頷く。
そしてどや顔の銀羽が前世の弟子と孫に豊かな胸を張る。
「どうかね二人とも、ちょっとはボクのこと見直したかな?」
「「はいはいすごいねー」」
「雑ぅ!!?」
調子に乗らせると面倒くさい事を魂で理解している紅蓮と百合子は、見た目だけは美少女な銀羽の自慢を雑に受け流す。
「くっ…見てろよぉすごい魔術で度肝抜いてやるんだからなぁ!」
「尊敬されない理由は主に人格じゃないかなー?」
「シッ、紅蓮。本人が必死に目を逸らしている事を指摘してはいけません」
「泣くよ!? 」
仲良し(?)三人組がわちゃわちゃと会話する中、資格試験は順調に進んでゆく。
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