朝のすずめの笑う声

 青春なんてロクなものではない。

 世界のおわりだって、ロクなものではない。

 春へ願い、おもわず夏にはじまったアマテラス理論。

 これにより升壱の考えは半回転なって裏返った。

 朝からドタバタあって、眠りを破かれる。

「なんでか懐かしめる夢だな」

 こう眠気まなこ解いて、ドタバタの一階へ。

 居間へ入るなり、ウットとメクの追っかけ合い。

 きっと猫と人とでじゃれる絵のところ猫を人へ、人を子供へとすればこうなるんだろう。

「つか、メクはなんで来ているんだ」

 台所で声のした。

「ウットと遊ぶってさ」

 台所のぞけば、母親のを借りて、エプロンしたタマツであった。

 炊飯器のなごやかに頭から煙の吹いている。

 蓋のしたフライパンで、油の跳ねて楽しげである。

 これらあつかう人、髪の後ろでまとまったせいか、勝気な気風が含まっている。

「なるほどなぁ、ウットの世話ひきうけたら、こうまで得するのか?」

「なに? もしかしてエプロン似合う?」

 振り向いて嬉しそう見せびらかしてくる。

「メクのあそびにくる」

「うん……そうだね」

 おちこんで料理へもどる。

「というかあんた、よく食うもん困らなかったね。料理できないでしょ」

「まぁ、おかしくなっても機能している一円スーパーとかあったから総菜で」

「なんからしいね」

「お前こそ、うちの両親の部屋つかったんだろ。枕ちがいで寝れないとか」

「まあ、ちょっと寝れなかった」

「加齢臭とか?」

「いや、あんたの来たらと」

「べつにそんな両親すきでもないぞ」

 噛み合わない話で、タマツの拗ねぎみ口の尖らし、別にいいけど。

 そうやっているうち、食卓のうえで四つ白米のならぶ。

 ベーコンを下敷きに目玉焼きがきれいな満月。

 ちょこなんとしたサラダの色あいで、調和があった。

「ほんとうに簡単だけど」

 と作成者の予防線だった。

「ありがとう」

 と礼のすれば、特に返事なく視線だけ照れるよう逸らされる。

 とりあえず食おうと席へつく。

 猫と子供の追いかけっこの飛んできて、まったたくうち食卓かっさらった。

 升壱のいただきますと合わせたら、さっぱり焼け野原であった。

 この無惨の張本人たち、猫のほう楊枝くわえて、

「あぁ、庶民的な美味さですな。キャットフードに劣ります」

 つぎ子供のほう膨れた腹叩いて、

「庶民派の勝ち」

 と幸せであった。

「ちょっと!」

 タマツの鬼形相。

 升壱の制した。

「いいだろ。メクしあわせそうだし」

「あのふたりついでで作ったのよ!」

「メクはともかく、お前はウットの世話係では?」

「あんた、いらないの!」

「なくなったらで、一円スーパーあるから大丈夫だ」

 升壱はあまり気にするなと思っていた。

 しかし相手方どうやら肩ふるわして泣き面であった。

「私のよりスーパーの総菜ほうがいいのか!」

「まぁ、安いしな」

「お金で換算できないものもあるでしょ」

「手間賃か?」

「金で換算できるでしょ! もう知らん! 私出ていく!」

 メクのエプロン投げて、さよならで家出だった。

「一日目で家出ねぇ、根性ないわ」

 楊枝のダーツみたく投げるウットからであった。

 ダーツ失敗して、ごみ箱の縁で弾かれる。

 なんか悪いことしただろうか。

 と升壱の思っていれば、すっと手の取られる。

 あたたかで春風へ触れるよな冷たさもすこしあった。

 メクの手だった。

「私、一円スーパー行ってみたい! 盗みたい!」

 升壱のなかでタマツの気がかり吹き飛んだ。

「よし、行くか!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る