緑の猫

陰があしもとへこもった

「かわいかったので猫を買ってこい。世話も、お金もそっちもち。メクより」

 升壱の家へこんな手紙の届いた。

 外の熱く、空調で涼んでいたい。

 と思いつつ、まぁ仕方ないかとメクに弱かった。

 玄関の出て、扉の傍。

ひろってくださいの段ボール箱の置いてあって、なかでにゃあと鳴く。

 開けてみれば蝉の一匹にゃあとあった。

 蝉の飛んで逃げた。

「そんな都合よくいかないか」

 日のじりじりする道に出る。

 塀や生垣へ沿って、ひろってください段ボール箱ずらり。

 どの箱も媚びたようにゃあ、にゃあしている。

 さすがアマテラス理論であった。

「でもこのなかで本物のいればいいか」

 片っ端からあけていく。

 ひとつめ。

 にゃあと鳴く犬の入っていた。

 ふたつめ。

 にゃあと鳴る目覚ましだった。

 みつめ。

 着替え中の美女な小人だった。

「にゃあ、のぞき!」

 急いでしめた。

 よつめ。

 なんだかひとまわりデカい。

 開けてみる。

 緑の猫が飛び出した。

 やった、正解だと思う間もなく、猫どろんと煙たくなった。

 げほげほ、煙を追い払う。

 煙のあと、緑の短髪した女性のあった。

 けだるそうな目のちょっと青い。

服も緑基調。臍の出たシャツと半ズボン。

どこもしなやかで、身軽げだった。

「にゃあってことでよろしく」

「誰だよ」

「さっき飛び出した猫だよ。察しわりぃ」

「だって猫らしい耳ないけど」

「ふつう人となったら人の耳だろ。人耳だろ」

「なんだよ人耳って」

「私、仮装するなら凝るほうなんだよ」

「そうか、じゃあ邪魔した」

 去ろうとして、襟つかまれもどされる。

「飼えよ」

「嫌だよ」

「拾ったんだろ」

「開けただけだよ」

「訪問販売は扉あけたらしつこいんだ」

「しつこい自覚があるんだな」

「飼えよ」

「嫌だって」

「かわいいだろ、飼えよ」

「どっちかっていえば綺麗だろ」

「あらうれしい、うれしいので飼えよ」

「だったらもとの猫の姿もどれよ」

「えぇせっかく綺麗なのにぃ、飼って?」

「甘えた声だすな」

 けだるく舌打ち。

「いや別にそんな多く望まないよ。衣食住と遊ぶ小遣いでいいんだ」

「ダメ人間じゃないか」

「猫ってだいたいそんなもんだ」

 飼えとうるさいので、升壱よわった。

「わかった。ちょっと素行調査しよう」

 意味ありげな提案で、猫女わからなく首傾げた。

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