うちわで涼しくなって疲れた
こうして運動会のはじまりはじまり。
「一回戦、騎馬戦、一騎討ち」
一尖がりの子供から呼びかけ。
ふたり作戦の話し合い。
「いきなりおおとりのよな競技だな」
「てかふたりだけど、どうしよう」
「肩車でいい。よしタマツおまえ下で、俺はこの鉢巻きを取られないように」
「待って。なんで下なのよ」
「おまえ男子入れたって、上位だろ。俺くらい持ち上がるし機動力だってよくなる」
「やだよ。あんたのほうが背のあるんだからあんたが下」
そのほうが、いろいろ具合もいいし、とこそり呟く。
「まぁいいだろう。向こうどうせ小学生だ。どちらせよ身長は勝つ」
そう対面の相手方みれば、馬のうえへ馬が人みたく跨ってあった。
ちなみにこの馬の決して比喩でない。
下の馬は鼻息荒く、前足で三度かるく地面撫でた。
上の馬たら、首から下の人のそれであって五本指を器用ぐぅぱぁ。
それから指鳴らし、こきこき。
「タイム、タイム」
呼びかけ兼、審判である一尖がりへ升壱うったえに行く。
「あれなに?」
「一年生のサラブレットふたりだよ」
「あれ馬だろ」
「だって騎馬戦じゃん」
「ずるっこだ」
「そっちこそ人で馬みせかけようとしてない? 偽馬なんてずるっこだ」
「いやだとしてあれどう見ても大人だろ」
「えぇ、まだ六才だよ」
「というか在籍しているのか?」
「ここ動物も通う学校でね」
「聞いてない」
「そっちの不調法でしょ」
やすく受けてしまった手まえぐうの音もない。
へこむ升壱へ一尖がり、やれやれとして、
「なら違う競技する。あとふたつどれか勝てればいいよ」
「ほんとうか優しいな」
「お兄さんたちは、まだ子供だからねぇ」
「大人ぶるなよ」
というわけで、
「二回戦、千㍍徒競走」
ここでも作戦会議。
「動物ありで、ダチョウとかチーターだされたら負けだけど」
「タマツ、大丈夫だ。ダチョウのバカだから直進する」
「チーターは?」
「今回、一周千㍍だぞ。チーターのばてやすいからなんとかなる」
「運動靴といえ私服なんだけど」
「自信持て」
そう背中の押されタマツ、よしと気合だった。
さて白線のまえ、つま先の合わせる。
隣の相手、キリンであった。
おかしなキリンで、首長くぐるり一周していた。
ちょうど徒競走の経路ぴったりはまる形の大まわりな首だった。
だからもはや自身の尻めのまえである。
「タイム、タイム」
升壱また空砲持つ一尖がりへ。
「あれ、ドンでゴールだろ」
「こんどなんですか?」
「なんでそんな呆れた顔できるかな」
「まったくいちゃもんか。うちの徒競走必勝マシーンに」
「楽しくない運動会やっとるんだなお前ら」
「個性の強調しているだけだね」
「ともかくあれのあかんだろ」
「でも急で選手かえれないしなぁ」
「けどさすがに」
「わかりました! じゃあキリンの首の間ちょん切って、頭繋ぎ合わせましょう!」
と開き直り、ほかふたりの尖がりたち、鋸もってくる。
で頭の近くの首、胴に近い首とこそれぞれ添わせる。
「じゃあ、ふたりともぎこぎこやって徒競走必勝マシーン引退式だ」
一尖がりわざとらしく悲しんで鼻かむ。
キリン慈しむよな円ら目から涙ほろ。
「待った! 待った! わかったよ。負けでいいから競技かえよう」
升壱の言って、タマツも涙ながら納得であった。
「第三回戦、綱引き」
これの目立った作戦なかった。
相手もまた二尖がり、三尖がりのようで力任せでだいじょうぶと踏んだ。
縄を持とう段になった。
なんだか感触おかしい。
よく見ると滑らかで、波模様の入っている。
縄の蛇であった。
どうも向こうの末端に蛇の頭だった。
で、頭と三尖がりのしみじみ話している。
「俺ぁここまでだぁ」
「蛇さん、きっと私たちの一瞬で勝って引きちぎれないようするから」
「気休めのよせやい、相手のあとねぇ。本気でやったら拮抗やむなしだ」
「蛇さん!」
「いいんだよ。俺が踏んばんねぇとお前らふたりじゃあっちの兄さん方へ勝てねぇ」
「でも間違えば命が。そしたら子供のどうするの?」
「蛇ってのは狡猾で強かだ。あいつらだってやってけるさ」
蛇さぁああん!
臭い芝居である。
しかしタマツも升壱も、蛇の触りたくなく、また思いのほか同情心あふれていた。
棄権した。
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