陽月影

夢時間

ある人を探す中学生探偵ーアリリウルー

第1話 ある人のある能力

淡い空色に、紫色のグラデーション。

青紫色の瞳に、鋭い目。

廊下中の誰もが振り向くような美貌に、引き締まった体。

これらの特徴は全て、この学校の人気者、天雨琉亜あまさめるあの特徴である。

「……なんて。別に、私はそうは思わないけど。」

私、天雨琉亜あまさめるあは普通になりたい女子である。

……まぁ実際、なれていないのだけれど。

通学バッグを揺らし、足速に廊下を駆けていく。

と。

「おっ、おはよう…天雨さん」

振り向くと、そこには薄い金髪に薄い空色のグラデーションに、濃紫のうし色の瞳の、少年がいた。

彼の名前は雨雲小豆あまぐもあず

「はぁ。別に家でも会ったし挨拶したでしょう?別にわざわざカロリーを使うようなことしなくて良いじゃない。」

「えっでも…それは皆には内緒だし…一応いった方が良いのかな…と思って…」

そう。小豆あずと私は同じ家に住んでいる。

というか、私が住まわせてもらっている。

私の親は、中学生になった初めての夏、交通事故で死んだ。

「別に言えばいいじゃない。何かあるわけでもないんだし。……そういえば今日は遅かったわね。どうかしたの?」

「あ、そうだった。天雨さん、コレ忘れてたよね。もってきといたよ」

コレ、というのは私がいつもつけているペンダントのことだ。

月と太陽が模してあり、とても美しい。

「あら『月のペンダント』。…確かに、今日は忘れてたわね。ありがとう。小豆あず。」

小豆あず臆病びびりだが、優しいのだ。

そしてあるを持っている。

「ん、人が多くなってきちゃった…。天雨さん、また教室で会おうね」

どぶん、と溶ける音がする。

瞬間、小豆あずが消えた。

小豆あずの能力は『影猫の夜月かげねこのよづき』。

人の影や物の影に溶けて、その影の中を移動できたりする。

たまにさっきみたいに能力を使うから、一部の人からは、とんでもなく足が速い人だと思われてるようだ。

「…能力の乱用は禁止よ。どうせこれも『影』を通して聞いているでしょう?気をつけて使いなさいよ」

……私も気をつけないと。

能力の乱用は世界を揺るがす時がある。

改めて、気を引き締めよう。

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陽月影 夢時間 @nekokurage0

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