第26話 王の秘密を知る

 金色の髪に青い目をした若い青年がいた。その横にはセレネが彼に恭しく頭をたれていた。


 これが……王。この国の王様。どこか威圧感がある。こちらを見る顔は無表情だった。優しいのか冷たいのか、その性格を測ることが難しい人だと思った。


 確か、陛下は『風の愛し子』と呼ばれている。そうだ。だから私が愛し子ではないことは確定なのだ。愛し子は一つの属性につき、一人しか存在しない。イグニスが私のことを『風の愛し子』じゃないのかと言うが、王様がそうなのだから、私は違うと断言できる。


「君がアウラか。『火の愛し子』をたぶらかして、王都から連れ出したとは本当なのか?」


 声も抑揚がない。淡々としている。


「イグニスは……いえ『火の愛し子』は私の家に遊びにきていただけなのです。時々、遊びに来る友人というだけで、特別なことはありません」


「と、言っているが『水の愛し子』はどうだ?」


 陛下はセレネに言葉を投げかける。


「いいえ!お姉さまは嘘をついてますわ。『火の愛し子』と他国へ逃げようとしていたのですわ!愛し子が国外へ行くことは大罪です!そそのかしている魔女にどうか処罰を!」


「このままいくとアウラは死罪になる」


 セレネの話を信じているのか、陛下は私にサラッとなんでもないことのように罰をくだした。それは私が考えているものよりも、重すぎるものだった。


「し、死罪!?」


「そうだ。それくらい罪が重いことをしている。セレネの言葉が本当なら他の国へ愛し子の力を流出させるつもりなんだから」


「待ってください。イグニスと国外へ行くことなんて、考えてません。この国に害をなすつもりもありません!」


「本当に?嘘偽りなく?この王国に心から忠誠を誓えるのかい?」


「もちろんです!」


 私は必至に言う。その命乞いのような姿が可笑しいと手を口に当てて微かに笑っているセレネ。表情を動かすことなく、王は言った。


「じゃあ、証拠を見せてもらおうかな」


「なんでもします!」


 生き残れるならなんでもするわよ!まさか死罪なんて思ってなかった。私は甘くみていた。


「そっか。じゃあ、探してきてよ。残りの愛し子をね」


「……は?」


 私は聞き間違えたのだろうか?セレネの表情も固まる。


「そんなこと不可能です!」


「そんな軽い取引よりも即刻死罪にしていただけませんの!?」


 私とセレネの声が重なった。


「みつけられなかったら予定通り死罪になってもらう。逃げても死罪だよ」


 待って……これ、私詰んでない?


「期間はそうだねぇ。5年あげるよ。この期間のうちに探せないなら死罪。いいね」


「いいねって……」


「今、死ぬのがいい?それとも5年に賭けてみる?」


「5年に賭けます」


 そうこなくてはねと陛下は無表情のままそう言った。セレネがあきらめず、今すぐ罰を!!と叫んでいるのを無視している。


「まだ見たことがないのは地の愛し子と空の愛し子だ。探せるか?」


「わからないですが、生き残りたいから探してみます」


 王国内をくまなく王家のネットワークで探しているのにみつからない残りの愛し子を私が探し出せるとは思わない、1パーセントの可能性にかけてみようと思った。


「甘いですわ!こんな罰の与え方!!」


 セレネが騒ぐ中、陛下が私の鎖をひっぱって自分のそばに寄せて、耳元でささやいた。


「風の愛し子も探すんだよ。実は偽の愛し子なんだよね。王たるものが愛し子の力を持っていたら、敬られるだろう?だから風の愛し子だと偽っている」


 えっ!?私は思わず驚いて、陛下の顔を見る。表情は恐ろしいほど、一つも動いていない。


「3人みつけてきてほしい」


 今、聞いてはいけない情報を私は聞いてしまった。これから私は五年間を愛し子探しに費やすことになるのね。

  

 そして王家の知ってはいけない事実を知ってしまったからには、5年すぎたら本気で死罪になるのは確定になってしまったのだった。

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