第14話 アウラの心を探りたい自称弟子
「お師匠様、パーティーとやらに行くんですか?」
カイが招待状を見つめながら、ぼんやりとしていた私に尋ねる。
「……あ、うん、どうしようかなぁって思ってるところよ」
「イグニス様のこと、お師匠様は好きなんですか?」
子どもゆえの真っ直ぐな目。誤魔化しにくい雰囲気だった。
「どうするんですか?性格悪そうなお師匠様の妹さんに言われたとおりにするんですか?」
さらっと性格悪いと言うカイ。
……いや、間違いないけどハッキリ物を言う自称弟子である。
「イグニスはきっと私が聞いても、自分が苦境に立たされてるなんてこと絶対に言わないわ。でもセレネが話していたことも気になるのよね。真実か嘘か確かめたいの」
「確かめて、イグニスさんが本当に大変な立場になっていたらどうするのですか?」
「もちろんセレネと結婚し、公爵になるように説得するわよ」
それがイグニスの幸せでしょう?厳しい家だけど、一人息子として大事に育てられている姿を幼い頃に見た。彼を愛してくれる両親と仲が悪くなってしまったり、慕ってくれる大勢の使用人たちを露頭に迷わせたりすることなんて絶対にあってはいけない。
「お師匠様はイグニスさんのこと好きなんですか?」
「しつこいわねぇ……それ、答えなきゃいけないの?もちろん私は嫌いじゃないわよ。だって最高に美味しいものを差し入れしてくれるもの。どのくらい好きなのか言えと言うならば、イグニスのことはカイと同じくらい好きよ」
「それ、なんだかずるい答えですね」
……この子ども。ときどきオトナのようなことを言うんだから。
幼い頃の私とイグニスは婚約なんてどういうものなのかよくわからなかった。純粋で会う時間は楽しくてすぐに過ぎていった。懐かしい記憶が蘇る。
公爵家の庭園を二人で走り回ったり、書庫へ行って本を読んだり、美味しいおやつを並んで食べたり……そこには朗らかに笑い、温かく見守る互いの両親の姿もあった。
絵に書いたような。幸せな時はそんなに長くはなかった。長くなくて良かったわと今なら思う。傷が浅くてすむもの。
私とイグニスの関係は『愛し子』と呼ばれるもののせいで、すべてが壊れてしまったと言っていい。なんでそんな存在があるのよと小さい頃は泣いたことがあった。イグニスが『火の愛し子』じゃなければ、セレネが『水の愛し子』じゃなければ、普通に幸せに今も過ごしていたかもしれない。
冷めたお茶を一口飲んだ。カイは静かに私を見ていた。
「よし!パーティーには行くわ。カイも行く?」
カイと話していて決心がついた。
「え?いいんですか?」
「1人より2人のほうが都合いいのよ」
どういうことでしょうか?と言うカイに私はウインクして明るく言った。
「その時まで、お楽しみによっ!」
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