第6話 予知夢だったかもしれない
カーンコーン、ギコギコ。
朝から賑やかな音がする。時折、釘をリズムよくトントントントンと打つ音。私が外に出るとピタッと音が止んだ。
「お師匠さまーっ!おはようございます。やっと起きて来たんですね!もうお昼ですよっ!」
カイが屋根の上からヒョコッと顔を出す。
「……そんなところで、なにしてるの?」
「雨漏りしてるでしょう?直しているんですよ!ずっとこのままだと傷んでしまいます」
「屋根の補修までできるなんて、さすがスーパー家政夫ね」
「家政夫じゃありません!弟子ですってば!」
ムキー!と怒るカイ。なんでもできるから器用だなぁと思って、褒めたのに。弟子はいらないけど、家政夫は便利かもしれない。
「ん?お師匠様ー!客人でしょうか?」
カイが屋根の上から見えるらしく目を細めて道の方を指差す。
「客人?宅配便じゃなくて?」
また何か買ったんですかーー!?というカイの言葉は流しておく。道を゙てくてく歩いてくる小さな点は確かにこちらに向かってきて……私はがく然とした。
「やあ。久しぶり」
軽く手を挙げるのは危険人物。夢で見た魔族だった。予知夢だったのかしら。
「普通に道を歩いてくる魔族を初めて見たわ。こんな登場方法地味すぎるわ」
宅配便と間違えかけたわよと私が言う前にファサッと前髪をかきあげて、上から下へ視線を送ってくる。ちょっとナルシスト気味なのよね……。
「フッ……俺は悪いが、どんな登場であれ、映えてしまうからからな。俺の名を呼んでくれないから寂しかったぞ。いつ呼んでくれるんだ?」
「ナハト、帰りなさいよ。名前だけならタダだからいくらでも呼んであげるわよ。とりあえず帰って」
「違うだろ!?偉大な魔族のナハト様の力を貸してくださいだろ!?なんで毎回、帰れしか言わないんだーー!」
「用事ないもの。契約もしないわよ。何回きてもしないわよ。この悪徳商法魔族!」
「そんな押しかけ詐欺みたいな言い方しなくても良いだろう。それとも俺に会えなくて寂しかったのを隠すための態度なのか?そういうアウラの態度も可愛いよ」
「相変わらずナルシストね」
めげなさすぎるわ。魔族っていうのはメンタルも強いのかしら。
ハシゴを使って、カイが屋根から降りてきた。
「師匠のところに、またイケメンな男が……意外とモテるんですね」
「モテるという表現とは、なんか違うのよね」
私の元婚約者と私を喰いたい魔族。どっちもクセ強すぎるし、厄介すぎる。普通の人から普通に好きですってモテたい。
カイがお茶淹れますよと余計なことを言ったせいで、ちょっと嬉しそうにナハトがそこまで引き止めるなら、お邪魔していくかーと扉をくぐる。
……いいから帰ってくれないかしら。
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