第3話 詐欺?それとも効果あり?
「お師匠様、なにか荷物が届いていましたよ」
頭に頭巾を被って荷物を持っているカイは掃除夫スタイルだった。
「あら!とうとう来たのね!」
カイがそれほど大きくない箱を手渡してくれる。
「やけにウキウキしてますが、中身は何ですか?」
「秘密よ、秘密!女性の買い物を詮索するのは無粋よ」
「女性の買い物って……いつも黒いワンピースしか着ていない師匠がいったいなにを買うんですか?」
このカイは詮索するなと言っているのにサラリと余計な事を言う。
そんな少年は床のワックスがけをし、さらに窓拭きをしている。ピカピカに磨き上げられた床と透明度の増したガラス窓を見て、詮索するなら出て行きなさいという言葉を飲み込んだ。カイが来てから家がキレイになったのは間違いなかった。
私は荷物を持ち、イソイソと自室へ退散した。
「あと、手紙も来ていました」
宛名を見ると、あまり目にしたくない名前だった。破り捨てようか魔法で焼いてしまおうか?
しかし内容によっては重要なことが書かれてるかもしれないと思い、しぶしぶワンピースのポケットにグシャリと突っ込んだ。
「さーてと!」
私はニンマリした。楽しみにしていた箱を開けて、一人、ワクワクするのだった。
夜になり、カイがご飯ですよー!と呼ぶまで、届いたもので、私は楽しんだ。
「カイ、どうかしら?」
スープを盛り付けていたカイに尋ねる。
「どうって……?なにがでしょうか?」
「いつもの私とどこか違うところがないかしら?」
「は?ええっと……わかりません」
気づかないのね。半ばがっかりする。私は自称弟子の家政夫に何を聞いてるのかしら?
「なにか重要なことでしたか?あれっ?なんだか、師匠、がっかりしてませんか?」
「べっつにー」
「いや、機嫌悪くなってるでしょう!?もしかして今日きた荷物と関係あります?」
「……このスープ、肉少なめね」
「肉じゃなくて、野菜を食べてくださいね!って、今、さり気なく話をごまかしたでしょう!?なんなんですか?気になるじゃないですか!」
カイに余計な事を尋ねなきゃよかったわとここで後悔した。意外としつこいのよね。
「あー、もう。これよ!これ!」
「それなんですか?棒の先に丸いローラー?」
「『これであなたも小顔になれる』『理想の顎のラインは1日で作れる』って書いてあったのよ」
コロコロと私は頬に当てて、カイに見せると額を抑えている。呆れている。
「師匠、それって詐欺被害にあってませんか?まさかとは思いますが、師匠そんなくだらないことにお金使ってるんですか?」
「ちょっと!くだらないってなによ!?」
くだらなくはないでしょう!?こっちは真剣よ!
「荷物、時々届きますが、まさか中身って……」
「カイ、今日の野菜スープ美味しいわ。ほら、野菜も食べてるわよ〜」
「あからさまに話をそらさないでくださいよ!以前から、たくさん買ってるんですね!?やけに師匠宛の宅配が多いと思ってたんですよ!」
カイは私の母親よりうるさくて、しつこい……。観念して私は認めることにした。
「色々試したくなるのよ。美しくなるって大変なことなのよ?」
「師匠は今のままで十分キレイだと思いますよ。顎のラインも細いですし、する必要ありません。そんな変な美容セットを買わなくてもいいと思います」
カラーンと私の手からスプーンが落ちる。素直なアイスブルーの目をキラキラさせて言う弟子。無意識なのかもしれないけど、末恐ろしい子。
「これも聞いて良いのかわかりませんが、手紙も度々来ますよね?あれは……」
「それは答えたくないわ」
思わず冷たい口調になってしまった。さすがにカイは察したらしい。それ以上尋ねなかった。
手紙、忘れてたわ。ポケットの中でカサカサ言う紙の存在に気づいて、嘆息したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます