第142話
焼きチーズのお店の個室でコッソリ飲む冷やしエールはとても美味しかった。背徳の味だからかな? まぁ暫くしたら冷やしエールも普通に飲まれるようになるだろうけど。焼きチーズはラクレットと鉄板焼きを足した感じだった。チーズの塊を炙って溶け落ちたチーズが真下に設置されているフライパンで更に焼かれるシステムだ。フライパンの上のチーズを取って【茄子花芋】や野菜やパンに付けて食べる。チーズの焼き塩梅はお好みで。溶け落ちた直後でもカリカリなチーズ煎餅になってからでもOK。
溶け落ちたばかりでまだ柔らかいチーズをベーコンに付けてもいいけど、沢山食べたら胃もたれしそう。バンズの形状をした白いパンの真ん中に切れ目を入れ、溶けたチーズと野菜を挟んで食べたら美味しかった。胃もたれとか言いながら、ついついベーコンとチーズと野菜を挟んでしまった。
♪ テレッテ レッテー ♪ って口ずさんでしまったのは言うまでもない。
「ここの料理は美味いけど、ミーシャのトンデモ飯で冷やしエールが飲みたいところだな」
「じゃな」
「トンデモ…ですか?」
「ミーシャならこの焼きチーズに何を合わせる?」
「そうですね、髭無し【
「ほら、【
ブホッ!! ゲホッ!! パイク=ラックさんが噎せる。
「【
「トンデモじゃな」
「だよなぁ…」
くそっ、トンデモとかいい意味で言ってるんだろうけど……よし、最終兵器を投入しよう。
「最高に簡単なのは、カリカリに焼けたチーズに【粗相豆】を一滴垂らす…ですかね」
「今直ぐにやってみたいが、それでは店に失礼になるし」
「出発前にチーズを買うのじゃ。髭無し【
「それだ!!」
「それなら甘塩サモンを買って、それも一緒に焼きましょう。焼きサモンとチーズと蒸した【茄子花芋】に【粗相豆】をピッピッと掛けます。そこに【リモー】を搾ってもいいかな?」
「そして冷やしエールか」
「ホーク=エーツが泡を吹くじゃろうな……」
俺としては、本当のところは生鮭を焼いて大根おろしを添えて醤油を掛けて食べたい…。
ジョッキで一杯〜二杯だったけど、こっそり飲んだ冷やしエールに皆満足した。
出発は明後日の朝。時間で言ったら八時頃かな? 明日は移動前の準備があるのでのんびり石磨き…とはいかないらしい。街道沿いには無料休憩所とは名ばかりの小屋が点在しているのでそこで簡単な調理や素泊まりが出来るとのこと。まぁ馬車があるから小屋でなくても夜は越せるし、土魔法で簡単な竈さえ作れれば煮炊きは出来る訳だが。普通なら馬車に持ち込むのは芋や野菜、エール樽が中心になるそうだけど。
「こうなると【芋麺】は便利だな」
「居たら便利なのはジョー=エーツじゃな。あれは食料調達が上手いのじゃよ」
「まぁ、その辺で小動物が獲れたら解体は俺がするから、後はミーシャに任せよう。こんなことならアリサから野営料理を教わっておけば良かった」
「アリサさんの得意料理ってどんな料理です?」
「そうだなぁ…芋煮込みとか、芋の丸焼きとか、食用鼠のハーブ詰め丸焼きとか、干し魚のスープとか、猪肉のエール煮込みとか、蛇の渦巻き焼きだな。シンプルで美味いんだ
。美味いんだが……続くと飽きる。飽きたら連れ立って食堂や屋台や酒場巡りだ」
そんな話をしながら晩御飯は終了。俺は公衆浴場で汗を流してから宿に戻ることにした。飲酒しながらの入浴は禁止だけど、酩酊さえしていなければ飲酒後の入浴は禁止されていないのだ。宿で渡してくれる入湯札はちゃんと持ってきてるぞ。お風呂も済んでサッパリしたところでご機嫌で宿に戻って来たら、食堂でホーク=エーツさんがテーブルに突っ伏して「もう飲めない…」と呻いていたよ。
お酒に飲まれてしまったホーク=エーツさんを助けてあげる御業は持ち合わせていないので、そっとお酒の神様にお祈りだけしておいて部屋に戻った。明日は元気になりますように…。
…でさぁ、異世界にもシジミは居るの? 飲んだ日の翌朝はシジミのみそ汁だよね。シジミが居るなら飲ませてみたいけど味噌が見つかってないし。それより何より、下手にシジミ汁を飲ませたばかりに「君の作ったシジミ汁を毎朝飲みたい」とか言われたら嫌なのでやっぱり止めておこう。
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