第137話

今日は各ギルド支部に呼ばれないと言われたので、リンド=バーグさんを信用してサンゴの化石と砂利を研磨することにした。部屋で研磨の件なんだけど、リンド=バーグさんとパイク=ラックさんが、俺の作業は大して音も埃も出ない事と、作業理由は職校に新規で通うことになるドワーフが得意分野の練習をしておきたいと言っている、という説明をしてくれたので問題なく作業出来ることになった。



砥石問題は昨日サモンフライのお店に行く前にリンド=バーグさんが砥石屋さんに連れて行ってくれたので呆気なく解消。鉱石や魔物素材を研磨するのに使い勝手の良い物を何個か買ってもらった。あと、乾燥木賊とくさも。前世でいう耐水ペーパーの#400と#800程度の番手のやつ。俺だけでなく二人とも気になる砥石を見つけたのかしっかり買ってたし。『スワロー』には馬車移動になるので少しくらい荷物が増えても問題無いと言ってたしな。


パイク=ラックさんは【蛇魚】を入れる木桶を作る計画をしていたので材木店にも行ったよ。新品のスライムかめに入れて運んでやればいいんだけど、【蛇魚】は魚籠ビクや木桶に入れられる方が好きらしい。時々注水してやれば餌が無くても十日くらいは死なないんだから中々の生命力持ちだな。宿に食材として渡してしまっても良かったんだけど、俺がついうっかり「【蛇魚】を捌く特殊な刃物が有るって爺ちゃんが言ってたのを聞いた記憶が…」なーんて言っちゃったらリンド=バーグさんがすかさず食いついてしまった。という事でこの鰻も『スワロー』行きの同行者にされてしまった。でも俺、前世で鰻包丁なんてマジマジと見たことないんだよね。関東と関西で鰻包丁の種類が違うとかは聞いたことが有るけど。


砥石屋の次に全員で銘木店に向かった。エルフが素材指定で注文してくる杖に使う木材でもない限り、木材は普通に材木店や製材所で購入する。パイク=ラックさんは店内で桶用の素材を吟味してたハズなんだけど、俺が気付いた時には【魔多々媚またたび】蔓を受け取っていた。【猫魚ナマズ】獲り用の魚籠ビク作りの依頼を請けたとのこと。納品単価が良かったので、【蛇魚】用の木桶は既製品を購入し、出発まで【魔多々媚またたび】の魚籠ビクを作りまくるそうな。


「猫とは直接関係が無いハズなのに、何故か【猫魚ナマズ】獲りには【魔多々媚またたび】の魚籠ビクが効果的なんじゃよ。偶に猫の人も掛かるがのぅ…」


それはきっと、「おさかにゃにゃ!! 【魔多々媚またたび】のにゃかに、おさかにゃにゃっ!!」って手を出してるだけです



そう言えばリンド=バーグさんも武器に使う木材を購入していた。チーウ=エーツさんのツルハシとシャベルの柄用なんだとか。『スワロー』に着いたらアリサさん所属の『地底』のメンバーの武器のメンテがあるハズだから…って言ってた。


こうして店を覗いてみて分かったことは、無理やり素材を取りに行かなくてもいいし、流しの職人として依頼を請けて納品しても問題ないことだとか、職人業で食えなくとも素材を卸して生活出来るとか、そんな事だった。リンド=バーグさんも木賊を育てて砥石屋に卸して小遣い稼ぎをしたことがあるんだとか。



さて、サンゴの化石の研磨を再開しよう。今回はノートの左側のみの記載でいいかな。特に隠すことも無いしな。いや、あれですよ、あれ。中二病あれっぽくは書けますよ。



“ 初めて買った掘り出し物がコレです! パット見でジャンクなズリ石かクズ鉱石なんだけど、端にチラッとサンゴっぽい筋があるのを見逃さなかったボク凄くない? ドヤッ!!”



とかね、書こうと思えば書けるのよ。そして葬儀の席で…以下省略。



磨き終われば完成形になる様に整形してあるので、粗めの乾燥木賊とくさで丁寧に空研ぎしていく。空研ぎはどうしても目が詰まるから時々『汎用魔法』の『清浄』を掛けて目詰まりを取ってやる。そして『乾燥』。勿体ないからじゃなくて、程よく研磨力が落ちてる箇所を使う為だ。前世で手研磨しながら耐水ペーパーを使う時に


#400→#600→#800→#1000→#1500→#2000と細かく丁寧に研磨するのと

#400→#800→#1500と番手のショートカットをしながら研磨する


…のとで比較をしてみたんだけど、キッチリ傷を消せるんならショートカット消費でも問題なかったのだ。確かに複数の番手の耐水ペーパーを使えば傷は目立たなくなっていくんだけど、実は最初にいかに大きくて深いキズを付けないかが研摩を楽にするポイント。なので、異世界の木賊でも上手く使ってやれば何とかなるハズだ。


フィニッシュ用の金剛砂とかガラス研磨剤とか有るのかな? 鹿の角や備長炭で擦るとか? 代替え品は有るのか? それこそ魔物素材とかだろうか?









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