第125話

翌朝、ホーク=エーツさんは上質の状態回復ポーションを飲んでダメドワーフから華麗に脱却。リンド=バーグさんとパイク=ラックさんも念の為…と普通の状態回復ポーションを飲んでおいた模様。ちなみに俺は飲んでないです。


俺には大した荷物も無いので、ポニー達に餌やりを兼ねて「今日から宜しくね」と挨拶に行くことに。  パカッ パカッ  赤毛のラパンが真っ先に駆け寄ってきてそのまま甘噛みしてくる。アルファルファを一緒に食べて以来、ラパンが一番チョッカイをかけてくるようになったよ。



三人共、予想外に身軽な格好だった。えっ、それだけ!? …ってレベルで。聞くとレンタル品のマジックバッグに荷物一式を詰め込んでいるとのこと。



『関所の集落(仮)』の中央広場で出発の準備をしていたら フシュー というか ヒーン というか、鳴き声とも鼻息ともつかない音を上げながらワギュが額を擦り付けてくる。もうそれこそ、グリグリという擬音が聞こえてきそうな勢い。


「ワギュ、どうしたの? ボクに何か伝えたいの?」


グリグリグリグリ ワギュは尚も額を押し付けてくる。



グリグリグリグリ ……ポロッ



俺の脚元に何かが転がり落ちた。


「えっ!? ワギュ、額から宝石が!! ワギュ、大丈夫!?」


ワギュの額から【運馬ウマ】に特有の宝石が外れていた。拾い上げるとそれは緑色をした宝石に見える謎素材の石。咄嗟に『対物簡易鑑定』を掛けると【運馬石ウマせき】と出る。魔石じゃなくて【運馬石ウマせき】なのかよ。



「それ【運馬石ウマせき】か!! 俺、【運馬ウマ】から【運馬石ウマせき】が外れるのを初めてみたぞ」


「ワギュ、大丈夫なんですか?」


「カーバンクルもそうだが、【運馬ウマ】の額の宝石みたいなやつは角の一種みたいなものなんだ。だから魔獣側の意思で外れた場合は特に問題はない」


「良かったー。ボク、心配しちゃいました」


ワギュの首筋を撫でてやると目を細めて俺の肩に鼻先を擦り付けてくる。肩にちょっぴり鼻水が……付くのは仕方ないか。


「それはワギュからミーシャへの親愛の意思を伝えたかったんじゃろうな。時に【運馬ウマ】は気に入った相手に【運馬石ウマせき】をプレゼントするんじゃよ。ミーシャ、貰っておくんじゃな」


「はい。ワギュ、ありがとう。ボク大事にするね」


「良かったじゃないか。研磨の腕が上がったら自分で研磨してアクセサリーにすればいいぞ」



リンド=バーグさんがそう言ってくる。まだ研磨しちゃダメって事だな。



「これ、持ってて大丈夫なんですか?」


「別に禁制品とかじゃないからな。ただの珍しい魔獣素材なだけだ。ただ研磨は難しい。【バサルトタートル】の甲羅より難しいぞ。まぁそのまま持ってても綺麗だから下手な考えはするなよ」


わかりました、肝に銘じます。五年くらいは研磨するのは諦めました。



「ミィーーシャァァァー!! まだ出発してないよねぇぇーーー!!」



そんなワギュとの感動的な雰囲気をブチ壊す勢いでマリイン=リッジさんが猛ダッシュしてきた。ドワーフって酒樽を取りに行く時以外もダッシュ出来るんだな。


「はあっ、はあっ… はっ あっ  こっ…… これ……」


マリイン=リッジさんが息切れしながら俺に手渡してきたのは【粗相豆】!! しかも結構な量を。


「これ…、 約束……して…たから……」


土魔法『土器』でコップを出し『汎用魔法』で『飲水』を注ぎ入れ、マリイン=リッジさんに【粗相豆】と入れ替えに手渡す。


「マリイン=リッジさん、先ずはこれを」


「ありが…とう  ゴクッゴクッ   ゴク ブフォッ ゲホッ  カハッ」


マリイン=リッジさんがゴクゴクと音をさせながら一気に水を飲む。そして……噎せた。



「大丈夫ですか!!」


「だっ、大っ、大丈夫だから…。ついでにこれも!!」



マリイン=リッジさんから手渡された植物を受け取る…………臭いな。『対物簡易鑑定』の結果は【椿象草カメムシそうの根っ子】と【魚腥草ドクダミ】と【臭桐クサキリ】……。って、臭いに決まってるよ!!



「これ、食べれるやつだから。根っ子は『スワロー』に着いたら植えて」


「は…、はい……。アリガトウゴザイマス」



これ、まさか道中の食料枠なの!? 嬉しくないし、むしろ迷惑です。お気持ちだけ頂きます。


「食用にもなるし薬茶にもなるのう。と言うても、たかだか二日程度の道中なら儂は飲まぬがの。まぁ【椿象草カメムシそうの根っ子】は貰っておいた方が得じゃな」



カッカッカッと笑うパイク=ラックさん。やっぱりこれイヤガラセ枠だったよ。



――――――――――――――


これにて第一章の終了です。次回より第二章の開始となります。










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