第124話
「これは?」
「川エビと【菊の葉】のフリッターです。岩塩を少しだけ付けて食べて下さい。これはエールよりも『
天つゆが無いので塩で食べます。
「川エビのフリッターは魚醤と【リモー】の合わせタレでも良さそうだ」
「つまり、【粗相豆】のタレが合う可能性があるのか」
「在庫は無いからねぇ。野外採取しながら栽培研究するよ」
おっ、広がった割りには川エビのかき揚げが美味い。調理を司る地母神レミに感謝しなきゃ。そして大事な事に気付いた。天ぷら蕎麦や天ざるよりも天丼の方が先に再現できそうだと言う事に。
「食べながらでいいから聞いてくれ。ミーシャはどんな調理道具が要ると思う?」
「うーん (もぐもぐ) 何種類かの調理用トングと、油から引き上げる時用のザル的な道具 (前世だと網杓子か) 、油の温度は慣れたら把握できそうですが、パイク=ラックさんの蝋引きで使う温度計の油用があれば誰でも失敗なく揚げ物が出来るのでは?」
ピーラーとか【バーサーカッター】は割愛してますよ。だってこれはもう必須アイテムでしょ。
「ガルフ=トング、せめて俺達がここを出発してから試作してくれよな。もう、無理!! やめて!! 試すのは【
あー、ホーク=エーツさん、明日の朝も眼鏡姿が確定かぁ…。
連日連夜の飲んで騒いでの楽しい時間ももうすぐ終わるのか…。宴が終わるのはやっぱり少し寂しい。鰻が食べられなかった事も心残りではあるが。そして料理が残ったら明日のお弁当のおかずに回そうかと思っていたんだけど甘かったよ。余ったのは、使わなかった【スライム茸】と茹で【
♪ お嬢さん よく聞いとくれ
すっかり出来上がったホーク=エーツさんがいきなり歌い始めた。前世でも聞いたことがあるような感じの歌詞だ。どこの世界にもこれ系の唱歌はあるのか?
♪ 職人さん よく聞いとくれ
二番もあるんだ…。ホーク=エーツさん、ただの出来上がったオッサンだよ。前世の居酒屋の酔客にいそうなタイプだ。
「俺も歌うぞ!!」
♪ 俺の髭が 胸まで伸びて
君と揃いになったら
村の酒場で 君に告げるよ
結婚しようか トゥルルル〜 ♪
何だか前世のフォークソングっぽい歌だ。ただ、歌詞はドワーフならではって感じだけれど。
「俺も俺も!! 俺も歌う!!」
♪
言っておきたい事があるの
三徹するな 風呂には入れ
せめて
これも知ってる気がする。歌詞がアレだけど。リンド=バーグさんが歌うとシャレにならないよ…。
♪
伝えておきたい 事がある
四徹するな 髭整えろ
錬金道具で調理は止めて!! ♪
二番の歌詞もそうとうアレでした。
「おいおい、それくらいにしとけよ。見ろ、ミーシャがドン引きしてる…」
♪ 採掘一番 精錬二番
三度の飯より酒が好き〜 ♪
もう………苦笑いするしかないな。俺には皆が名残惜しくて騒いでいるのか、ただの出来上がった酔っ払い集団なのか判断出来ない。
♪ 採掘一番 精錬二番
三度の飯より酒が好き〜
(合唱) 三度の飯より酒が好き〜〜 ♪
「いい送別会、いや壮行会じゃな」
そう言いながらパイク=ラックさんが冷やしエールの入ったジョッキを手渡してきた。
「はい」
「まぁ、たかだか隣街に行く程度じゃし、今生の別れと言う訳でもないがのう」
宴の終わった『関所の集落(仮)』の夜は静かに更けてゆく……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます