第117話

流石に声にならない叫びは「くぁwせdrftgyふじこlp……」とは訳されなかった。って、マジでそう翻訳されたら俺の方が「ふじこふじこ」してしまう。



「植物性の魚醤…なのかっ!?」


「それが本当ならば【渓流鰮】はヒレ酒専用にして構わないということか!!」


「魚醤のような物が魚の形を模した鞘に入っていた……と」


「くぅ〜〜っっ、ヒレ酒ェェ!!」



駄目だ、このドワーフ達、ヒレ酒の事しか考えてないよ……



「今夜の料理に使います。楽しみにしていて下さいね。で、それを使う料理の一つが、猪肉の【生薑ジンジャそう】焼きです。スライスした猪肉を【生薑ジンジャそう】の根っ子を擦り下ろしたものに漬け込んで味付けしたものをフライパンで焼きます。塩味のものと【粗相豆】味の物と二種類作ります」


「【生薑ジンジャそう】の根っ子にそんな使い方があったのか」


「あと、搾り汁を蜂蜜もしくは水飴と混ぜたものを作って、それをエールに加えると刺激的でサッパリとした味わいが楽しめます。ピリピリしたのが得意でないドワーフは、スライスした【生薑ジンジャそう】の根っ子を蜂蜜もしくは水飴に一日二日漬け込んでおいて、そのエキスの移った汁を加えれば良いかと」


「【生薑ジンジャそう】の根っ子をエールに…か。俺達には想像もつかない使い方だ」


「呼び名は【生薑ジンジャエール】かのう?」


パイク=ラックさん、それ、当たりです。そして段々とホーク=エーツさんの顔色がヤバいことになってきているな。




「お酒繫がりで話したいことが有るんですが」


「聞こうじゃないか」


「これ、【ぶな麦】です。これを使って作る『生命之水蒸留酒』が存在するらしいんです」


そう言って俺は僅か一握りの蕎麦の実を見せる。


「パイク=ラック、マリイン=リッジ、知ってたか?」


「初耳じゃ」


「俺も聞いたことはないよ。確かに穀類ではあるから『生命之水蒸留酒』を作れなくはないのか」


「どうも【白濁酒】」みたいな作り方から蒸留するみたいなんです」


「一筋縄ではいかないのか。酒造班に研究させがいがあるじゃないか」


「となれば【ぶな麦】の栽培からか…」



うん、お酒が絡むと実に話が早い(笑) お酒の神様、何卒、蕎麦焼酎を完成させて下さい。その際は手打ち蕎麦も奉納します。蕎麦打ちは練習します。



「後は料理の話の続きに戻ります。【鉱滓スラグ包み】のタレに【粗相豆】の中の液と【シークワ】の搾り汁を合わせた物を使うとか、芋麺と野菜を炒めてデンプンでトロみを付けた物をクレープの皮で包んで揚げた物とか、山鳩肉と蛙肉にデンプンをまぶして揚げた物とか、猪肉と野菜を素揚げして甘酢あんかけにした物とか、川エビと【菊の葉】に大麦粉を水溶きしたものを絡めて揚げた物とかを作ります。多分、登録は不要ですよ」


「ミーシャ、沢山過ぎてよく分からないぞ(苦笑) 実際に作りながら説明して欲しい」



ポン酢モドキ、春巻き、唐揚げ、酢猪酢豚、かき揚げ。前世の料理名で言うと、この短さよ(苦笑)



「【痺葡萄】や【鬱金クルクマそう】は後日、使い道を研究してみます」


山椒の粉とかターメリックは職校の寮か、寮が無ければ部屋を借りる事になるだろうから、そこで実験かな。賄いとか学食的な食事提供があれば勿論食べるけど、無ければ自炊か外食になるんだろうからその時は前世の食事の再現実験だな。箱に入ったカレールーの再現は無理だろうから、タマネギ炒めてカレー粉入れて…なスパイスカレーの研究から。カレー粉の配合も実験から始まるのか…全く詳しくないぞ。


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