第107話

「ジョー=エーツさん、何かお肉は獲れましたか?」


「あぁ、伝えるのを忘れてた。子鹿が穫れた。後は蛙だな。解体済みだ」


「ありがとうございます」


鹿は食べたことがない。子鹿ということなので柔らかめかな? 猪よりは赤身だろうな。猪鹿合い挽き肉にしてみたらどうだろう? 脂っ気が足りなかったら猪脂を足そう。



「そうだ、ミーシャ、昨日食べた【鉱滓スラグ包み】が好評だったんだよ」


「そうなんですか? だったら今日も作ります。折角なので揚げたのと蒸したのも出しますね」


「そいつは楽しみだ。ポーションを用意しておかないと…だな」


「昨日は優しい味付けで作ってみたんですが、更に【山韮やまニラ】と【山大蒜やまニンニク】を加えるとパンチの効いた味になるんです」


「なら、それも作ってもらおうじゃないか」


俺的にはやっぱり餃子にはニラとニンニクは必須だと思うのですよ。




「そう言えば、揚げ油って何から絞ってるんです?」


なぜか植物油がそこそこ潤沢にあるんだよね。気になってたんだよ。ラードより植物油の方が多いんだよ。


「基本は葡萄だな。椿や水瓜スイカからも採れる。綿の種や亜麻の種もあるし、紅花サフラワー向日葵サンフラワーもだな。胡麻や撥菜バチなの仲間からも取れるぞ」


「葡萄?」


「ワインの滓から種が出るだろ?」


あ! ワイン造りの副産物か。流石ドワーフ。椿はあれだな…髭の手入れ用だ。綿や亜麻は織物の関係だし。紅花サフラワー向日葵サンフラワーって響きが紛らわしいぞ!! 撥菜バチなは……前世のペンペン草? ナズナ、つまりアブラナ科の植物ってことだな。多分、菜種油もあるってことだろう。


「油は髭や工具の手入れに使うから、何から搾れるかは色々研究されてるんだよ」



ドワーフ万歳!! お陰で美味しい揚げ物が食べられます。



そして、ふと思った。今この『関所の集落(仮)』にゴマ油は無いけれど、ラー油的な物は作れるんじゃないかって。しかも食べる的なやつ。アブラナ科の植物があるなら探せば多分、芥子もあるだろうから、練り辛子もしくはマスタードもありそうだ。まぁ、ここの『関所の集落(仮)』に置いて無いだけでマスタードは普通に出回ってそうな気もするが。


いつか風呂吹き大根に練り辛子付けて食べてやるぞ。



{ ――― 猪饅に練り辛子と酢醤油〜 ――― }



また脳内に謎の声が響いた気がする。そうだな、練り辛子と酢醤油か…。心太ところてんとか刺身コンニャクを思い出したよ。心太ところてんは海藻から作れそうだけど、異世界にコンニャクは無い様な気がする。サラバおでん(泣)



餃子の皮を仕込まなきゃな。春巻きの皮もか。生姜焼きの付け合わせには千切りキャベツだ。クレソンも添えてしまおう。山鳩と蛙は唐揚げで。


揚げ物祭りついでにフライドポテトもいきますか。皮付きのくし切りで。ポテチか……ポテチもいいけどなぁ。かき揚げと天ぷらもあるし、芋を揚げるのは明日にしておこう。




「ミーシャ、【蛇魚】の泥抜きしてるー? 泥抜きするなら緑スライムを入れなきゃ駄目だからー!!」


遠くからマリイン=リッジさんの声が聞こえる。そうか、泥抜きには緑スライム併用なのか…。







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