第106話

テンション上がりすぎて夜に作るメニュー候補が全部ブッ飛んだ気がする。さて、何を作るか……。


やっぱり生姜焼きでしょ。猪肉が残っているうちに作ってしまおう。マリイン=リッジさんが採ってきた醤油入れじゃなくて【粗相豆】は三つ。たまり醤油だったから薄めたら足りるんじゃないかな。


それと、作りそびれた春巻き。油を使うんなら川エビも揚げちゃおう。


春巻きの中身は芋麺と…シャキシャキ食感の野菜が欲しいな。ここで手に入るのは……【樹樹じゅじゅ菜】の茎? 春菊そっくりの【菊の葉】の茎もいけるかな。毟った【菊の葉】は天ぷらだよねぇ…。川エビのかき揚げと【菊の葉】の天ぷら。【食用マンドラゴラ】もあったよ。



茎から小房に分けられた【樹樹じゅじゅ菜】が残るのか…。茹でて山鳩肉とサラダにしてみるかな。茹でブロッコリーと茹でた鳥の肉、ボディビルダーさんの食べ物の様だ。茹で玉子の白身がないのが残念。



そう、醤油と言えば大事なことに気付いてしまった。大豆が無い、醤油は生る。大豆が無ければ豆腐を食べられないじゃない!! つまり、俺の大好きな揚げだし豆腐も麻婆豆腐も食べられないのだ。味噌も……もしかしたら味噌も生っているかもしれない。しかし、枝豆はどうだ? 枝豆は若い大豆だ。つまり、大豆が見つからない限り、茹でた枝豆をツマミに冷えたエールを飲むことはできないということだよ。節分に豆撒きもできないよ。まぁ異世界に節分はないだろうけども。



{ ―― 大豆がなければ落花生を撒けばいいじゃない ―― }



脳内に謎の声が聞こえた気がした。それ以前にこの世界に落花生は有るのか? 謎の声が指摘するということは落花生があると言う事なのか? まぁ落花生でエールもいいよね。バターピーナッツでエールかな? 柿ピー? パンにピーナツバターを塗ってもいいなぁ…。探したい豆候補に入れておこう。序列は一位:大豆、二位:落花生、三位:小豆で。そうだ、四位:緑豆も。だってモヤシも食べたいし。いつかラーメンにトッピング増し増しするんだ……。



【蛇魚】こと鰻は泥抜きの為に水を張った木桶に入れた。川エビは死んでいるので『汎用魔法』のJSS浄化清浄殺菌トリプルコンボからの『有害金属除去』。生食する訳ではないけれど、スキルが生えている、もしくは生えてくれるかもしれない事を期待して、念の為『寄生虫除去』も唱えてみる。俺にとっては酒を冷やすスキルより寄生虫を除去するスキルを取得する方が大事なのだ。そこに『生命之水蒸留酒』少々を振り掛けておけば下処理は終了。



「おっ、ミーシャ、ポニーには乗れる様になったか?」


「ジョー=エーツさん、おかえりなさい。何とか…は。まだ走らせられないんですけどね」


「ん? 『 襷着るタスキル』を使えば落ちないだろ?」


「ジョー=エーツさん、その『襷着るタスキル』って何ですか?」


「あ、知らなかったか。『汎用魔法』で『襷着るタスキル』ってのがあるんだよ。人や物を固定する魔法だ」


「初耳です。ボク、明日中に覚えられるかな?」


「まぁ、ポニーに協力してもらえば生えるかもだな。あいつら【運魔ウマ】は『襷着るタスキル』は勿論、簡単な魔法の一つくらいは使えるからな」


マジっすか!? 凄いな【運魔ウマ】。


「ポニーに『襷着るタスキル』でミーシャを固定してもらって感覚を掴めば『襷着るタスキル』習得の練習にもなるだろう」


「頑張ります」


「頑張れよ。ちなみにだな、『襷着るタスキル』に『襷着るタスキル』を重ねたら『二重襷にじゅうタスキ』になるからな」


「えっ!?」


「【運魔ウマ】に『襷着るタスキル』を掛けてもらって、そこに乗り手が『襷着るタスキル』を重ね掛けすると『二重襷にじゅうタスキ』だ。『二重襷にじゅうタスキ』状態だと裸【運魔ウマ】でも遠乗りが可能だ」



もしかすると『汎用魔法』に二人羽織もあるかもしれない。

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