第84話

「後はアレか? ミーシャのだけか?」


「そうだね。野菜料理は美味しかったけど、特に登録しなくてもよさそうだし」


「おい、兄貴、そんなに美味い飯を食ってたのか?」


「ああ。ミーシャには料理のスキルがあるからな。美味いものも風変わりなものも食わせてもらったぞ。あぁ、ホークにも食わせてやりたいなぁ……一本【樹樹じゅじゅ菜】料理を」


ブッ!!   誰だよ、盛大に吹いたの…



「ミーシャ、順にいくぞ」


「はい……」


「リンド=バーグ、預けてある物を全部出してくれ」


リンド=バーグさんが回収していた “ 魔力を注いでしまった魔石 ” 、“ 研磨済み【赤スライムの死核】 ” を取り出す。あと“ 研磨した【バサルトタートルの甲羅】 ” も出て来た。


「あ、岩塩から分離したやつはミーシャの家か?」


「確かそうだな。もう一度ミーシャの家に行こう」


「兄貴、ミーシャに取ってきてもらったら駄目なの?」


「ミーシャがまた変なものを作って隠していたら困るからな。全員で確認するんだよ」


うっ…、俺の信用はないのか。


「特に作ってないですよ…」


「信用ならん」


「ミーシャだからなぁ…」


「だよねぇ」




「はい、これが岩塩から分離した【有害金属】です。『汎用魔法』の『有害金属除去』で分離しました。岩塩だけでなく、様々な物質からも【有害金属】は分離できます。多分、生き物からは無理だと思います」


「少ないけど確かに有害金属だね」


ポーション瓶を見ながらホーク=エーツさんがそう語る。つまり、以上の『対物鑑定』スキル持ちということなんだ。


「生き物から抜けないって、生きている相手からは無理って意味なの? 死体からなら抜ける?」


「死体相手…には、捕獲した蛇や蛙で試しました。ごく微量ですが除去できていた感じです」


「生きているものからは無理なのか。砒素や鉛を盛られた王侯貴族からは抜いてあげられないんだね」


「それは一回殺してから『有害金属除去』したあと速やかに蘇生魔法を使えばイケないか?」


「兄貴、試してみる?」


「いや、いい」



なにこの兄弟……。



リンド=バーグさんが研磨済み魔石滓を手渡す。ああ、反応が怖い。


「で、魔石? 何で研磨してあるの? えっ!? 魔力が復活!? ミーシャが魔力を充填しちゃったってマジ!?」


「はぁぁぁっっ!?」



やはりこの世界の常識の範疇超えなのか。見る者全てがパニックを起こす代物なんだな。


「待て待て待て待て……待って!! 兄貴、説明して!!」


「説明も何も、お前が見たままだよ」



「俺から補足するとだ、どうやら研磨した魔石滓には魔力を込める事が出来るらしい。ミーシャが研磨した魔石滓に俺も魔力を込める事が出来た。だが、かなり込め辛かったから、研磨の癖が関わってくるのか、スキル保持によって魔力を込めることが出来るのか否か、その辺りは調査研究が必要だ。学園に持ち込むのが一番だろうな」


リンド=バーグさんが説明してくれた。


「ふぅ……、 はぁ………、 ヤバいわ、それ」



「ミーシャは鉱石研磨が好きなんだ。それで拾った魔石滓を磨いてしまったことで起きた事件がなんだよ、!! そんなだから俺も面白がって、つい、【赤スライムの死核】を与えてみたらこの通りだ」


「凄いね。普通、磨かないよ」


「研磨仕事をする奴以外はな」



「そして、初見の【バサルトタートルの甲羅】を研磨して割ってたぞ。この甲羅を補修したのは俺だ。後でペンダントにしてやるからな。装備したら防御力が気持ち上がるハズだ」


「いい仕事だね。リンド=バーグの仕事はどこまでなの?」


「甲羅の研磨は全部ミーシャだ。これ又いい研磨をするんだよ」


俺、褒められてる?


「ミーシャはの研磨が好きなんだ。俺としてもそっち方面で才能を伸ばしてもらいたいと思ってる。まだまだ磨かせたいものが山のようにあるからな」


リンド=バーグさんがニヤリと口角を上げて笑う。あっ、それ悪い笑いだ。





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