第83話
「で、俺達も申告件数が多すぎて何を報告するのか分からなくなってるな」
「順番にいこう、順番に」
「その前に昼飯だ。取り敢えずパンと芋でサッと済ませよう」
「猪骨のスープもあるよ。【
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「俺からいく。新作道具の【ピーラー】と【バーサーカッター】だ。【ピーラー】は野菜や果物の皮を薄く剥く事が出来る調理器具だ。【バーサーカッター】は誰でも簡単に食材を微塵切りに出来る調理器具だ。あと、今試作中の道具に【T字剃刀】と【トング】がある。【T字剃刀】は【ピーラー】の髭剃りバージョンで、【トング】は調理用の火ばさみだ」
「ガルフ=トングは試作込みで四つか」
「まぁ、発案者はミーシャなんだがな。俺は形にしただけだ」
「儂は冷やしエールじゃ。エールを冷やして飲むと美味いんじゃ!!」
「エールを冷やす……ねぇ」
「ゴチャゴチャ言わずに飲んでみるのじゃよ」
パイク=ラックさんが冷やしエールを注いたジョッキを出してくる。いつの間に用意してたの!?
ゴクッゴクッ…… 三人が冷やしエールを飲み干す。「いいなぁ……」と声が聞こえる。多分、リンド=バーグさんだ。
「美味い!!」
「エールは冷やして飲むべきだったのか!?」
「お代わりをくれ」
「エールの続きは夜になってからじゃよ」
パイク=ラックさん、説明のためとはいえ、仕事中のドワーフにアルコールは厳禁です!!
「それでじゃな、儂は秘匿魔法がある故、いつでもこうしてエールを冷やすことが出来るわけじゃが、普通は無理であろう?」
「確かに」
「という訳でじゃ、冷やしエールの素晴らしさを伝えると共に、エールを冷やす魔道具の開発を提案したいのじゃよ。冷却機能を樽に付けるかジョッキに付けるか。ジョッキに付けるなら回数制限を付けて魔石の交換制にするとかじゃな。樽は単発でもよいじゃろうし。その辺りはお任せじゃ」
「こっ、これも全力で取り組まねば。学園に通う若者には冷却の魔法を習得してもらうか……、いっそ全ドワーフが会得すべきか!?」
いかん、ホーク=エーツさんが壊れた。
「そうそう、ここのところ連日エールを冷やしておったら魔力量が増えたのじゃよ」
ホッホッホッ…と笑うパイク=ラックさん。その報告に三人がピクッと反応した。
「パイク=ラック氏は確か……」
「あのお年でまだ総魔力量が増えるのか…」
「どれ程エールを冷やしたというのか?」
「で、ホーク、その次は更に新しい酒の飲み方の報告だ」
「兄貴、冷やす以外に新しい酒の飲み方があるのか?」
「先ずは、【渓流鰮】を焼いて食べた後に残った骨を炙って『
「それは今夜飲めるのか?」
「生の【渓流鰮】は無いので、尾を干したものを炙ったものでなら作れます。もしかしたらホーク=エーツさんが持ってきた【サモントーヴァ】を軽く炙ったものを浸したら、新しい飲み方になるかもしれないです」
えっ!? 何で全員が俺を見るの?
「そして、【
「はあっ!? 兄貴、その物騒な名前は一体!?」
「【
「それで血祭りと血の海という名前なのか。美味いのか?」
「ああ、美味い。それに野菜を使っているから身体に良い!」
「それも今夜……」
「ごめんね、昨日、完熟の【
マリイン=リッジさんが残念な報告をした。
「ぐぬぬ……、で兄貴、【
「勿論だ。そして割る【
「また冷凍……」 「冷却は必須なのか…」 「冷却の魔道具だけでなく、冷凍も考えねばならぬのか!?」
報告を聞かされる度、ザワザワする三人だった。
―――――――――――――――――
(誤字修正)
(誤) 甘熟の【赫茄子】を
(正) 完熟の【赫茄子】を
(表記変更)
(前) ジュースでエールを割った
(後) ジュースをエールで割った
(前) ジュースで『
(後) ジュースを『
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