第60話

「そうだボク、リンド=バーグさんに聞きたいことがあるんです」


俺はそう言いいながら、さっきパイク=ラックさんから貰ってきた乾燥木賊とくさを取り出す。


「リンド=バーグさんもって使いますか?」


「ん? 木賊とくさか。俺は使うぞ。木賊とくさも結構便利だからな。水を使えない時とか、水を使いたくない時とか、砥石だと作業しづらい時とか普通に使う。尤も、「木賊とくさは邪道!」とか言う鍛冶師もそれなりにいるんだが」


「さっきパイク=ラックさんから戴いたんです。それで、リンド=バーグさんを始めとした鍛冶師のドワーフたちも使うのか聞きたかったんです」



「俺のバーグ氏族は割に何でもありだから、武器・防具の他に何を作っても一族に叩かれないし、工具の類も何を使っても文句を言われないからな。便利なものは使った方がいいに決まってるだろ? 流石に剣の刃を付けるのには砥石を使うがモーニングスターなんかの突起を磨くには木賊とくさが便利だしな。勿論、先端が刺さる様にするなら砥石で研ぐが」


どこにも伝統だの王道だの邪道だのに拘る?囚われている?人は種族を問わずいる訳か。



「パイク=ラックさんが、「これで磨き途中の鉱石を仕上げてみろ」って言って渡してくれたんです。その使い塩梅をみて、ボクの好きな様に木賊とくさを育ててみろとも言われました」


「成る程な。パイク=ラックらしい」


木賊とくさ、リンド=バーグさんも使うオススメ道具だった。株を貰ったらしっかり育てるぞ。



「ミーシャはスキルオフで作業出来る系か? ちょっと試してもらいたい事があるんだ」


「はい、スキルオフというか、スキルを使わないスキルに頼らないでの作業なら出来ます。作業中に無意識に使っちゃう可能性はあるかもですが」


「いいぞ。ミーシャはいい職人になれそうだな。普通はスキルを取得したらスキルに溺れるものだからな。スキル補正ありきの作業に慣れてしまったら、スキル無しでの作業は苦行に近いものだ」


あ、それは俺が異世界出身なので、前世ではスキルのお世話になってなかったからスキルオフが出来るだけです。


「スキルオフで作業する現場なんてあるんですか?」


「技能認定試験の時とか、技能試合の時とかはスキルオフを要求されたりするな。ハンデ戦の時なんかは要スキルオフだ。自力でオフ出来ない者も居るからその時はスキルオフの魔道具を装備させられるぞ」


「で、ミーシャには全スキルオフ状態でを研磨してもらいたい」


そう言うとリンド=バーグさんは謎の赤い石を取り出した。大きさは鶏の卵程度。全スキルオフ、つまり【対物簡易鑑定】を掛ける事も禁止だ。


ヤバい、俺、凄くワクワクしてる。久々に事前情報なしの初素材研磨とか久し振りすぎる。


「ここの研ぎ場で研磨してもらう。砥石は全種類使っていいぞ。仕上げ砥石も上級だろうが最上級だろうがどれを使っても構わない。俺が許可するからな」



ヤバい、脳から変な汁が出てきそうだ……



――――――――――――――――――――――

(衍字修正)


(誤) 魔道具を装備品させられるぞ

(正) 魔道具を装備させられるぞ


(誤字修正)


(誤)久事前情報なしの

(正)久々に事前情報なしの

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