第39話

「【芭蕉紙】の使い道は後で話します」


そう誤魔化す。引き攣った笑顔になってないかな?まぁ、もう何かバレてる感じなので、諦めて開き直ることにする。


「じゃあ、次は俺だな。ミーシャ、直球で聞くけどお前、将来どうするか決めてるのか?冒険者になりたいとか、農業がしたいとか、職人になって生産職に就きたいとか、学問を極めたいとか、そういう事な」



あ…、それがきちゃった。俺としてはのんびり採取とかしながら石研磨できればそれで

いいんだけど、異世界でスローライフするには生活資金も地盤もない。大体、ドワーフとしては若造な訳で、ヒト族なら14歳前後に相当だ。第一、冒険者になって魔物を討伐する自信は全く無いので、やはり生産職で経験と金を貯めつつ石を磨いて生きてゆきたい。


「ボク、魔物を討伐するとか無理だと思うので、出来れば仕事を覚えて生産職に就こうとは考えています。でも、どんな適性が有るか分からないし……」


まぁ、余計な事は言わず素直に答えておこう。


「実はだな、集落の皆でミーシャの今後をどうすればいいか話し合ってみたんだ。ミーシャの気持ちもあるだろうし、協力出来ることは協力しようじゃないかという話になってな」


「ありがとうございます」


「だったら鉄は熱いうちに打て、酒は飲めるだけ飲めだ。今から作戦会議だな。パイク=ラックの家に行くぞ」


なに、その諺。


「パイク=ラックさんの家ですか?」


「パイクの所には【芭蕉紙】も蜜蝋も有るからな」



ルンルン気分でパイク=ラックさんの家に行ったまではよかったんだけどね、そこからが……、俺、悪い大人おっさんに騙されました。



「パイク=ラック、【芭蕉紙】と蜜蝋をミーシャに分けてやってくれないか?」


「よいぞ。何に使うか聞きたいものじゃな。何なら今ここで作業してもかまわんぞ」



ヤバい、大麦飴の存在がバレてしまう……

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