第33話

水飴、水飴、楽しいな〜♪


家に戻ると鼻歌交じりで水飴の素を確認する。少し冷えてはいたけど特に問題はなさそうだ。小さな練炭に『汎用魔法』の『着火』で火を付け、火力が安定したところで灰の中に埋める。これで容器を保温して朝まで待てばきっと薄い水飴が出来ているハズ。一酸化炭素中毒にだけは注意しなきゃいけないので換気の為に窓を開けておいた。


練炭は炭の粉を糊で練ったものを乾燥させて作る再生炭。前世でもキャンプの時とかBBQの時とかお世話になりました。ドワーフを象徴するのが鍛冶。鍛冶には何かと木炭を使う。ドワーフは砕けた炭も練炭に加工し無駄なく使う。まぁ、ヒト族には『貧乏人の炭プアーズ・チャコール』だの『黒練死神ブラック・リーパー』だのと呼ばれていてイマイチ人気が無いんだけど。



夜が明けるのが待ちきれず無駄に早起きしちゃったので入念に髭の手入れをする。パイク=ラックさんから貰った櫛で髭を梳くとたまらなく気持ちいい。髪用の櫛に持ち替えツインテールを整える。それから軽くストレッチをした。昨日は慌てすぎて、魔力を通してしまった【魔石滓】に『対物簡易鑑定』を掛けるのを忘れていたので今から確認する事に。鑑定結果は【内包魔力が回復した魔石・無属性】と出た。やっぱり俺、やらかしてた。少しだけチャージしたのかフルチャージ出来たのか分からないけど。



水飴の素を入れた容器の中に『対物簡易鑑定』を掛ける。成功を確認!!匙で一舐め、うん、甘い!!初めて作ったけど失敗しなくてよかった。上位存在さん、ありがとうございます。この後、煮詰めないとね。


嬉々として練炭に火を着ける。鍋を火に掛け、焦がさない様に大きく掻き混ぜる。そう言えば魔女の格好をしたお婆さんがお菓子を練り混ぜるCMがあったよなぁ。最後に「美味いっっ!!」って叫ぶやつ。今、とってもそんな気分です。


水飴の素を練り始めて小一時間、かなり粘度があがってきた。そろそろ完成かな?『次元収納インベントリ』から空のポーション瓶を二本取り出す。これは白い空間にいた時にAIさんから渡された異世界転生者用・基本贈呈キットの中に入っていたやつだ。そう言えばもらってたっけ…?レベルで存在を忘れちゃってた配給品。基本贈呈セットというだけあって、簡単な野営道具に薬草やポーション、数日分の保存食なんかが入っていた。保存食を食べ終わったらその存在を忘れましたよ、エセ非常持出袋。でもね、ポーション瓶の中味入が二本、空瓶が三本ってどういう事なの!?


空瓶に『汎用魔法』トリプルコンボを掛け、冷めきるまえの水飴を詰めてゆく。ドロリと流れる水飴。指先に垂らして舐めたら甘いの何の。死んでから今まで、どれだけ甘い物に飢えていたか。瓶に詰めて蓋をしたら『次元収納インベントリ』内に戻す。余った分はそのまま鍋に入れておく。


大麦の粉を煎る。香ばしい匂いがしてきたら火から下ろす。水飴の鍋を再度火に掛け、フツフツと泡立ち始めたところで先程の煎り大麦粉を投入。匙で掻き混ぜ纏め上げる。皿に煎り大麦を敷いたところにあけ熱いうちに捏ねる。柔らかいうちに小さく丸める。飴同士がくっつかない様に煎り大麦粉をまぶしておく。冷えたら煎り大麦飴の完成です。



水飴が出来た嬉しさのあまり、きな粉飴ならぬ煎り大麦飴も作ってしまった(笑)




  ――――――――――――――――――――――――――――――――――


(作者より)


前もポーション瓶を使っていたけど、今更ながらどこから出した!?って感じになるので、後付ながら異世界転生者基本キットなるものを貰っていた事にしておきました。


ミーシャが何故その存在を忘れていたかって、そりゃー土魔法『土器』で使い捨て食器を作ったりするし、集落に来てからは野営もしないので。大体、基本セットに現金入ってないからミーシャ的にスルーしちゃってる訳です。


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