第27話

『汎用魔法』の『水滴』で【魔石滓】を湿らせながら中砥、中程度の粒度の砥石の上で円を描く様に転がしながら滑らかにしてゆく。使う砥石はこの前採取してきたこの世界の砥石。前世基準なら粒度#800〜#1000といった感じ?スキル『砥石知識』さんも粒度の数値までは出してくれない。


ゴツゴツした感じの表面が滑らかになるに従って【魔石滓】の中に残っていた魔力残渣が抜けていく “感じ” がする。指先に伝わってくる “引っ掛かり” が無くなるくらいまでは研磨する。感覚頼りの作業。体感で小一時間くらい研磨してたかな?


一旦、手を休め、研磨途中の【魔石滓】を光に翳してみる。砥石の上を満遍なく転がしていたので表面は磨りガラス状。普通の鉱石だったらこの辺りから砥石の粒度を#2000辺りに上げて更に滑らかにしていく段階…なんだけど、【魔石滓】もそんな感じでいいのか!?肝心のスキルさんは反応無し。まだ中砥で磨くべきなのか、【魔石滓】とはいえ初めての魔石研磨でスキルさんが混乱しているのか…謎。


スキルが無ければ経験則で磨けばいいじゃない。と言うことで仕上げ砥石に交換し、更に滑らかにすることにした。粒度は#2000〜#3000辺り。比較的簡単に採掘出来る砥石はこのあたりの粒度まで。剣やナイフ、槍に斧など刃の付いた武器の仕上げにはこの辺りを使う。ちなみに【武人刀モノノフ・ブレード】と呼ばれる日本刀に似た武器や、【解体包丁極エクス・ブッチャー・ナイフ】という解体師の使う解体包丁の最高級品や、【暗殺刃アサシン・ブレード】と分類される暗殺者専用の特殊暗器の仕上げには更に粒度が上の砥石が必要。この砥石は採掘場所が限られているのに加え、鍛冶師でも師範クラスにならないと使えない。



そうそう、この世界の職人のランク表示は見習いが『新月ニュームーン級』、駆け出しが『三日月クレッセント級』、中堅が『半月ハーフムーン級』、独り立ちする頃の上級職人が『満月フルムーン級』。師範クラスが『弩弓星カシオペア級』。弩弓星は前世でのカシオペア座のこと。北極星を見据える星座の形が弩弓に似ているからそう呼んでるんだって。特級職人が『極星ポラリス級』。極星は前世での北極星。その上の超級職人は『極光オーロラ級』だ。

これ、ややこしいことに部門ごとでもそう呼び分ける。たまにいるんだって、鍛冶が『半月ハーフムーン級』なのに精錬と研磨が『弩弓星カシオペア級』な鍛冶師とか、解体は『半月ハーフムーン級』で剥ぎ取りが『満月フルムーン級』な解体師とかが。

例えば、Aおお鍛冶師が鍛冶に関わる全部門が『満月フルムーン級』だったら『全 満月フルムーン級・Aおお鍛冶師』と呼び掛けるけど、前述みたいにバラバラだったら『精錬、研磨 弩弓星カシオペア級・Aおお鍛冶師』と一番上の部門に級を付けて呼び掛けなきゃいけない。ちょっとだけ面倒くさいけど出来ない仕事を請けない頼まない為にも大事なルールだった。


ちなみにこの『関所の集落(仮)』にいるドワーフ達は全員が『全 極星ポラリス級』の職人さんだったよ。あ、ジョー=エーツさんは職人ではないので。



話を戻そう。更に磨くこと体感時間で二時間弱。この砥石ではこの完成度が限界か…な辺りまで磨き上げた。磨りガラス状から半透明な研磨済石に昇格。こっそり『次元収納インベントリ』内の道具箱から#6000粒度の仕上げ砥石、更にその上の#8000粒度の最高仕上げ砥石を取り出して研磨したら透明な仕上がりになるのは明白なんだけど、色々バレたら困るので今回は断念。


俺、この『関所の集落(仮)』を出たら続きを研磨するんだ。


うん、何か変なフラグが立ちそう(苦笑)

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