第28話
もう一つあった【魔石滓】はコーヒー豆というか半分に割れた大豆みたいな形だったので、楕円カボッションカットにすることにした。
底面を平らに整え、後はなだらかな山型に整える。小さな魔石だからゴブリンか何かから出た物なのかな?前に磨いた【魔石滓】と同じで整えていくうちに微妙に残る魔力が抜けてゆく。なんとなく子供の頃に海で拾ったシーグラスを思い出す。
二回目だし小振りだったので二時間も掛からずに終了。【バサルトタートルの甲羅】の研磨は明日のお楽しみです。
翌日。いつもの様に早起きからの髭の手入れをし、備蓄が目的の食糧の野外採取をしに出掛ける。『関所の集落(仮)』に逗留している間は【茄子花芋】や粥用の大麦、数種類の野菜は分けてもらえるので、次の場所に向かう時の道中の食糧をひたすら備蓄する。干し野菜やドライフルーツがメイン。トカゲやカエルが獲れれば干し肉にする。現在まで魔物を狩らない選択をしてるので、お肉事情が貧相です。
そして、当然ながらこちらの世界では砂糖が貴重品。覚悟はしていたけど元現代日本人の俺にはかなり厳しい。甘い物が食べたい。ベリー類じゃなくて甘いお菓子が食べたい。飴舐めたい。コガネムシの出て来る童謡が無意識に口から出て来る。俺も水飴舐めたいです。
ん!?水飴ってデンプンと麦芽が有れば作れるんじゃなかったっけ?そこに有るよね、芋と大麦。
この『関所の集落(仮)』の住人が水飴という物をを知っているのか?と思い悩んだが、よく考えたらおろし金が無かった場所だよ。ジャガイモを擦り下ろしてデンプンこと片栗粉を作れる事を知らない、もしくは作った事がないかのどちらかだと思う。
甲羅研磨と水飴、どちらを取るかを天秤に掛けたら、それはもちろん水飴です!!
デンプンを作る為に【茄子花芋】を余計に分けてもらうにはどんな言い訳をしよう。あ、片栗粉を使って作る料理を思い浮かべればいいのか。
あー、唐揚げ食べたい、唐揚げ食べたい、唐揚げ食べたい、竜田揚げでもいいよ。
唐揚げが食べたくなったら揚げだし豆腐も食べたくなった。豆腐繋がり、麻婆豆腐。豆腐なんて無いけど。豆腐が無ければ麻婆茄子、茄子も無ければ麻婆春雨を食べればいいじゃない。あっ……、デンプンで春雨作れるんじゃ。
生前、国営放送で放送していた番組で、中国大陸の山岳地帯に住む少数民族が春雨を作るのを見た記憶が蘇る。畑で育てたサツマイモを擦り下ろし、デンプンを取る。沈殿したデンプンを蒸し、蒸し上がった餅みたいな物体を取り出し、半乾きのうちにブロックに切り出し、
春雨かぁ、魚醤使って焼きビーフンみたいな物を作って食べたい!!いや、チャプチェか。
よし、TVで見たのと芋は違うけど春雨を作ろう。ついでに
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(作者注)
春雨作り、硬めのデンプン糊を作ってそこに片栗粉を足して練った生地を作り、先端がシャワーヘッドみたいに穴が複数空いた巨大注射器状の容器に詰め、沸騰したお湯に生地を押し出して茹で、引き揚げてから乾燥させる作り方のほうが主流なのですが、ミーシャが美石屋敷として生きていた時にTVで見た番組ではそんなやり方だった、と言うことにしてあります。
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