第14話

結局、知らないドワーフのおじさんは俺を集落に入れてくれた。常識知らずだけどさほど怪い奴でもないといったところなんだろう。


「おじさん、ありがとうございます。ボクはミーシャって言います。辺境出身のミーシャです」


一応、先に名乗っておく。


「俺はジョー=エーツ。一応、エーツ氏族の出身だ。嬢ちゃん、氏族名は無いのか?名乗れない理由があるなら詮索しないが」


氏族名とかある訳ないって。それ以前に親兄弟もいないし。そりゃぁ生前の家族は居るけど、それはドワーフじゃないしなぁ。


「ボクのいた集落は本当に小さくて、ボク以外に若いドワーフもいませんでした。親はいたけど本当の親かどうかボクにはわかりません。気付いたらその親も集落からいなくなりました。ボクを育ててくれたのは爺ちゃんと呼ばれていた老ドワーフです。集落には何人かの老ドワーフが住んでいたけれど、ボクに髭が生える頃には爺ちゃんと呼ばれていたドワーフ以外はみんな「最期の仕事を探す旅に行く」と言って集落から去っていきました。少し前に爺ちゃんに連れられて集落を出ました。途中、爺ちゃんが「馴染みの錬金術師に会いに行ってくる。十日経っても戻らなかったら先に行け」と言い残して拠点にしていた洞窟から出ていきました。そして戻ってきませんでした。ボクは爺ちゃんにも捨てられました」


と言う『設定ミーシャの生い立ち』を淡々と語った。


「ジョーさん、ご迷惑でなければ少しの間でよいのでボクをこの集落に居させてください。先に進む準備ができたら旅立ちますので…」


この集落、少しだけお世話にはなりたいけれど、永住したいとは思わなかったのだ。


「いいぜミーシャ、居たいだけ居ればいい。この集落は『ネオ=ラグーン領』の関所みたいな場所だからな、長く暮らすには物足りない場所だ。実際、レディも髭無幼ドワーフの一人も居やしない。まぁ俺も数年前に派遣されてきただけだからなぁ。ミーシャは知らないだろうが、この集落には互助会すら無いんだ」


「互助会?」


「あ、互助会を知らんのか。互助会ってーのはギルド出張所みたいな施設だな。ドワーフ以外の種族のギルドとの連携もしてなくもない。まぁ、クエストの受注とか薬草の買い取りとかしてくれる場所だと思ってくれればいい」


「でも、その互助会が無いってことは……」


「そう、ここにいる限り金を稼ぐことは出来ない。関所が魅力的じゃ困るからな。間者に居着かれたりしたら駄目だろ?」



俺は一ヶ月を目処にこの関所集落を後にしようと心に決めた。



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