第13話
結局、野営中に拾った水晶を夜通し磨いてしまった。徹夜で石磨き、生前と変わらないのは何故に(苦笑)
『
雫型のカボッションカットに仕上げてみた。よかった、ノースキルで生前同様に研磨出来た。次はスキル使用で研磨してみないと。
ドワーフの朝は早い。理由は簡単、髭の手入れがあるから(笑) 伸ばしっ放しのドワーフも多いけど、意識して手入れをするドワーフも一定数いる。今日の気分は三つ分けの編み込み。早いもなにも、まぁ昨夜は寝てないんだけどね。
野営の後始末をして最寄りの集落を目指した。余所者だけど同族のよしみで泊めさせてもらいたい。実は俺、この世界の貨幣を殆ど持ってないのだ。だって俺、転生勇者じゃないからね。王宮から支度金とか出てないし、上位存在もAIさんもお金はくれなかった。言えば多分出してくれたんだろうけど、ぶっちゃけ申請するの忘れてました。お金よりスキルに目が眩んだんだからしょうがない。
さて、集落だ。転生設定でボロを出さない様にしないと。ミーシャいきます!
「すみませーん、誰かいますか?」
集落内に呼びかけて暫く待つ。誰も出てこない。仕方ないので土魔法『土饅頭』で椅子代わりに座りやすい形状の土の塊を出して座り、土魔法『土器』でカップを作る。そこに『汎用魔法』の『注水』で水を注いで給水タイムだ。流石に集落前で焚火はルール違反なので水を飲んで我慢する。
「ん?嬢ちゃんはこの辺で見ない顔だが、旅の途中か?」
集落を見ながら何杯目かの水を飲んでいたら背後から声を掛けられた。何の気配も感じなかったので、俺の索敵能力がポンコツなのか相手が熟達の冒険者なのかのどちらかだ。
「ボク、辺境から出てきたばかりで、とりあえず『ネオ=ラグーン領』に行ってみようかなぁと思って……で、よく分からないままここに着きました」
土饅頭から立ち上がると声のする方に振り返りそう応える。とりあえず嘘は言っていない。
「そうか。そりゃあ大変だったな」
背後にいたドワーフがそう応えてくる。と同時に全身に違和感を感じる。これ、多分、鑑定されてるな。
「ボク、何かしました?」
鑑定してるの感知してますよー、的なニュアンスを含ませて聞いてみる。
「嬢ちゃん悪ぃな。知らない顔が集落に来た時は例え同族でも『素性鑑定』を掛けるんだ。犯罪歴があるかとか奴隷歴がどうだとか、分かるのはそれだけだけどな。保有スキルとかは見れないから安心してくれ。って言うか嬢ちゃん、鑑定スキル持ちか?普通は『素性鑑定』されても気付かないぞ」
あ、俺、気付いてますよ風を吹かせて逆に鑑定持ちバレした。いきなりやらかしてるし。
「ボクは『対物簡易鑑定』持ちです。ほら、食べられる植物を見分けたり、毒キノコを避けたり、生きてゆくのに必要だったので……」
「了解、了解。嬢ちゃん素直すぎるだろ。同族同士でも保有スキルのことはペラペラ喋るモンじゃねぇ。まぁドワーフだったら『対物簡易鑑定』持ちはそこまで珍しくはないが…」
本日のやらかし二回目。これって転生者バレしないで生きていくのって結構ハードモードじゃないのか?
「ごめんなさい、ボク、世間のことよく知らなくて…」
「まぁ、気にするな。辺境出なら仕方ないだろ。とは言え、親は教えてくれなかったのか?そっちも犯罪者ではなかったみたいだが」
「親はいたというか、でもそれが本当の親だったのかも謎で…」
集落を前にやらかしとハードモード異世界な現実。俺、石磨きしながらスローライフ出来るんだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます