第11話 いざ!ギルド登録!
「その……なんていったらいいか。」
ディアは、ボクを見ながら慰めの言葉を探す。
「いや、ワシも……その、今後は酒を控えるとしよう。……あぁ~、うん、そうだなぁ。アンタのダンジョンの場所を教えてくれりゃ、今回の配送料はこっち持ちにしておくし……。」
一方のお爺さんは、本当に申し訳なさそうで。
見ているこっちが気の毒になるくらいであった。
「その……すまなんだ。」
素直にお爺さんが謝ってくれたので、ボクは許すことにする。
……ボクの金色の前髪は眉毛の上くらいで、横一線になってしまった。
「もう……いいですよ。表を出歩けない程ではないですし……。ただ、刃物もってあんな風に追いかけたら、そりゃ怖がられますから。もうやめてくださいね。」
お爺さんはシュンとして小さくなってしまう。
お酒のせいだったとしても、危ないのに変わりはないし、反省してもらわないとね。
「でも、アルク。……私はけっこう可愛くていいと思いますよ?」
ディアは、意外にもボクのこの髪型を気に入ったらしい。
その表情には、先ほどまでの、慰めなくてはという色はなかった。
「かわいいって……ボクは男なんだけど。」
「男だからいいんじゃありませんか!」
なにをいってるのか、さっぱり分からなかった。
☆
ボクたちは、ダンジョンの大まかな位置を伝えると、散々騒いだ店を後にした。
店を後にすると、ナインがいつの間にか肩に乗っていた。
……多分、あのお爺さんに見つかったらやばいのを本能的に察してたんだろうな。
さて、買い物を済ませたところで、次は情報収集だ。
「ディア。さっき情報を集めに行こうとしてたけど、どこかあてはあるの?」
「えぇ。まずはギルドに向かおうかと。ついでにアルクも登録を済ませてしまいましょう」
ギルドは、国が運営する同じ職業の人たちが所属する団体。
カルセドニーの居住区には様々なギルドがあるが、ボクたちが向かったクラフターのギルドは類を見ない賑わいを見せていた。
「がっはっは。だから!俺はいってやったんだよそいつがほしけりゃ―」
「中央に向かう方の門の先!あっちってなんかやばい噂が―」
「おいおい!こっちにピザがまだ来てないぜ!」
扉を開けて直ぐに大量の人の声が、耳の中に無理矢理流し込まれてくる。
酒場も併設されているためか、酔ってべらべらと喋っている人も何人か見受けられた。
カルセドニーには珍しい木造建築で作られており、木の温もりがきっと居心地の良さにもつながっているんだろうと感じた。
内装は、いたってシンプルで、目立たせるためかカウンターのみが、黒い石のようなもので作られており、存在感がある。
二階へ続く階段の前では、飲みすぎたのかぐったりしてる人がいたり、テーブルに座る人たちを見ても裕福そうな者はいるが、冒険者のような荒くれものといった風体の人はいない様だった。
「いらっしゃいませ!ギルド【ロックミヌレ】へ!……って、ディアちゃんじゃない!」
カウンターの女性が、ディアを見つけるとその笑顔は、作られたものから自然なものへと変わったようだった。
「ご無沙汰しております。」
「ついこの間きたばっかりじゃない。」
「1か月前は、ついこの間ではないと思いますが。」
二人はどうやら、何度も話したことのある関係のようだ。
ボクがディアの後ろで、心地悪そうにしているのに気づいたのか、彼女は舌をペロッと出して謝ってくれる。
「ごめんなさいね。私、ここの受付のエリナっていうんだ。よろしくね!この子、危なっかしいところあるでしょ?一月も見ないでいると心配になっちゃってね。で、本日の要件は?」
「よろしくおねがいします。アルクっていいます。今日は登録と情報収集に来ました。」
「オッケー!じゃあ、ここに必要なこと書いてもらえるかな?」
エリナさんは優しく丁寧に記入方法を教えてくれたので、簡単に記入を進めることが出来た。
「―最後に、師匠の欄なんだけど、既に誰かに弟子入りしてる?なければこっちで紹介も出来るわ。」
ボクは、ブラストと書こうとして、ペンを止めた。
迂闊に書いてしまっていいものだろうか。
ギルドは国が運営している。
不意に、ディアが言っていた言葉が浮かんできた。
『……国は何かを隠している気がするのです。』
……それが、ただのディアの勘だとしても、少しでも可能性があるなら、用心しておくに越したことはない。
ボクは師匠の欄に、『クリスチャン』と記載してお姉さんに渡す。
「はい、問題ないですね。ではこの紙にパートナーと契約するときみたいに手を
ボクは言われた通りにすると、すぐさま紙に契約紋が反映された。
感動する間もなく、エリナさんはそれをもって後ろに引っ込むと、すぐに小さなカードのようなものを渡してくれる。
「はい、これがあなたのギルドカードよ。契約紋が同じか確認してね。それと、記載してくれたダンジョンに大戻石を送っておくわね!新米さんにギルドからの餞別よ!」
ハートと剣のマーク。間違いなくボクの紋章だった。
受け取ったそれを、服の内ポケットに仕舞い、大戻石についてお礼を伝えると、本来の目的へと移る。
「では、本題……なんですけど。」
ボクが、なんて切り出すべきか考えていると、ディアが耳打ちをしてくる。
「ご心配なく。彼女は信頼できますので。ブラスト様の事も昔からご存じですし、私も既に何度も同じ質問をしています。」
ボクはその言葉に安心して言葉を続けた。
「エリナさん。ブラストの行方について、なにか情報はないかな?」
ボクは小声だったが、師匠の名前を出した途端、どこからか視線を感じた気がする。
身体の見えない箇所に、じんわりと冷や汗が滲むのを感じた。
ディアと目的が同じだとわかり、彼女はなんとなくボクの立場を理解したようで、納得といった顔をした。
「……1つだけ、気になる話があるわ。」
「気になる話?」
「えぇ……。どうも、ここ数日でブラストさんらしい姿を見たって話しがあるのよ。」
「え!?」
いきなり大当たりじゃないか!
「あぁ、期待させちゃったわね。結論から言うと、大分怪しい話よ。ふらふらしてて、何処か目が虚ろな赤髪の長身の男が風の国との国境の街【クリソプレーズ】にいる……ってことなんだけど―。」
ボクはその話を聞いて居てもたってもいられず駆け出そうとする。
―だが、ボクの腕がディアに掴まれる。
「アルク。話は終わっていません。……怪しいというのは、その様子のことではないですね。」
「えぇ。だって考えてもみなさいよ。そんなに近くに居るんなら、真っ先にあんたらに会いに来るんじゃない?」
……言われてみれば、その通りだ。
ボクは深呼吸して、興奮した気持ちを抑え込む。
無事なら無事と、そう伝えてくれればいいものを。
しかし、様子からして、何か会えない事情でもあるのだろうか。
「誰かに狙われているとか、巻き込みたくない……ブラスト様の性格からするとありえますね。」
「えぇ。まぁ、なんにせよ、探してるなら行くしかないとは思うけどね?」
その通りだ。
なんにしたって、会わなければ始まらない。
「エリナさん、ありがとうございました。」
「いいえ。会えるといいわね、師匠に。」
一瞬ドキっとする。どうして彼女はボクがブラストの弟子だと知っているのだろうか?
ディアの方に目線を送るが、彼女は首を横に振る。
「ふふっ。ディアからは何も聞いてないよ?」
ボクの考えを先読みするかのような言葉に、また心臓が縮み上がる。
「いい
「どうして……?」
彼女はボクの疑問に口先に指をあてながら、宙をみやり考える素振りをすると―。
「女の勘……、かな?」
またペロっと舌を出して誤魔化されてしまった。
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