幕間①
〜ある城の一室にて〜
ガラスの割れる音が室内に響き渡る。
怒りを堪えきれぬ様子の老齢の男に、傍に控えた兵士たちはその火の粉を浴びぬよう、まるで飾られた鎧かのように微動だにせず、宙を見つめる。
「えぇい!奴はまだ見つからぬのか!」
「現在も、捜索中でありまして…網にかかったと報告はあったのですが……。」
「そのような話は何度も聞いたわ!!」
手近にあった柔らかく熟した桃を、大臣と思しき男にぶつける。
玉座に座った男は、爪を噛み、ガタガタと震えだす。
「貴様らも、半年前の予言を忘れたとは言わせぬぞ!忌々しい竜の一族が、今再び現れる。そのキッカケがブラストとかいう男になると!しかと聞いておろう!!」
竜の一族、それはかつて、王国が滅ぼした筈の生物であり、人類にとって脅威になり得る存在のことであった。
「この私の父上の、そのまた父上ですら、実際に見てはいない!だが、その脅威は確実に歴史上存在しており、我々を脅かすことは疑う余地もない!!であれば、その芽は早く摘まねばならんというのに!!」
王は王冠を外すと、片手でガシガシと頭を強く掻きむしる。
「心中…お察しいたします。必ずや、ブラストは捕らえてみせますので、今しばらくお待ち下さい。」
大臣は部屋を出ると、ため息をついた。
「元々、所在すら掴めぬ男ではあるが…転送の魔法陣から抜け出すとは…。何者かの手引きか…それともこちら側に裏切り者がいるか…。」
大臣は汚れた箇所を丁寧に拭きながら、独りごちる。
そうして、まずは着替えることが先かと、自室へと向かうのであった。
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