第1章 幼少期編
第1話 アルク、弟子になる
カーテンが開けられる音が聞こえて、目をうっすらと開ける。窓から差し込む光に目を焼かれ、思わず布団を頭から被った。パンの焼ける芳しい香りが布団越しにも鼻をくすぐってくるが、朝の布団の魅力とは比べようもなくて、また心地よい夢の中に戻ろうとしてしまう。
「アルク!いつまで寝てるの!朝ご飯の時間よ!」
カーテンを開けた張本人はボクの目が覚めるのを確かめもせずに階段を降りていってしまう。
少し冷たい対応な気もするが、ボクの普段の朝の行いを考えればそれも仕方がなかった。
文句を言いながら、身支度を整えると、ボクも階下へと向かう。
徐々にベーコンの焼ける香りも漂ってきて、ボクの食欲を刺激した。
「流石、お母さん。やっぱり朝はベーコンだよねぇ。」
「ガキが何いってんの。冷めない内に食べちゃいな。」
「いっただっきまーす!」
薄くカリカリのベーコンの食感にじゅわっと広がる肉汁。塩加減はお母さんの目分量で気分次第。今日は当たりだなぁ、なんて思っていると、窓の外をヨアケドリが飛んでいくのが見えた。ふと、カレンダーが目に入り、今日が自分の誕生日だと思い出す。
建国歴220年。
7歳の誕生日を迎えたボクは、念願の【クラフター】の弟子入りの日だと認識すると、一気に頭が冴えてくるのを感じた。
ボクは朝ご飯を味わうのもそこそこに、弟子入り先へと出かけた。
☆
「…そもそも、魔種とは、エネルギーの塊であり、空気中にごまんと存在してる。土地の特色を色濃く反映しててぇ…聞いてっか?」
ボクは首が飛んでっちゃうのではと言う程、ブンブンと振ると、それを見て師匠は話を続けた。
ボクが弟子入りした師匠は、近くのお屋敷に住むブラストお兄ちゃん。
とっても凄腕で、本人曰く「めっちゃ稼いでる」らしい。
師匠は、特徴的な赤髪をガシガシと雑にかきむしると、吐き捨てるように言った。
「そもそも、人に教えるなんてガラじゃねぇんだが…お前のかーちゃんの頼みじゃなけりゃ……まぁいっても仕方ねぇ。続けるぞ。この大陸には、5つの国がある、国名言ってみろ」
ボクは指折り数えながら、師匠の問いかけに答える。
「えーっと、隣国の火の国フィアーと風の国ウィンディア。水の国ウェティアと…それから雷の国サンディア、後、ボクたちの住む土の国、ダーティアです!」
「その通りだ、俺たちのいる国、ダーティアは土の魔種が広く多く漂ってる。体内の魔種は生まれた国で決まる場合が多いから、クラフターには土の国出身が多いんだ。」
ボクはそれを聞いて、疑問が浮かぶ。
他の国にはクラフターは居ないのだろうか?
師匠は、ボクが難しい顔をしてるのを見て気づいたのか、情報を補足してくれる。
「勿論多いってだけで、他の国出身のヤツだってクラフターになるやつは居るんだぞ?大体、無理矢理魔種を変えようとして、土の国に居座って、怪しい修行をしてるが…まぁ、例外だな。」
「例外?」
「まぁ、いずれ生きてりゃそういう奴にもあうさ。さて、今日はこのくらいにしよう!今日は基礎の座学だけだったが、明日から本格的に魔法を教えてくからな。」
「やった!楽しみにしてますね!師匠!」
ボクが喜んでいると、兄ちゃんが両手で自分の頭をワシャワシャしながら叫び出した。
「だぁぁぁ!!もうその師匠ってのやめろ!むず痒くて仕方ねぇ!いつも通り、兄ちゃんでいいっての!」
「えぇ!なんで!かっこいいじゃん!師匠!」
師匠は全身をボリボリ掻きむしって、すごく痒そうにしてる。そんな姿が面白くて、その後も何回か師匠って呼んでたら、拳骨をもらった。
かなり痛かったけど、そんな痛みも、大切な思い出になったんだ。
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