新米クラフター、リュウを飼う
しょーたろう@プロフに作品詳細あります
プロローグ
ブルービッグ大陸ー
この大陸には、魔種と呼ばれるエネルギーを操り、魔法を使用する【魔導士】が存在する。
彼らはその力で、狩りをしたり、商売をしたり、生活と魔法が切っても切れない関係にある、そんな世界。
この物語の主人公である、アルクもまた【魔導士】であり【クラフター】と呼ばれる職についていた。
【クラフター】はその魔法で、ダンジョンを作り出し、【益魔】と呼ばれる品種改良された魔物を世話して、【益魔】がもたらした産物を売って暮らす商売人である。
☆
バケツいっぱいの水を揺らしながら、階段を一歩ずつ慎重に降りていく。ウチのダンジョンには、水道が通ってないから、一滴も無駄にはできない。ボクがそんな事を考えていると、ボクの存在に気づいたのか、どこからともなくミルクスライム達が姿を現す。
ボクは、空き瓶と蛇口をポーチから取り出すと、ミルクスライムのお腹に蛇口を取り付ける。
クルクルとハンドルを捻ると、生臭いような香りが広がり、ミルクが瓶へと注がれる。
「いつもミルクをありがとね、スライムくん!」
ボクは川から汲んできたお水を、スライムが飲みやすいように少しずつ垂らしてあげた。
水を浴びると、透けた身体の中が少しずつ水分で満たされていくのが見て取れる。
満タン付近になった所で、ピョンピョンと飛び跳ねる姿は非常に可愛らしかった。
「お水、美味しかった?それならよかった!」
ミルクスライムという【益魔】は、体内の水を徐々にミルクに変えてしまうように作られたスライムだ。彼らの生み出すミルクは飲む分には少し臭くて適さないが、チーズにすると絶品だと、評判が良かった。
「さて、と。今日はどこに売りに行こうかな!さっさと、あの人も見つけてぶん殴ってやんなきゃ!」
「キュキュー!」
「おはよう!ナイン!元気そうだね!でも翼はいつも通り引っ込めててよね!【リュウ】なんて皆知らないんだし!」
小さな翼でパタパタと飛んでいたナインは、その言葉に返事も返さず、ボクのフードにスッポリと収まるとひょこっと顔だけ覗かせた。
「さて、それじゃいこっか!」
腰につけていたポーチを、魔法【フォロー】でボクの背丈ほどに大きくすると、先程のミルクの瓶を中にしまい、魔法でまた小さくして腰につけ直した。
今日も、ボクとナインの旅が始まる。
何処かできっとボクを待っている師匠を探して―。
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