第6話 ご飯会①

事件を解決した灰川に岡山が声をかける。

「灰川、今回もありがとう!」


「いえ、大したことありません」


「てゆうか、山下さん!勝手に捜査に入ってこないでくださいよ!」


「ごめんなさいね。英治さんを送ってきたら帰ろうと思ったんだけど、なんだか好奇心が出てきちゃって」

山下は謝ってはいるが悪びれる様子はない。


「もう、いつもそれじゃないですか」

岡山もなんだかんだで許容している。


「そうだ!岡山さんもこれから英治さんの家でご夕飯でもいかがですか?」


「え?」灰川が意表を突かれた声を出す。


「いいんですか?ぜひ!!」


「英治さんもいいですよね?」


「え、ええ。まあ」

半ば山下の圧に負けた感じである。


「じゃあ、決まり!お二人とも車に乗ってください!」





灰川の探偵事務所兼自宅にて、呆然と突っ立っている岡山。

捜査資料が入っている棚と接客用のソファーとテーブル、必要最低限の生活用品しかない部屋になっている。


固まる岡山と対照的に山下は楽しそうに話し出す。

「それじゃ、私は下の階で簡単に料理を作って来ますから、ちょっと待っててくださいね」


『ありがとうございます』


下の階は山下のパン屋兼自宅となっており、山下はそこに料理を作りに行った。


山下が出ていくと静寂が訪れる。灰川は気にならないようだが、岡山は少しムズムズする。


「灰川、ここのソファーに座ってもいいかな」


「すみません、どうぞ」


向かい合ったソファーの斜めの位置に灰川と岡山が座るが、再び訪れる静寂。ここでもこの静寂を打ち破るのは岡山だった。


「本当にここに住んでいるのか?」


「そうですけど、何か気になることでも?」


「探偵事務所兼自宅であるのと私はあまりものが多い空間が好きではないので。それに、私は片付けが苦手で物が増えると大変なことになってしまって」


「そうなんだ」


再び静寂。


「山下さんはよく訪ねてくるの?」


「はい、毎日下の階のパン屋で作ってくれたクロワッサンとカフェラテを届けてくれます」


「へ―、そうなんだ」


再び静寂。


「ちょっと、俺、山下さんのこと手伝ってくる!灰川はゆっくりしてて」

岡山は静寂に耐えかねて部屋を出ることにした。


部屋を去る岡山を灰川は軽くお辞儀して見送る。






山下のパン屋兼自宅では鼻歌を歌いながら山下が料理を皿に盛りつけている。階段を下りてきた岡山が山下に声をかける。


「山下さん、何か手伝いますよ」


「あら、ありがとう!じゃあ、そこのお茶碗にご飯よそっておいて」


「了解です!ん?お茶碗一つ足りないですが、どこから持ってくればいいですか?」


「いいの、いいの。英治さんご飯食べないから」


「そうなんですか。灰川、ダイエットでもしてるんですか?あんなにスタイルいいのに……」

自分のポッコリお腹を見てしょんぼりする岡山。


木下は笑いながら答える。

「そうだったらいいんだけどね。あ、そこら辺の料理とご飯持って行って」


「はい、では先に上に上がってますね」



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